第25話 網にかかる歌姫
数日後
東はガッカリした様子で
「丹羽部長‥ETOさんが正式に不参加を通知してきました‥」
「‥やっぱりか‥」
「もっとマズい事態がありまして‥」
「なんだ‥」
東は、申し訳無さそうに目をギュッと瞑り下を向き
「その‥‥部長の言う通りに煽り過ぎたと言うか‥‥リエルさんが動画で歌姫対決の告知をしてしまい‥‥歌姫という言葉が独り歩きしたみたいで、一部のお客様やファンの間でETOさんが出るのが決定みたいな感じで」
「チケットが高額転売、詐欺まがいな事が起こってまして‥」
「チッ!」
丹羽は頭を掻きながら舌打ちした。
「どうしますか?」
東が聞くと
「どうもこうも‥ETOを引っ張り出すしか無いだろ!」
丹羽は200件近いの一般応募のデータを東に見せ
「ここからETOを探し出す!」
「居るんですか?」
「分からん!でも賭けるしか無いだろ!」
「ETOの曲に絞って分析にかける!見るデータが減るだろ!」
ETOの曲以外の応募動画は可能性は低いものの念の為、目視で目を通す。
「‥‥‥東!お前、耳が良かったよな?」
数日後の夜
眠そうに応募動画に目を通す丹羽と巻き込まれた東。
「部長ぉ〜眠いです〜‥まだ3分の1以上ありますよ〜」
「‥うるさい‥俺だってほとんど寝てないんだよ」
薄暗いオフィスで二人のパソコンだけがピカピカ光っていた。
「ETOさん出ないんじゃないでしょうか‥」
「よく考えればお金も知名度も気にしないETOさんが歌姫の冠を欲しがるとは思えないわけで‥」
‥‥‥‥‥
ブーッ!!
丹羽のスマホに分析科からの結果が届いた。
「‥‥‥かかった!」
‥‥‥‥‥‥
「起きろ東!」
「んぁ?」
丹羽は自分のパソコンに分析結果を落し動画を再生してを東に見せる。
「ETOだ!」
「‥‥何言ってるんですが部長」(笑)
「全然声違うじゃないですか〜!もう寝てるんですか?」
笑う東。
「上手く編集されてるんだよ‥」
「分析に掛けた動画でこれだけがETOの声紋を検出した‥‥」
真顔になる東
「どういう意味ですか?」
「どんなに声色を変えても本人の持つ無意識下に出る基本の音は隠せないって事だ。自分の歌なら尚更な」
東は目を見開き
「なるほど!そう言えばETOちゃんの声を真似れる人も居ないですし分析が混乱する紛らわしい声も少ないですもんね!」
「‥‥‥そう言う事にもなるな。」
ドヤ顔の丹羽の横で嬉しそうに正式雇用書を見せる東。丹羽はエントリーデータを見ながら「エトウリン‥エトウ‥ETO‥な〜るほど‥」ニヤリと笑う丹羽。
「東!直ぐにエトウに合格通知を出せ!」
「俺は今からETOのゲリラライブの演出を作る!」
腕を捲くる丹羽。
「‥‥‥‥‥今からですか?」
東は午前2時を過ぎた時計を指さした。
「‥‥‥浮かれ過ぎです丹羽部長。」
「だまれ!そして帰れ‥明日半休やるから昼過ぎたら来い。」
「後、エトウの合格通知は予定通りので頼む‥‥」
丹羽は捲くった袖をゆっくり下ろした。
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