69話 2-33 待ち惚け
放課後
「じゃあ僕は掃除当番が終わったら二人と合流するから校門で待ってて?」
掃除用具を出しながら、蓮司は凛とケンに言った。
「アタシ達居なくて大丈夫?」
心配そうに覗き込む凛に蓮司が
「校内に残ってたら先生から言われるみたいだし、そんなに時間かからないと思うから‥」
「そっか‥‥‥じゃ終わったらメッセして?迎えに行くから!」
その会話を聞いていた森永さんが
「テスト週間中は校内でスマホ等の携帯は使用禁止です!」
鋭い目つきで縁無しメガネをクイッと触った
「あ‥‥‥‥‥」
学校ではテスト週間中は部活動の停止と同じ様に校内での携帯機器を全面禁止にしてある。理由はテスト勉強に差し支える物と判断されているからだ‥‥
もちろんそんなルールは誰も守ってはいない‥
しかし、真面目で学級委員の森永は違う。
ルールはルール。守らなければならない。
蓮司は持っていたスマホをバッグにしまうと凛も仕方なく
「蓮司?終わったら真っ直ぐ校門に来てね?」
「俺は屋上で寝てるから起こしに来てくれ!」
「そのまま明日まで寝てれば良いわ!」
「んだと!くそマネ!蓮司とゲーセン行くからテメェは帰ってていいぞ!」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ヒートアップしそうな二人を睨む蓮司。
それに気付いた二人はバツが悪そうにそそくさと教室から出て行った。
蓮司と森永さんは二人で教室の掃除を始めた。
「二人だけだと掃除、大変ですね‥」
森永さんに会話を振ると
「他の当番の子は勝手に帰ったわ‥‥」
森永さんは眉間に少しシワをよせ。
「いつもそう‥‥掃除当番をサボる人ばかりだから私が毎日、こうやって掃除してるの‥」
森永さんは学級委員というだけで掃除当番でもないのに毎日誰かがサボる当番の穴埋めをやっていたのだ。
蓮司は少し怖いと思っていた森永さんの印象が変わった。
森永さんは汗をハンカチで拭きながら少し柔らかい表情で
「これが終わったら先に上がっていいわよ?」
「あれ?森永さんは?」
「‥‥‥‥‥‥私は体育用具入れの掃除もしなきゃいけないの‥‥今は三組の当番だから‥‥‥‥」
森永さんは困った様にポケットから鍵を出してチャラっと振って見せた。
蓮司と教室から分かれて三十分くらい経っただろうか‥‥
凛は校門付近でつまらなそうに小石を蹴って蓮司の帰りを待っていた。
「あれ?凛チャ?まだいたの?」
急に声を掛けて来たシノに驚く
「‥‥シノこそまだ帰ってなかったんだ!」
困った笑顔の凛の隣でシノが
「彼氏まち?」
とイタズラっぽく覗き込む
「‥‥‥‥蓮司とはそんなんじゃ無いって!」
その様子を見るシノは、ニコッと笑い
「気づいてないの?見れば分かるよ‥ずっと凛チャ見てきたから‥‥‥凛チャのそんな顔、見たことないもん‥‥‥その顔は恋‥‥‥‥‥‥」
「お〜い!残ってる生徒は全員下校だそ〜!」
生徒指導の先生が見回りで残ってる生徒に下校を促していた。
「あららセンセに見つかっちゃった!」
「え?蓮司掃除中だけど‥」
「シノ!ちょっと待ってて!」
凛は走って生徒玄関に行った。
しばらくするとスマホを耳に当て辺りを見回しながら走って戻って来る。
「蓮司の靴がない!」
シノは笑いながら
「江藤くんだって小さい子供じゃ無いんだからほっといても帰れるよ〜」
「伴内君と仲いいし一緒に裏門から帰ったかもよ?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「とにかく校内には居なさそうだし連絡待ちながら途中まで一緒に帰ろ?でなきゃ先生達に怒られちゃう。」
凛はシノに促され重い足取りで校門を出る。
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