98話 3-8 ETO‥バレてしまう。

 シールが出来上がるまでETOは笑いながらケンの頬をウェットティッシュで拭いていた


ETOとケンの出来上がったシールを見て真っ赤な鬼の様な形相の凛


「ぬぁ〜〜〜!没収よ!!」


『あら!初めてのプリクラでこう撮るって教えてくれたのは凛よ?』



「‥!!!」


「‥‥‥‥たぶん違うぞ‥お姫‥」




『でしょうね‥‥‥』



何も言えずにぷるぷる震える凛を撫でるETO


『まったく‥‥‥お家ならベタベタして良いんだから外で私に変な入れ知恵はしないで良いのよ‥』


「‥‥‥‥‥‥バンケンはヤだったの!」


凛は拗ねる子供の様にETOの胸元でグリグリと顔を埋める



「‥‥‥‥‥‥おいマネ‥」



「‥‥‥‥何よ‥」



「そろそろ出るぞ‥マズい‥‥‥」




凛が見渡すとスマホを構えた高校生が疎らに取り囲んでいた‥‥‥‥凛は血の気が引く


その内の数人の女子高生が駆け寄って来て



「もしかしてETOさんですか?」



恐れていた自体になる‥



‥‥‥‥‥‥‥‥‥






『違うわ?』



帽子を深く被り無表情で返すETO



『行くわよ!二人共』



ETOは真っ直ぐにエレベーターに向かって歩き出した


凛は心配そうに着いて行きケンはムダに威嚇しながら着いてくる。



エレベーターには誰も入れない様にケンが立ち塞がりドアを閉めようとした時



『待って!』



ETOはエレベーターの近くに居た小学低学年くらいの女の子の前に行き同じ目線に屈む


女の子は手に色紙を持っていた


ETOは女の子にニッコリ笑うと


『お名前は?』


「すず‥‥‥」


『すずちゃんね?』


すずちゃんは恥ずかしそうに


「‥‥あの‥‥‥‥ えとさん‥‥サイン下さい‥‥‥」


ETOは女の子の色紙を受け取ると


「すずちゃんへ‥ETO」


とサインをしニッコリ笑って手渡し丁寧に握手をした




「お姫!急げ!」


ETOはケンの声に立ち上がりすずちゃんに手を振る



エレベーターは閉まり下の階の出入りは開く度に凛とケンが全て封鎖した




「マネ‥‥‥地下の西側出口にタクシー乗り場があるから先にお姫を連れて都市高経由して帰れ!俺は荷物を取ったら後から届ける」



「分かった!」



ケンは先に一階で降りる時、乗り込もうとした人達に


「悪いが乗れねぇんだ‥他使ってくれ!」


とエレベーターを閉めた



地下一階のタクシー乗り場には待ちの人が一人居た‥‥‥


「一人なら大丈夫ね‥‥‥」


しかしETOは突然


『申し訳ありません‥お急ぎで無ければ次のタクシーを譲って頂きたいのですが‥‥‥』


前の人に声を掛けた



「え‥‥‥‥だ、大丈夫ですよ?どうぞ‥‥」


『ありがとうございます』


ETOはお礼を言うと譲ってくれた人にキレイに折り畳まれた五千円札を丁寧に手渡しお辞儀した


そして直ぐに来たタクシーに凛と乗り込む


横を見ると唖然とする譲ってくれた人の後ろにゲーセンに居た複数人の高校生がエスカレータを駆け下りて来るのが見えた‥


降りた階を確認したのだろう


凛が行き先を説明し速やかにターミナルを出てもらう



‥‥‥‥‥‥‥








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