99話 3-9 お礼の電話
二人はタクシーの中で無言だった‥今はタクシーの運転手さえ警戒の対象だからだ‥ タイミング悪くラジオから流れるETOの曲‥ 凛は初めてこの曲が早く終わって欲しいと思った‥
‥‥‥‥‥
「お客さん?着きましたよ?」
都市高速を使い遠回りしたせいで長く感じた帰り道、凛はタクシーの支払いをカードで済ませて領収証を貰う。念の為、家から少し離れた公園で降ろして貰った
「ありがとうございました」
凛がお礼を言うとETOも無言で丁寧に頭を下げた
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ふぅ‥‥改めてETOの影響力を感じたわ‥‥」
『‥‥‥‥‥ごめんなさい』
元気が無さそうに俯くETO
「‥‥‥‥‥」
「‥気にしないで良いわ?何かあったら私の責任よ?それが分かっててETOと遊んだの!」
「楽しかった!!」
凛がニッコリETOを除き込んだ
ETOも微笑み
『私も‥‥‥』
凛はETOの手を取り「帰ろ?‥ご飯の支度をしなきゃ!」
二人は短い距離を歩いて帰宅した。
凛は着替えを済ませて夕飯の支度を、蓮司は先にお風呂に入って化粧を落とした。
‥‥‥‥
丁度、蓮司がお風呂を上がり髪を乾かし終わった時にインターホンが鳴る
「バンケンかしら‥遅かったわね‥」
玄関を開けると東さんが両手いっぱいの二人の荷物を抱え、立っていた。
「あ!‥‥‥‥‥え?東さん?」
「こんにちは凛ちゃん‥‥お届け物です‥‥」
焦って荷物を受け取る凛。とりあえず事情が聞きたいと家に上がって貰った。
「お久しぶり!蓮司君!」
びっくりする蓮司
「あれ?‥‥東さん?」
「ふふっ‥凛ちゃんの事で怒鳴り込んできて以来かしら?」
蓮司は真っ赤に照れながら頭を掻き
「あれは忘れて下さい‥それに東さんには怒ってないですよ‥いつも凛がお世話になってます‥」
蓮司は頭を下げた
荷物を二階に置いた凛が降りてきた。東さんに座って貰う蓮司、凛はキッチンで三人分のお茶を入れ蓮司の隣に座る
「‥‥‥‥‥東さん重かったでしょ?」
「すみません友達が持って来てくれるとばかり思ってまして‥‥‥‥‥」
凛は申し訳なさそうに頭を下げた。
「‥‥‥‥‥ぷっ」
東さんは吹き出し笑顔で
「羽目を外したわね~凛ちゃん!」
「楽しかった?」
凛は困った笑顔で首を傾げながら頷く
「‥‥赤髪のお友達ね?ETOちゃんのファンを撒けなかったから本社に来ちゃったのよ!荷物持って‥」
そうだったのか‥蓮司は頭を抱え項垂れる、凛も申し訳無さそうだ。
「申し訳ありませんでした‥」
蓮司が謝ると
「‥‥違うのよ‥‥お友達‥目立つからワザとファンを引き連れて本社に来てたみたい
囮をやってくれたのね‥
会社の受付で荷物を預けて直ぐに帰っちゃったからちゃんとお礼は言えてないけど」
「優秀なスタッフを惹き付けるのね?蓮司君は‥‥‥」
凛をチラッと見るとクスクス笑う東さん
不満と自慢の入り交じる不思議な顔の凛に思わず蓮司も笑ってしまう‥‥
「ケンにお礼言わなきゃ‥‥‥‥」
「今電話でお礼して来て大丈夫よ?凛ちゃんと喋ってるから」
東さんはニッコリと言うと二階を指差す
「あ‥‥‥‥じゃあ、お言葉に甘えます‥‥」
蓮司が凛を見ると凛は不満そうな顔で
「‥‥‥‥私からも「ありがとう」って伝えておいて‥‥」
素直じゃないな‥‥‥蓮司は東さんに笑いかけ二階に電話をしに行った
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
東さんは凛の顔をニヤニヤ見ていた。
蓮司は自室に入ると机には通学バッグと隣にケンと撮ったプリクラが置いてあった
ケンとETOが腕を組んで写るプリクラはお似合いのカップルに見える‥‥‥
‥‥‥‥‥
蓮司はケンにお礼をする為にスマホから通話を押す
「‥‥‥‥‥‥」
「あ!‥‥ケン?」
「お!お姫か!無事に家に付いたんだな?」
「うん!ごめんね‥面倒な事させちゃって荷物は今Visionの社員さんが届けてくれたよ」
「ははっ!そっか!気にすんなって!Vision以外に任せられそうな場所が思い浮かばなかったんだ!」
「うん。大丈夫!助かったよ」
「‥‥あと、ETOと撮ったプリクラ要る?」
「‥‥‥‥‥‥‥いらねぇ‥」
「言うと思った!じゃあ僕が持っておくね?」
「そうしてくれ‥」
蓮司はプリクラを眺める‥
‥‥‥‥‥‥‥
『ねぇ‥‥‥ケン』
「‥‥‥‥‥!!! ‥ETOか?」
『今日はありがとう‥‥』
「‥‥‥‥」
『あのさ?ケン‥‥‥ 私の側にずっと居て欲しい‥』
‥‥‥‥‥‥
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