63話 2-27 初セッション

派手なギターの並んだ棚を見回し目を輝かせた。


「かっけ〜‥」


「ケン!見て!!ジェイクモデル1892!サイン入りだって!」


「おぅ‥レプリカだけどな‥‥‥」


「じゃ、こっちも限定モデル?」


「‥これは俺も初めて見る‥‥‥」


「ねぇ!弾いてみて!」


背の低い蓮司が背伸びして取ろうとするとケンが後ろからヒョイっと取って蓮司に渡す。両手で受け取る蓮司は重みフラッとする


「結構重いんだな‥」


ケンはお店の従業員に


「すんませ〜ん!ちょっとこれ弾いて見て良っすか?」


「良いですよー!チューニングしますねー」


ギターを従業員に渡しを準備している間、その後ろのキーボードを見つける。


僕が使ってるのと基本的に変わらないけど新しいのって良いな‥‥じっくり見てるとケンが


「それ気になるのか?」


「あ‥ うん‥まぁ‥」


それを見て従業員は


「電源入ってるんで弾いてみて良いですよー」


と、言ってくれたので蓮司は嬉しそうにキーボードの音や機能を確かめ出した。


「お姫!出来たぞ!」


チューニングの終わったギターを肩から掛けるケンを見る蓮司‥‥


改めてやっぱクッソイケメンだな‥‥似合い過ぎる。


「せっかくだから一緒に何か弾こうぜ!」


「いいの?」


「おぅ!‥‥‥何にすっかな‥‥」


「あ!じゃあさ?ニルバの『for victory』が良い!」


「お!お姫、弾けるのか?」


「んーん!弾けないけど好きだし!合わせるよ!」


「オッケー!やろう!」


蓮司はキーボードでドラムのビートを流す。


いきなりアップテンポで始まる曲にテンポ遅らせてイメージで合わせる蓮司。


「‥‥‥‥‥‥‥」


急にケンは音を止め驚いた表情で


「お姫‥‥‥お前何なんだその弾き方‥‥‥」


蓮司は焦って両手を後ろに隠し


「ごめん‥‥ピアノとか習った事無くて基本とか知らないから弾きやすいスタイル‥‥‥」


俯く蓮司にケンは


「ヤバっ‥かっけ〜〜!マジでロック感ハンパねぇ!」


「え?」


「頭から行くぞ!」


ケンの音に少しズラして合わせるが物凄く弾きやすい、ケンも原曲から外してアレンジする。



スゲェ‥‥‥こんなのアリかよ!

ケンはリズムを変えメイン演奏を蓮司に渡す。

見るとケンは行け!と言う顔でニヤリとする。

頭にある原曲にアレンジを加え蓮司を引っ張る!


おぉーー!!


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥??」


いつの間にか出来ていた店内の人集り。

正面には凛が激怒の仁王立ちだ‥‥‥


蓮司とケンは手が止まる‥‥


「‥‥ま‥まぁいい感じの弾きやすさだよな?」


「‥‥‥う‥うん‥是非、購入を検討したいよ‥‥‥」


二人はいそいそと楽器を片付ける。


人集りはそれを見て散っていく。


「蓮司‥‥‥バンケン‥‥‥目立つなって言ったわよね?」


「「‥‥‥‥‥‥‥‥はい‥‥‥」」


静かに店内を出ようとする時、棚を挟んだ反対側の通路から


「さっき弾いてたの『Kicks』(キックス)のギターの人だよね?」


「赤い人でしょ?メッチャカッコ良かったけど女連れだったから声かけらんなかった」


この声に反応したケンはため息が出る‥‥‥


隣を歩く蓮司はケンを見上げ


「楽しかったな!」


と美少女スマイルを向ける。その顔に複雑そうな表情のケンは


「‥‥‥‥男だよ!バーカ」


と言った。


「??」


それに意味不明の顔で首を傾げる蓮司だった。


外に出ると


ピシッと蓮司にデコピンが「痛っ!」


バシッとケンに肩パンが「っって!!」


それぞれ飛んできた。


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


無言は怖いんですが‥


「チョビッとだけのつもりだったんだよ‥‥」


「お、おぉ‥‥そんな怒んなって‥‥暴力はダメだぞ?しらね〜のか?」


凛がキッと睨む二人は反射的にガードした。


「ホントアンタたち危機感が無さ過ぎるのよ!!」


「あんな事して動画でも撮られて出回ったらどうすんの!二度と学校なんて行けないわよ!」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ごめん‥」


「すまん‥‥」


凛に怒られ反省しながら帰る蓮司とケンだった。





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