第30話 歌姫 ETO
真っ暗なステージの巨大スクリーンに一瞬だけぼんやりと映し出される見覚えのあるMVの冒頭‥‥
この時点で恐ろしい程の悲鳴が客席を包む‥‥
ゆっくりとシルエットが浮かび上がり
カシャン!!!
真っ白なスポットライトと共に現れた少女。
スクリーンに文字が点灯する。
歌姫 ETO
マリンドームが揺れる程の大歓声、巨大スクリーンには超絶美女のETOが映し出される。
警備員も規制線を守るのが精一杯という状態。
控え室から飛び出して来たクリエイターも警備員に抑え込まれていた。
舞台袖の一番近くに居る凛とそれを支える東。
数歩近づけば触れられそうな距離のETO‥
割れる様な歓声を通り越した先は砂嵐の様な無音に感じた‥
『聞いて‥‥‥‥‥‥』
たった一言で会場を静寂にする。
今にも倒れそうな凛に東が声を掛ける。
「分からない?いつもあなたの側に居た人」
「良く見て!凛ちゃん!」
‥‥‥‥‥ウソ‥
ETOの衣装は蓮司に渡した
『今日だけは‥‥‥』
『たった一人にだけ歌を届けたいの‥‥』
『私の大好きな親友‥‥』
『私の光‥』
ステージ全体にキラキラとエフェクトが掛かる
ETOが静かにスタンドマイクに両手を添え右手を
ゆったりと柔らかく上げると同時に流れ出すイントロ‥‥‥
フワリと揺れる黄緑色のウィッグ
誰もが知っている1stリリースの曲
ETOの歌はスピーカーを通しドーム全体を渦巻く様に流れて行く。
波打つ様に人の心を打ち消えて行く‥‥
凛の涙も止まらない‥こんなにも涙腺崩壊を感じた事はない。
信じられないし、信じられる訳が無かった‥
あの時、一瞬だけ見えた蓮司のキレイな素顔と
東さんの声がアタシの中でゆっくりとETOと蓮司を重ねて行く‥‥‥
嗚咽が止まらない。
こんなにも近くにいたなんて‥‥
空気が上手く吸えなくて、ぼやっとする頭でもハッキリと耳に入ってくるETOの歌。
東さんも涙が止まらず、泣きながら笑顔で凛の顔を見ていた。
焦がれ続けた後ろ姿。
初めて見た時からあなたをずっとずっと
応援してました。
曲が静かに終わりETOはゆっくり深くお辞儀をする。
咳を切った様な大歓声、ドーム全体が痺れているみたいだった。
ETOはゆっくりと凛を向き真っ直ぐに向かって歩いて来た。
凛の憧れる美しい歩き方。
凛は、まるで子供が大好きなマスコットキャラクターに出会った時に見せる人見知りで照れたように逃げだす動きで東の背中に隠れた。
それを東は母親の様に優しくETOの前に誘導した。
ETOは凛の手を取り優しくファンデーションを渡した。
会場で蓮司に貸した物だ。
ETOは微笑み凛に言った。
『Rinちゃん‥いつも応援ありがとう‥』
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らくがき
にじむです。
いよいよ次回で読み切り分のネームが終了しますが新章に繋がる話でもあります。
これからもよろしくお願いします!
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