52話 2-16 充電させて?

 下校時間


凛は慌てて荷物をまとめて蓮司に申し訳無さそうに手を合わせ


「ごめん!今日先に上がらせてもらうね?」


「うん!後から丹羽さんと寄らせてもらうよ!」


「今日は蓮司の家に行けないけどお弁当買ったりして食べれる?」


心配そうに聞く凛なね蓮司は


「そんな子供じゃ無いって!」


顔を膨らます蓮司。


凛は続けてケンを睨み


「蓮司に変な事したら許さないから!」


「っせ!しね〜よ!」


頭を掻きながら目を反らす。



ふふっ‥と笑い凛は蓮司に向かって微笑み

「じゃあね!」と走って行った。




「‥‥‥俺達も帰るか」


「うん」



いつもは凛の神回避で群がる生徒をすり抜け下駄箱まで行くのだが、ケンと居ると何故か誰も寄って来ない。


威圧?有名漫画で見た事ある覇気を纏っているようなケンにはまた別の安心感がある。



「‥‥‥お姫」


「ん?何?」


「俺、先に外で待ってっから‥‥」


「え?」


ケンは靴を下駄箱から取ると小走りでニ年側の別出口から出て行った。



「‥‥‥‥?」


蓮司も靴を履き替え追いかけようとすると




そこには玄関で笑顔で待つ凛の姿。





「あれ?凛?先に帰るんじゃ‥‥‥‥‥」






凛は黙って真っ直ぐ蓮司を抱き締めた。






「ちょ‥‥‥‥‥」


「お願い‥‥‥‥今日の分のETOを充電させて‥‥‥」



下校するまばらな生徒がみんな二人を見ていた


小さく震える凛はこれでもかと蓮司を離さない。





蓮司は諦めたように目を閉じ凛の不安をなだめる様に背中を優しく擦りポンポンと軽く叩き小声で


『凛‥‥‥‥‥大丈夫よ‥』


「‥‥‥‥‥‥‥」



パッと凛は蓮司から離れると


「うん!もう大丈夫!」


ニッコリと笑顔で手をふる凛に



「またね!」




蓮司が笑顔で返すと凛は入り口に居たケンの背中をバシッと叩き走って家に帰って行った。



「ぃって‥‥‥」



「‥‥‥‥‥‥‥ 帰るか‥‥」



「そうだ!お姫!連絡先交換しよ〜ぜ!」


「‥‥‥‥‥‥‥‥変な使い方するなよ?」


ジト目の蓮司に


「しね〜〜よ!!!」



連絡先を交換しながら校門を出て、すぐに後ろから車のクラクションが鳴った。



「よう!お姫!」



丹羽さんだった。



「お疲れ様です。」


「上田は?」


「先に帰りましたけど‥」


「そうか!じゃあ乗れ!」



ケンに目を向ける。ケンは優しい目をして蓮司の両肩に手を置き子供を諭す声で





「なぁ、お姫‥‥知らない人に付いて行っちゃダメだよ?」




「誰が知らない人だ!!」



丹羽さんが車内から叫ぶ



蓮司も苦笑いで「ちゃんと知ってるから大丈夫だよ」


「そっか!じゃ!また明日な!」


「なんかあったら連絡しろよ!」



ケンは蓮司の肩をポンと叩き帰って行った。


蓮司は丹羽の車に乗り込んだ。


車を走らせる丹羽は蓮司に


「今日の契約更新、俺だけにやらせてくれねぇか?」


「え?」


「いや、別に俺が全部説明するのにお前する事ねぇだろ?それにお前がいたら上田は余計に緊張するだろうし、コッチもやりにくい‥‥」


「‥‥‥‥‥‥‥」


確かにやる事は無いが凛の両親にあいさつくらいはしたいと思っていた蓮司


「契約更新が済んだらご両親にあいさつだけしておきたいんですが‥‥‥‥」


「分かった!契約更新出来たら迎えに来るからそれまで車でまってろ」


「分かりました」


近所のコインパーキングに車を止めて


「面倒事に巻き込まれるのはゴメンだから車から出るなよ?」


「は?」


「さっきの赤髪、友達か?不良だろ!変な事に巻き込まれれば知名度の高いETOがどうなるか分かるだろ?」


「‥‥‥‥‥‥はい‥」



丹羽は車に蓮司を残し行ってしまった。


退屈凌ぎに車内で課題を終わらせる。狭い車内で書きにくい‥‥‥


ケンはそんなに悪い奴なんだろうか‥‥‥

蓮司にはそんな風には見えない。

少なくとも僕の声をバカにしなかった‥


課題を終わらせスマホを見ていたらケンからメッセで写真が届いた。

カッコいいバイクの写真だ。


「今度乗せてやるよ!ツーリングしよ〜ぜ!」


蓮司はクスりと笑いやっぱ悪者かもな‥と思いながら


「退屈だったら僕が運転するからな!」


とフザけたニヤリ顔のスタンプを押した。


‥‥‥‥はぁ‥暇い‥


どれ位時間が経っただろう‥空も薄暗くなりかけた頃




丹羽は険しい顔で車内に戻って来た。



信じられなかった‥‥‥‥



あまりの険しさに状況は聞かないでも分かる。




「すまん蓮司‥‥‥‥‥‥‥決裂した」

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