48話 2-12 募る不安

 「凛を正式にマネージャーとして雇用したい。」


凛は少し不安そうな顔をして。


「分かんないけど‥正式って今と何か変わるの?」


「心配しなくても業務内容が何か変わる訳じゃ無いよ?」


「そっか‥‥」


凛は安心した笑顔に戻る。


「ただ、もう一度、親御さんの許可が要るらしい。僕らみたいな未成年の場合、子供の一存やアルバイト感覚の軽い承諾ではなく、契約内容を確認してもらって捺印を貰う必要があるんだ。」


「‥‥‥‥来週、凛の両親‥どっちかに時間を取って貰う事って出来るかな‥」


凛は少し驚いて‥


「え?雇用形態が変わるってだけじゃないの?」


「まぁ、僕もそう思うんだけどさ‥‥‥今後、問題が起きた場合の責任は僕ら子供が取るんじゃ無い‥‥親や周りが取る事になる‥‥」


「とてつもない迷惑が掛かるんだ‥‥‥」


「って僕も丹羽さんについ最近聞いたんだけど‥‥‥‥」



‥‥‥‥‥‥


「‥‥そっか‥‥分かった!」


心配そうな凛に


「その日は丹羽さんにも来てもらう予定なんだ‥昨日の着信はその事だったみたい。」


「‥‥えっ‥‥と、なんで丹羽さん?」


「契約の場で、話す相手がどんな人か分からない限り下手に経験の無い僕や東さんみたいな人は危ない事もあるからだ‥‥‥‥っ‥‥て」


「あ!ごめん!凛のご両親が危ないかもって言ってる訳じゃなくて‥‥‥‥‥」


「分かるよ?丹羽さんが話した方が耳を貸しやすいって事だよね?」


「‥‥‥‥‥‥うん‥‥」


凛は顔が曇り不安を隠せない表情になる。



「‥‥‥‥あの‥さ?」


「もし‥‥‥‥もしも両親が反対したら?‥‥‥」



「‥‥‥‥‥‥‥‥残念だけどこの話しは無しになる。」


「もちろんそれまでの研修分のお給与は振込させてもらうけど」


‥‥‥‥‥‥‥‥


蓮司は凛の緊張した様子を見ながら


「ご両親‥‥厳しかったりするの?」


「んーん‥普通だと思うけど‥‥何だか思ってたより大事おおごとって言うか‥少し不安になってきた。」


「蓮司‥‥ もしダメだった場合、アタシをこのまま‥研修のままでって、出来たりする?」



‥‥‥‥‥‥


蓮司的には凛が居てくれればそれで良いのだがVision側がそれを認めるか分からない。


正式雇用の場合、Vision社員の担当とは別に必ずマネージャー(管理者)を立てなければならない規約がある。



元々マネージャーが居る場合でも必ずVision側で研修を受けたマネージャーをクリエイターに派遣する事になっているが、ETOの場合、契約時に凛をマネージャーにする事を丹羽さんにお願いし、特例として認めてもらっている形だが研修はVisionの講習内容にそってもらうとの事



ぶっちゃけVision側は

クリエイターが飛ばないため(無断移籍)の身元保証みたいなもので、それに関して信用の薄い凛は別契約が必要と言う所だろう。


「‥‥‥‥凛?‥‥僕は出来れば凛のご両親にも僕らの活動を認めてもらいたいと思ってる。今のままでも構わないけど、やっぱり、仕事とは言え朝から晩まで何処で誰と何してるか分からないってのは、ご両親も心配が出てくるだろうし、僕自身それを気にしちゃうと何かしら遠慮しちゃう事もあるよね‥‥‥」


「そっか‥‥そうだよね‥‥‥」




「‥‥うん!来週だよね?ママに正式雇用の件、話してみる。」


まだ不安が解消しきれていない表情ではあるが少し前向きになった凛に笑顔が戻った。



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