67話 2-31 テスト週間

 今日からテスト週間に入る。テスト週間とはテストのコマの入る一週間を指す。今週の木、金曜日がテスト日だ蓮司にとっては教室で受けるテストは入試の時以外ほとんど記憶に無い。なので楽しみでもあるが、隣の凛は面白く無さそうに項垂れる。


最近、凛はマネージャー業をこなしつつ放課後にVisionで自主的に東さんと短時間ではあるがマネージャー勉強会に参加しながら充実した毎日を送っていた。

しかし、テスト週間中、つまりテストのある今週一週間は参加出来ず、梅雨のジメジメも相まって余計に憂晴らしでETOに纏わりついてくる。


「‥‥‥‥‥凛、自分の傘持ってんだから差しなよ‥」


「良いじゃん蓮司の傘大きいし別に」


「バッグが濡れちゃうじゃん‥‥‥」


凛は無視して蓮司の傘の中でバッグを濡れないように内側に寄せる。


「‥‥‥‥‥」


急に後ろから声をかけられた。


「おはよー凛チャ!江藤君!」


「「おはよーシノ」」


「お二人さん相変わらずだねぇ〜」


ニヤニヤするシノの頬をキュっと摘んて黙らせる凛。


「シノはいつも元気だね?テストは平気そう?」


蓮司が聞くと

「うん!最初のテストだし範囲が広い訳じゃないから大丈夫だと思う!」


すると凛が


「シノは元々頭良いじゃん‥‥そもそも範囲って人に寄って違ったりするの?アタシだけ広かったりする?」


「「一緒だよ!」」


蓮司とシノにツッコミを入れられる凛。


ダラダラと学校近くまで来ると急に後ろから蓮司の傘が取り上げられる。


しかし傘を手放しても雨に降られない。隣を見上げるとケンが蓮司の傘を持ち上げ差していた。


「おっす!お姫!」


「ケン!おはよ‥」


「バンケン!アンタ蓮司の傘を取らないで!」


蓮司の傘の外に出された凛をシノが自分の傘に入れてあげる。


「‥‥‥ケン、自分の傘は?」


ずぶ濡れでイケメン度の増したケンは笑いながら


「傘持ってねぇんだよ!今までは歩いてるヤツに傘貸せっつったら大体借りれたしコンビニとか学校にも沢山落ちてんだろ?」




「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」




「ドロボー‥‥‥‥」


蓮司の冷たい目がケンに刺さる。


「蓮司!バンケンに警告よ!一発レッド!二度と口聞かないで!」


すぐにケンは言い返す。


「‥‥‥‥‥暴力じゃねぇじゃんよ!ちゃんとお願いしたし落ちてる傘を拾っただけだ!」


はぁ‥‥‥蓮司は頭を抱えた


「‥‥‥僕が傘貸すから人から取ったり拾ったりしないで!‥‥‥いい?」


「分かった!」


すると凛が


「蓮司の傘はアタシがいつも借りてるの!バンケンはその辺の葉っぱでも頭に乗せてたら良いでしょ?」


「おめぇの手に持ってる傘はなんだ!それ自分で使えば良いだろ!」


「‥‥‥‥っ!‥‥こ‥これは‥‥  予備ょ‥‥」


目を反らしながらボソッと言う凛。


「ね!ケンはテストは大丈夫なの?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥ん? ‥‥‥‥テストか‥‥  テストってなんかお寺で座禅組んでる気持ちになるよな‥‥‥センコーに監視されながら静かに目を閉じてたら‥身が引き締まる‥‥」



「‥‥‥‥‥‥‥‥」


‥‥‥‥ 何言ってんだコイツ‥‥



この三人のやり取りはクラスの名物になりつつあり見慣れた光景である。


そんな三人を見てクスクスと笑うシノ。


四人は揃って校舎に入って行った。

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