62話 2-26 喧嘩せずにね?

 蓮司が目を光らせる中、二人は大人しく食事を楽しんでいた。

凛と蓮司は毎回、姉妹にも見える仲の良い食事。

ケンは蓮司をムダにぼ〜〜っと眺め飽きないのかと思うが、そんなケンは周りの女性からぼ〜〜っと見られてる事が多い。


食事は平和に終わった。


今回も食事代は蓮司が払うと聞かず、結局ご馳走になった。


蓮司がお会計を済ませてる間、ケンと凛は外で待っていた。


「‥‥‥‥その‥なんだ‥‥さっきは言い過ぎた‥‥‥」


ケンは目を合わせずボソッと呟く。


「アタシこそ‥‥蓮司と仲良くしてくれてありがと‥‥‥」


「でもね?蓮司の一番はアタシだから!それだけは絶対!いい?」


「順番とかあんのかよ‥‥」


「そうよ!悔しいけどアンタは蓮司に危害を加えないから番犬として二番目に蓮司の側に居る事を認めるわ!」


「‥‥‥‥‥ダチで良いだろソコは‥」


「後‥‥蓮司を守ってほしい‥アタシじゃどうしても限界があるの‥分かるから‥」


「ダチは守る!それが俺の絶対だ!」


「‥‥‥‥お姫を守るのに敵をぶっ飛ばすのはノーカン?」


「おバカ!蓮司連れて逃げろ!っつってんの!」


「なんの為のバイクよ!蓮司の為にずーーーっと磨いて整備してて!それしか出来ないでしょ?」


「‥‥‥‥‥‥‥オカン‥お前、頭大丈夫か?」


「オカ‥‥‥!」



ガチャ‥‥‥


「ありがとうございました〜!」


『ごちそうさまでした』


丁寧にお辞儀をして

お会計を済ませた蓮司が出て来た。


「お姫、ごっそ〜さん!」

「蓮司、ごちそうさま!」


「いいえ!喧嘩せずに待てた?」


「もちろん!蓮司との約束だもん!」


「ったりめ〜だろ!」


蓮司は凛の頭を撫でた。


やはりあの一件以来、蓮司の凛を甘やかす頻度が上がり場所も選ばなくなってきた。

恥ずかしいなどと、どうでもいいプライドで後悔だけはしたくない‥失いかけて実感した。


特に今はそれだけが強く走っている感じがした。


「行こうぜ!ケン!」


「おぉっ!」


ただ、街中のこのメンツは目立ち過ぎる。目立つ赤頭に金髪、人形‥‥ドラマや映画の撮影でもあってるのかと思わせる程の美形揃いである。


「お姫!楽器屋だ!見てかね〜か?」


普段ネットでしか見ない楽器屋の前‥見かけても一人で入る事は無かった。蓮司は凛を見て、「寄って良い?」目を輝かせた。

凛は困った顔をするも、蓮司のこの顔を見ると断れない‥


「あまり目立っちゃダメよ?」


「うん!分かってる!」


「アタシはこっちの雑貨屋に居るからね?」


蓮司は頷くとケンと嬉しそうに店に入って行った。


店は楽器屋特有の匂いがした。蓮司はキョロキョロと視線が定まらない。初めて入る店の雰囲気に飲まれそうになっていた。


ケンは蓮司の背中をポンと叩くとニッっと笑い誘導するように店の奥に入って行く。


ケンの後を追いながらトレーニング用のゴム製のドラムセットをチョンと触って見たら


ドン!!!


スピーカーから思ったより大きな音がなりビクッとする蓮司。


それを見てククッっと笑うケン。

笑うな!と言う表情でケンを睨む蓮司はギターコーナのショーケースを眺めるケンの横に来た。


「‥‥‥‥‥‥こうやって並べたピックってカッコ良いな‥‥‥」


「だろ?使う訳じゃね〜のにムダに買い集めちまうんだよな‥」


「わかる‥‥」


「ケンは普段どれ使ってるの?」


「あ〜‥ピックって消耗するからよ‥こんな良いのは使わねぇ」


「そうなんだ‥」


次に蓮司はショーケースの隣のギターが並べてある棚に目目移りする。


「おぉ‥」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る