50話 2-14 歌姫の子守唄
キーンコーン‥‥‥‥‥‥
一時間目の始業チャイムが鳴るが、蓮司は凛と屋上に居た。
「エグッ‥‥‥‥‥ヒック‥‥‥‥‥‥‥ETOぉ〜〜〜」
「ヨジヨジしてぇ〜〜‥‥‥‥」
『はいはい‥‥‥‥』
ETOの膝にうずくまり泣きじゃくっている凛を優しく撫でていた。ケンとの一連の騒ぎがよほどショックだったのか、すぐに授業に出れる様子では無かった。
聞く所によると、凛とケンも同じ中学校出身らしく、中学校時代のケンは度々問題を起こすあまり周りに恐がられ、良い噂の無い生徒だったらしい。
今回の謹慎も先輩と校内で派手にやり合ったと言う。
ケンと蓮司が知り合っていたと言う考えたく無い事実とあまりに凛に取っては衝撃的な
それにしてもここまで崩れてしまう理由の一つは、普段から凛がETOに甘えて来るのを蓮司が我慢させている事が原因だ。
やはり凛とETOであっても異性同士の過剰なスキンシップはよろしく無い。
二つ目は、相手がケンだったと言うのが理由かもしれない。
幾ら素行が悪いとはいえ
見た目は長身の細身に見えるがガッシリした筋肉質のモデル体系で
顔は眠そうだがクール系のクッソイケメン。何処からでも目立つ。
蓮司としては男として見本、お手本としたいと思わせるほど男らしいのだが、凛から見るとやはりETOを取られてしまうと感じてしまってもおかしくない所に膝枕と言う爆弾が投下された。
実際さっきから
「ETOの初めては全部アタシが良い〜〜‥‥‥」
などとうわ言の様に言っている。
変な言い回しは止めて頂きたい。
「アタシのETO〜〜〜‥‥‥‥」
‥‥‥‥‥‥もう、収集が付かない‥‥
蓮司のYシャツをしっかり握りしめ顔を膝に埋め泣いている姿は小さい子供みたいだった。
ETOは凛の頭を撫で続け
『♪My friend is very kind and helpful〜だからあなたが泣いている時はいつもそばに‥‥‥‥‥‥‥‥‥♫』
小さく透き通った声でゆっくり歌われた初めて聞く優しい歌‥‥
凛を落ち着かせるつもりで自然に出来た新曲だった‥‥‥‥
凛の握られていた手は緩みいつの間にか嬉しそうに寝息を立てていた。
一時間目の途中、三組の一人の男子が鼻歌混じりで機嫌が良さそうに屋上に上がる階段を登って来る。
「
屋上の扉の前で男子が引きつり立ち止まる。
「あ、あの‥‥‥‥」
「‥‥‥‥なんだ‥」
扉の前で座り込む鋭いケンの声
「ば、伴内くん‥‥せ‥先生から江藤くんを探して来てくれと頼まれまして‥‥‥屋上に居るときいて‥‥‥‥‥‥‥」
「閉まってる‥‥‥‥‥」
「え?‥‥いや‥」
「閉まってる!つってんだ‥‥聞こえねーのか‥」
「‥‥‥‥‥あはは‥‥ですね〜」
男子は転げ落ちそうな勢いで階段を降りて行った。
屋上で二人、緩い風に当たりながら蓮司の膝枕で眠る凛。
一時間目は諦めて、ゆっくり凛を甘やかす蓮司だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます