第24話 正体不明の歌姫

 会社はいつも以上に慌ただしかった。


V動画【Vision動画コンテンツの提供会社】

東京支部


「丹羽部長!!」


扉をすごい勢いで入って来る女性社員。丹羽部長がうるさそうに


「ゆっくり入って来れないのかあずま!」


「ホントにやるんですか?歌コン!」


「やるよ。マリンドーム抑えてたろ?」


「‥‥やった〜」


小さくガッツポーズする東は顔を真っ赤に興奮する。


「リエルに連絡入れてくれ」


「歌姫を決定するってな」


「え?歌姫ってETOちゃんじゃないんですか?」


はぁ‥‥クシャっと頭を掻き真顔な丹羽は困った感じで


「良いからあの面倒臭がりを適当に煽って出演を取り付けろ‥」


丹羽はあまりきれいに剃られていない顎髭を撫でながら


「会社としては管理出来ていないクリエイターが上って来るのは色々と厄介でな‥」


東のデスクにはETOの白紙の正式雇用書が置かれていた。


普通なら正式雇用はクリエイターに悪い話ではない。広告量も収入面も‥クリエイター側から正式雇用の話を持ち出してきても、こちらの要請を無視し続けるなど無かった‥


「出て来ないなら引きずり出すだけだ‥」


「何かあるのか?天才歌姫‥」


丹羽は眉間にシワを寄せETOの新曲動画を見つめるのだった。


東のパソコンに映る一般の部の広告。


「‥この一般の部って要ります?」


東が丹羽に聞く。


「‥‥ETOの出演依頼とれたなら消せ」


東は下を向き小声で


「いえ、まだです。‥‥え?一般の部とかETOさん関係ないんじゃ?」


「なら普通にETOが出演すると思うか?」


丹羽が東に問う。


「分かりません」


今回の歌コンは博打でやってる‥

会社と丹羽の信用を掛けETOをゲリラでライブさせる事を条件に無理矢理マリンドームの北口の特設会場に歌コンをねじ込んでいたのだ。もしETOが捕まらなければウチの信用はガタ落ち‥売上以上に痛手がある。‥リエルには悪いがETOの保険で呼んでおく必要があった。


丹羽は山積みのデスクの書類を面倒くさそうに眺めながら


「‥‥なぜETOが動画以外で何も掴めないのか、考えた事は?」


「極端な人見知りさんとか」

東はちょっと笑いながら冗談っぽく答えた。


丹羽は印鑑に息をかけ、ガンッと押しながら


「‥‥かもな。」


東は目が点になる。


「歌‥動画で成功とか収入とかそっちのけでここまで歌えるものなのか?」


「‥単に誰かに届けたい歌‥‥?」

丹羽は何気に呟くと


「と、言うと?」


東が食いつく


「ETOはETOとして出演しない可能性もあるって事だ!憶測だかな!ETOが掛かるなら間口は全て開いておく!」


歌コンの一般の部の応募審査に年齢、男女問わず動画審査で決定の文字が画面に映る。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

らくがき


にじむです。


【時限の歌姫】ですが。第一章も終盤に差し掛かっています。


元々は読み切りの漫画からなので、予定通りと言う感じでしたが、文章は難しい!けど楽しんでおります。


新章に、着手していますが、より読みやすく勉強していきたいと思います。


では

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