第26話 最高の舞台を‥‥
「この1ヶ月僕の事を探し回ってたって事ですか?」
蓮司は丹羽を睨みつけた。
「いや‥もっと前からだ‥」
丹羽は手に持ったボールペンをカチカチと鳴らし
「ぶっちゃけ一般枠もETO以外受かる予定は無かった。」
「もっと言うとマリンドームの歌コンさえ茶番だ‥お前と接触出来れば何でも良かったんだ。」
「本気で出たがってた人だって居るのに!」
凛を思う蓮司は怒りで震えていた。
「お前、運営のメールや連絡を全無視してるだろ?‥‥重要事項のメール‥見ても無いか?」
「‥‥‥‥」
下を向き
「ダメなんですか?別に登録無料の投稿コンテンツで誰かに迷惑かけたつもりも規約違反もしたつもりはないです。」
「‥違う、俺は責めてないぞ?」
丹羽は困った様に頭をかいた。
「お前、ETOをどう見てるか知らないが、ETOは個人が小さくやってるチャンネルじゃないレベルの影響力だぞ?」
蓮司は目を反らしながら
「まぁ、多少は分ってます‥」
丹羽は続けて
「親御さんは?」
「収益の管理は任せてますので‥」
「お前自身、収入はどれくらいとか把握は?税金は?」
蓮司はうるさそうに目を閉じ
「知らないです。」
丹羽は持っていた一枚の紙を蓮司に差し出し
「ウチの正式雇用になれ‥こっちで色々とサポート出来れば親御さんの負担は減る!」
蓮司は雇用書を見つめ
「考えさせて下さい。」
と呟いた。丹羽は
「なぜ迷う?正式雇用は準クリエイターからするとメリットしかないはず‥」
蓮司は
「ETOは長く無いんですよ。もう時期終わる‥」
「‥何か事情がありそうだな。」
丹羽は詳しく事情を聞いた。
ある程度、話を聞いた丹羽は困った顔で
「事情は分かった‥つまり、明日消えるかも分からないETOを人前に出したくないって訳で運営の接触も避け歌コン辞退‥‥‥か」
蓮司は「もういいですか?」
と立ち上がると
丹羽は「じゃお前は‥‥なぜ今回出場したんだ?」
そう聞いてる時、コンコン!扉が開き
「エトウさん、メイク室にお願いします。」
東が呼びにきた。
「‥‥‥言わなきゃダメですか?」
「いや‥いい」
蓮司は椅子を戻し部屋を出ようとすると丹羽は
「一緒に来てた娘は、マネージャー?」
蓮司は足を止める。
「あの様子だとお前の事をETOだと知らないのか?」
蓮司は丹羽を睨みつけ
「‥‥ずっと監視してたんですか?」
「正確には二人のどっちがETOなのか分からなかったからな」
東は思わずコクコクと目を丸くして頷いた。
‥‥‥‥
「お前‥‥ETOは何のために歌ってるんだ」
「‥‥それも言う必要は無い、だがもし
その限りある声で届けたいメッセージがあるなら、最高の舞台を用意してやる」
「いつものETOウィッグを持ってメイク室に行け。みんなお前を待ってる。」
蓮司は何も言わずにサングラスをかけ速歩きで部屋を出て行った。
誰も居なくなった部屋で一人、雇用書を見つめる丹羽‥‥
「姫には時間に制限があるとな‥‥‥おとぎ話じゃねーか‥」
「‥‥時限の歌姫‥‥‥ ‥か‥‥‥」
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