59話 2-23 ETO 尊い‥

 テーブルの椅子にちょこんと座らせられているETO。

それをせわしなく色んな角度で眺める凛の母‥‥


「えぇ〜‥」


「うゎ〜‥」


「まぁ‥‥」


困った笑顔で固まるETO。


キッチンから凛が


「もう!ママ!ETOが困ってるでしょ!いい加減にして!」


夕飯の良い匂いが漂ってくる。蓮司は昨日の夜からまともな食事をしていないと言う事で強制的に上田家で夕飯をご馳走になる。


夕飯の支度をある程度済ませた凛が洗った手を拭きながら


「れ‥‥ETO?そのカッコじゃ汚したら困るから着替えて?」


蓮司と呼ぼうとしたな‥‥‥



「そうね!凛ちゃんの普段着似合いそう!」



凛はETOの手を引き自室に入る。

凛は段ボールから服を引っ張り出して


「これ着て?」


蓮司の目の前に並べる。



「‥‥‥‥‥‥‥悪意あるチョイスだな‥」


「ねぇ~ETOは良いでしょ〜」


‥‥‥‥くっ‥昨日今日と色々あり過ぎたせいで強く断る事が出来ない。


『え‥‥‥‥ えぇ‥』


凛は目を反らしニヤつく顔を我慢する。


「じゃ!ご飯炊けるまで少し時間あるから着替えたらリビングに来てね!」


「あ!フードもちゃんと着けてね?」


凛はいつもの調子でヒラヒラ手を振りリビングに出て行った。


‥‥フード‥‥マジでこれを着るのか‥‥


しばらくして




カチャ‥‥‥‥‥‥‥





着替えたETOが部屋からそっと顔を少しだけ出すと目を輝かせた凛がETOをグイグイ引っ張りリビングに引きずり出す。

さすがと言うべきか‥凛も母親も同じ顔になり


「んまぁ〜〜〜〜!なにこれ!妖精さんかしら!」


「尊い‥‥‥‥‥‥‥」



‥‥‥‥‥‥‥‥




ETOの格好は

フワフワモコモコのピンクの猫耳付きパーカーとセットのショートパンツ、大きめのレッグウォーマーだった。




『‥‥‥‥あの‥これ、パジャマでは?』


「あら?良いじゃない!今晩、私と寝ましょ?」


「ダメよママ!アタシがETOと寝るんだから!」



‥‥‥‥‥‥普通に家に帰りますが‥‥‥


スッ‥と母親が静かにスマホカメラを起動するとすかさず横から凛がレンズに手をかざし


「ダメよ!撮影はNGです!」


「なんでよ!ズルいわ!凛ちゃんはこれからも見れるけど私はアメリカに行くのよ!」


凛は優しい哀れみの目をして


「ダメ‥‥‥魂に焼き付けて行って‥‥‥‥‥」


「キィーーーーーッ」


蓮司はやり取りを困った笑顔で見ていた




『あの‥‥‥そう言えば、お父様は‥‥』


「パパは、お仕事だから春から先にロスに飛んでるの!」


「そうね、見ての通り私はこっちで色々と準備があって遅くなってるのよ‥‥‥‥ごめんなさいね!こんな汚い家に日本一の歌姫ちゃんを上げさせてしまって‥‥」


『とんでもありません!勝手に上がり込んだのは私の方なので‥‥‥』



『‥‥‥‥ねぇ、凛? 一枚くらい写真撮って良いんじゃないかしら‥』


「そうよね!イジワルマネージャー!」


「あら?ママ?」


「‥‥ぅ‥‥‥‥‥」


ETOの事となると凛は恐ろしく強い。


『ロスに居るお父様にも見せて上げたいでしょうし、凛の顔も見たいと思うわ?‥‥』


『みんなで撮りましょ?‥‥‥ダメ?』


「‥‥‥‥一枚だけよ?」


「やった〜!ETOちゃんありがと〜〜〜〜!」



実際、蓮司の本音はアメリカでETOの事を隠し父親と今回のようないざこざが起った場合、次はもっと面倒な事になるかもしれないと思ったからだ。


次回‥‥‥ETO!ロサンゼルスへ!


なんて事になりかねない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る