72話 2-36 氷の女

 悔しいけどバンケンに救われた‥‥‥


あんなに優しかったシノを追い込んだのはアタシ。自分勝手に友達がいないと思い込んでいた。シノはずっと友達でいてくれたのに距離感が悪いからと自分から手を離していた。マネージャーや仕事を言い訳にし心地の良い距離感の蓮司にのめり込んでいた。

アタシだけ変われない‥‥このままずっと距離感を気にして、生きて行くならもう誰とも友達になんかならない。



悪いのはアタシ‥‥




なのにバンケンが放った

「相手の勘違いを自分のせいにすんじゃねぇよ!」

‥‥‥‥相手のせいなんて考えた事も無かった。

アタシだけが悪い訳じゃ無い。お互いに良い距離を保つのが普通なんだと気付かされた‥ケンとは相性が悪くて距離が離れてるけど、だからこそ気付かされた事かも知れない‥‥

蓮司がいなきゃ絶対に関わる事の無い人間‥‥

でも認めるしかない‥‥アタシと蓮司に必要な人間だと‥


「バンケン!先に体育館行っててアタシ職員室で部室のキーBOX見てくる!」


「は?職員室行ったらやべぇだろ」


「キーBOXさえ見えれば良いの!」


「‥‥‥まぁ良いや捕まったらテメェ一人で帰れよ?お姫は連れて帰ってやる。」


「捕まんないわよアンタこそデカいんだからヘマして警察呼ばれないようにね!あ!むしろ通報して退場させて貰おうかしら」


「‥‥チッ さっさと行け!」


職員室に着いた凛が見たかったのは校内の鍵が保管されている壁掛けのキーBOX。校外持ち出し禁止な為、部活の無い今、鍵の返却のない部室が怪しくてそこに絞りこめる‥


部活がなく生徒が居ないとはいえ教員はかなりの数が残っていた。


ドアのガラスから頭を少し出してキーBOXを覗こうとするも金髪の凛は目立ち過ぎて長時間は危険、それに教員がいつ出て来てもおかしくないので時間もかけられない。

慎重に確認し‥‥‥


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥全部ある‥‥‥」


てことは部室の線はほぼ無い‥凛はケンの向かった体育館に走り出す。



中庭の花壇に入り見つからないように体育館に行く途中



ガタッ‥‥‥‥



物音の方に目をやると





   体育倉庫





「分かる?江藤君‥‥‥‥‥」




薄暗くて見え難い顔を目を細めてみる。

ゆっくりと近付いてくる森永さん‥




「‥‥‥‥‥‥‥‥‥!!」




蓮司は氷水を浴びせられたような息の詰まりを感じた。



美しい顔立ちで冷たい氷の様な目‥

長い横髪が少し口に噛んているのは覚えている‥‥



足が竦みマットレスに座り込む蓮司




「やっと思い出してくれた‥‥?」



体が動かないのに思考だけはハッキリしている

この人は‥‥‥



いつも僕をイジメていた中心にいた人‥‥



「久しぶりね‥とでも言った方がいい?」



全然気が付かなかった‥イジメから逃げ、高校に上がり、ビクビクしながらもようやく新しい学校生活が送れるようになって来たのに‥‥



「今朝の私のラブレター受け取って貰えたわね‥‥‥‥痛かったでしょ?私の気持ち‥‥」



朝から机に入っていた黒い封筒は森永さんからだった‥




「好きよ?‥江藤君‥‥‥‥私の物になってもらうわ」




「‥‥‥‥‥‥‥い‥言ってる事が分からないよ‥誰なの?君‥‥‥」




恐怖で混乱気味の蓮司。



森永さんは更に鋭い目で蓮司を睨みつけ




「ずっと好きだったのに‥‥あなたはいつも私の存在に気づいてくれない!」


「何年も!」



「‥‥‥‥‥分かるように説明して欲しい‥」




蓮司は森永さんがこうなった理由が知りたかった。

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