49話 2-13 思わぬ三角関係
翌週
あれから毎日教室登校出来ているお陰でようやくほんの少しだけ気持ちに余裕が持てる様になった。
凛の設けた約束を守っていれば何とか乗り切れると分かってきたからだ。それは‥‥
音楽、体育の授業は保健室で自習。
トイレは通常生徒の使えない職員用を利用する。
基本は凛と行動しETOの不意な出現には気をつける。
これさえ守っていれば毎日大体同じ事の繰り返しになる。男子の急接近など、イレギュラーな事態には凛が上手く対処し事なきを得ていた。
大変に見えるが悲惨な昔の学校生活に比べればムダに女子にチヤホヤされるだけで嫌な思いをする事なく大好きな授業を平和に受けられる事の方が蓮司に取っては大きい。
もちろん凛は更に大変な筈だがETOと一緒に居たいというだけで異常な程のモチベーションを保ち続けている。
今日も朝からいつもと変わらず下駄箱に入ったラブレターをゴミ箱に放り込み二人は教室に向かう。
‥‥‥‥‥‥‥
今日の教室前は驚くほど静かだった。普段なら挨拶や雑談で朝特有の盛り上がりがある教室に騒がしさか無く登校していた生徒は静かに席に着いている。
「‥‥‥‥‥‥‥‥??」
教室を開け不思議そうに覗く凛に駆け寄る女子生徒。
「凛チャおはよう‥」
小声のシノだった。
「おはよう‥‥‥‥ みんなどうしたの?」
シノは横目で指を差す。
見ると蓮司の席にうつ伏せで寝ている見るからに不良生徒。凛は顔をしかめ近づき、何かに気付いた様にいきなり男子生徒の肩を強く叩いた。
「っって!!!!」
飛び上がる不良生徒。
「アンタ!そこで何してんの!自分の席に戻って!!」
教室中に張り詰める空気。
「って〜だろ!何すんだよ!」
「ここの席が使えないでしょ!」
「‥ここ江藤の席だろうが!来ない奴の席で寝て何が悪りぃんだよ!」
睨み合う二人‥‥‥
赤茶色の髪の毛にネクタイ無しの着崩した制服に目立つ赤いTシャツ‥見れば誰もが一瞬フリーズするイケメン
「‥‥‥ケン?」
「あぁ? ‥‥っ お姫!?」
蓮司はケンの横に立ち
「ここ僕の席!座れないんだけど!」
頬を少し膨らませ睨む蓮司にケンはのけ反り目を反らし
「わ‥‥‥悪い、お、お前が江藤だったのか‥‥」
ケンは慌てて蓮司の隣の自分の席に戻る。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
この光景に凛を含め全員が固まっていた‥‥
「お姫はやめろって言った!」
ケンは聞いてないふりをする。
「‥‥‥謹慎、明けたんだね‥」
蓮司がバッグから提出物を出しながら聞いた。
「おぅ!今日からな!」
ケンは椅子ごと蓮司の席に近づき
「な!お姫!屋上にバックレようぜ!」
「やだ!」
即答でムスッと断る蓮司。
「んだよ!いいじゃんか〜!」
このやり取りに凛が慌てて割り込み
「ちょちょ!まって!アンタ達知り合い?」
「てか、会話も状況も色々付いていかないんだけど!」
「説明して!」
‥‥‥‥‥‥
「別に‥この前、音楽の授業中にお姫と屋上でサボったんだよ」
「は?聞いてない!」
驚いて覗き込む凛に蓮司は気まずそうに
「あ‥っと‥‥言い忘れてたってか大した事‥無かったから忘れて‥‥たって‥‥言うか‥‥‥‥」
「そ!大したことねぇぞ!ちょっと膝を借りただけだしな!」
「ケ!おまっ!!」
蓮司はケンの膝をペチンと叩き睨む!
「はぁ?????え?‥‥は?どういう事!蓮司!!」
「‥‥‥‥座ってたら‥‥乗ってきた‥‥」
「ズルい!!アタシだって蓮司に膝枕してもらった事ないのに??」
「え?」
「だってそうじゃん!!アタシは毎日頬ずりだけしか‥‥‥‥‥‥」
蓮司は真っ赤になりながらあわてて荒ぶりテンパった凛の口を押さえ教室から連れ出しながらケンを指差し
「ケン!お前も変な事言うな!!」
「お‥おぉ‥‥‥‥‥」
何とも言えない可愛らしい怒った顔で教室の扉をピシャリと閉めて行ってしまった。
静かになった教室で誰かがボソッと
「修羅場?」
と言った。
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