第29話 シークレットゲスト
心配そうな凛を笑顔で見る東は
「うん!これから私がMCだからここで待ってて?」
スタッフや警備員を書き分け袖ギリギリに凛を待たせると、スタッフに渡されたマイクを受け取る。
薄暗かったステージの蛍光灯が付き東さんはステージの中央に歩いて行く。
満員の客席の人も蛍光灯の明かりで少しリラックスした雰囲気になり疎らに話し声や笑い声が聞こえて来た。
東は客席に向かって笑顔で
『皆様、本日はお楽しみ頂けているでしょうか。』
『日頃から当チャンネルをご利用頂いているお客様に社員、スタッフ一同、心より深く御礼申し上げます。』
東は深くお辞儀をすると客席から拍手が上がってきた。
『さて、ここからですが、歌コンの告知において募集してありました。一般枠での審査通過者によるパフォーマンスを‥‥‥‥』
いよいよ蓮司の出番だ。
凛は自分が出場するより緊張してきたかもしれない。手汗が止まらず心音で体が揺れていると錯覚するくらいドキドキしてきた。
「‥‥‥ 蓮司」
東さんがステージMCで客席を笑わせている途中‥‥‥‥‥
突然、全ての照明器具の明かりが落ちた。
客席からざわ付きと軽い悲鳴が上がる‥‥‥
突然、赤い照明でドーム内にブザーが鳴り響く。
ドームの特大ビジョンにはV動画トップのDJクリエイターが映し出される。
客席のボルテージが一気に上がった。
『Ladies・&・Gentlemen!』
『たった今マリンドームはシークレットゲストに占拠されてしまいました!‥‥‥‥‥』
MCが入れ替わり凛の所に帰って来る東が顔の前で軽く手を合わせて困った表情でごめんね‥と口元が動く。
「今から、ゲリラライブ入るみたい‥」
凛は呆然とする‥
「じゃあ蓮司のステージは?‥‥‥」
東さんは凛の側で肩をギュッと抱えて黙ってステージを見ていた。
真っ白になった‥‥ここまでやってきて蓮司の出番が無ければ、本当に振り回しただけ、嫌な思いをさせただけ‥‥
‥‥‥‥‥‥‥本当に嫌われる‥‥‥
「やだ‥‥‥‥蓮司‥‥‥ ‥‥‥」
俯く凛が力なく東さんに寄りかかる横を警備員が慌しく駆け抜け客席に規制線を貼る
客席は期待でどよめき悲鳴のような声も上がる。
スクリーンの映像が消え照明も落ち真っ暗な中。
『では、お待たせいたしました‥』
『本日のシークレットゲストは!!』
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