42話 2-6 立派な男の子
二人で課題をこなすシャープペンの擦れる音だけがリビングに響く。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ねぇ凛?」
蓮司は課題が終わり、ペンを置いて凛に顔を向けた。
「‥もうすぐ研修期間が終わるけど、どうだった?」
「ん?‥‥どうって?」
凛はペンを止める事なく蓮司の質問を聞く。
「ん~‥‥その‥朝から晩まで僕とETOを見てくれて‥‥‥辞めたくなったりしなかった?‥‥とか‥‥」
蓮司の申し訳なさそうな尻窄みの声に凛は突然ギュッと距離を詰め真剣な顔で
「アタシはそれが好きでやってるの!半端な気持ちで頭を下げたつもりは無い!‥蓮司だってそうでしょ?‥‥‥もう二度とそんな変な質問しないで!」
凛は再び課題にペンを走らせた。
「‥‥‥‥‥ごめん‥」
続いて凛も課題が終わり広げた文具をバッグにしまい小走りで洗面所に向かう。
ピッピッっと湯船にお湯を張る音がきこえてきた。
「お風呂出来たら入っちゃって?」
「その間ご飯の準備しちゃう!」
凛はキッチンでエプロンを着けてサッと髪の毛をポニーテールに結び冷蔵庫から食材を取り出す。
トントンと包丁の叩くリズム。
見えなくても手際の良さがよく分かる
時間をみるとまだまだ17時過ぎ‥‥‥‥
あれ?今日は早すぎないか?
「蓮司!アタシ今日からご飯食べずに早めに上がらせてもらうから」
「‥‥‥‥‥どうしたの?用事?」
「んーん!別にそんなんじゃ無いよ〜」
淡々といつも通り料理をする凛。
首を傾げながら自室に制服から着替えに行く蓮司。
普段着でテレビを着け、ソファーでゴロゴロしているとピーーーーッとお風呂が沸いた音がした。
「お風呂行くね〜」
「は〜い!ゆっくり温まっておいで〜!」
夕飯の下ごしらえが終わり、庭に目をやると、まだ外は明るかった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「蓮司!!!」
急に凛が庭に飛び出すと干してあったバスタオルを引っ張り
洗面所に走る。
いつもとは違うルーティンで洗濯物を取り込むのを忘れていた。
乾燥機もあるのだが、出来るだけ天日干ししたい凛が朝からタオル類と服だけを外干ししていた。あまり数が多くないバスタオルは今、脱衣所に無かったハズ。
ガラッ‥‥‥‥‥‥
フヮ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ォ♡
‥‥‥‥‥‥‥パタン
静かに閉じられた扉‥‥
床にポトリと置かれたバスタオルと
「ふぅ~‥‥」
お風呂から上がった蓮司がタオルドライをしながらリビングに帰って来た。
ソファーには両手で顔を隠し土下座ポーズでうずくまる凛。
「ごめんなさい‥‥‥‥‥‥‥」
「わざとじゃ無いんだし怒ってないよ?」
「でも‥‥‥‥‥‥」
土下座ポーズのまま動かない凛。
「見たの?」
「いいえ、みてません」
「‥‥‥‥‥僕、女の子だった?」
スクッと背筋を伸ばしキリッと
「いえ!立派な男の子でした!!!」
「うん見てるよね?なんでウソ付いたの?」
凛は再び土下座に戻る。
「興味本位でした‥‥‥性別の概念を覆す新たな境地がそこにあると‥‥‥‥抑えられない衝動でした。」
「‥‥‥‥‥で?その境地は?」
「ありませんでした!立派な男の子でした!」
「うん反省してないね?なんで目ぇ輝いてるの?」
蓮司は凛が用意してくれていた冷たいお水を飲み干してため息をついた。
「まぁ、凛だし‥ちゃんと分かってくれたなら今回は見逃してあげるよ」
凛はニッコリ笑い
「夕飯、食べるでしょ?用意するね?」
鼻歌混じりに機嫌良くキッチンで料理を温め直す凛だった。
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