第36話 歌姫誕生の秘話 番外編2

 丹羽は会社を抜け、都内の高級バーに来ていた。


動画を見ながら誰かを待つ丹羽の後ろから肩を叩く女性。



「丹羽ちゃん!久しぶり!」



「アユ!‥遅いぞ」


「いつもの事でしょ!」


「自慢するな!」


アユはドカッと椅子に座るとバーテンダーに


「あ、いつものね〜」


軽い感じで答えた。



丹羽はウイスキーを一口飲み


「で?見てくれたか?」




「‥‥う〜ん悪く無いけどね〜」




アユは足を組みスマホを触りながら答えた。


‥‥‥‥‥‥‥‥


「昔のアタシにそっくりなんだよね〜‥リエル」


「女王様‥」


アユはクスクス笑った。


「カリスマ性もある‥」


‥‥‥‥‥‥


「一つ違うのは歌唱力。」


「リエル、上手いけどアタシの足元にも及ばないのよね‥」


アユはイジワルそうに笑うのをウイスキーを見つめながら黙って聞く丹羽。


目の前にだされたカクテルを見向きもせず丹羽の横顔を見続けるアユ。



「‥‥‥‥‥‥‥‥」



突然アユは丹羽が首から掛けていた古いイヤホンを引っ張り


「違うでしょ?」


丹羽は驚く。

アユはニヤリと笑い


「なんか隠してる!」


丹羽のイヤホンを自分の耳にあてた。



「ちょっお前!」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


‥アユの顔が見る見る真顔、真剣になる。




「‥‥‥‥‥‥‥‥‥何これ‥誰!!」


アユは丹羽に詰め寄る。

丹羽は諦めた様に


「ウチの社員が見つけたクリエイターだ‥」


丹羽はアユに自分のスマホを渡した。アユは真剣にスマホを見る。


「こいつの歌を聴いた時‥お前を見つけた時と同じ感覚だったよ‥」


アユは丹羽にスマホを返し聞いてないような反応だった。


「で?結局リエルは会うのか?」



「‥‥‥‥‥‥‥‥」



アユは突然丹羽に自分のスマホを向け




「ETO!チャンネル登録完了〜」



固まる丹羽。

ETOのコメント覧にはアユの公式アイコンで


『次世代の歌姫!』


とコメントが‥すでにイイネも付き始めていた。

丹羽は頭を抱え



「やってくれたなお前〜‥‥」



アユは笑いながら


「良いじゃん〜アタシと丹羽ちゃんの仲でしょ!」


と丹羽の肩をバンバン叩いた。


「それに‥丹羽ちゃんも思ったでしょ?」


「何が!」


アユはカクテルを少し飲み


「十何年振り?‥二人目!丹羽ちゃんの惚れる歌姫の出現」



アユは自分の首元を指差し

  「一人目」とニヤリと笑う。



「アタシさ、前にも言ったけど丹羽ちゃんが引き抜くなら付いて行くよ?いつでも!」


「バカ言うな‥問題娘‥」


丹羽は目を反らした。アユは丹羽の腕に絡みつき肩に顔を埋め


「あの時、丹羽ちゃんが助けてくれなかったら‥」


か細い声のアユ。


「やめろ!‥昔の話だ!」


「でも私のせい丹羽ちゃんが責任取って‥」


「やめろ!!」


丹羽は強く言うとアユは下を向き


「丹羽ちゃんと離れたく無かった‥」


消え入りそうな声で言った。

丹羽は笑いながら


「変な言い方やめろ!デキてるみたいじゃね〜か!」


「このおてんば娘」


アユはケロっと泣き止みニヤリと笑い


「ね!今のアタシとリエルを会わせたらどうなると思う?」


丹羽は腕を組み



「‥‥‥無しだ!リエルが潰される‥」


アユは大声で笑い


「でしょ?それがアタシの答え!」


丹羽はまいった様にアユを見ていた。





「アタシ、行かなきゃ。」



バッグを腕に掛け立ち上り出口に向かって歩きだすアユに丹羽はスマホを見ながら






「‥‥‥アユ‥お前ワザとやったろ?」





立ち止まるアユ



「‥‥‥‥」



アユはバッグからサングラスを出してかける。アユは振り返りとぼけた顔で


「なにが?」




アユは丹羽に後ろから抱き付き、丹羽の耳元で


「相変わらず脇が甘いわね。」


「ETOちゃん、間違いなく日本の音楽業界を変えるわ。夫(NEOTUBE取締役)が黙ってない‥」


ギリッと丹羽の顔が怒りに変わる。


「夫は欲しい物は何でも‥どんな手を使っても手に入れる‥身にしみて分かってるハズでしょ?」


アユは丹羽の背中を押して


「アタシの時みたいに‥」


アユは丹羽に表情を悟らせないように顔を背けると泣きそうな顔になる。


「ちったぁ成長したかと思ったが、変わらねぇな‥嫉妬グセ。」


アユは出口に向かって歩きながら


「成長?あなたに言われたく無いわよ‥甘ちゃん!」


アユは店から出ていった。





「マズイな‥‥‥‥早い所ETOを確保しないと‥

また潰される‥‥‥‥‥‥」


丹羽の拳は強く握られ震えていた。





それから約半年後 歌コンが開催される事となる。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがき


この番外編が【時限の歌姫】の元になる最初に出来たショートストーリーです。


前にも書いた通り表に出す予定の無いストーリーだったので応急処置的な手直ししか出来ませんでした(^_^;)


他にもサイドストーリーは複数ありますので今後、タイミングを見て分かりやすく入れて行く予定です。


明日から 第二章【翠色の歌姫】を続編として更新していきます。


長くなりましたが、ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。


少しでも良いと思って頂き星やハート、コメントで評価して頂けると、にじむの励みになりますので良ければ、よろしくお願いしますm(_ _)m


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