第23話 こりゃ見つからねぇ訳だ!

 蓮司はトイレに入りサングラスを外して鏡の前でため息を付く。

顔を上げると完全に女性な顔の自分が男子トイレにいることに血の気が引いた。

金髪のウィッグを外し慌ててトイレを出ようとすると




ドン!‥‥‥‥ 出入口を腕で塞がれた。



ゆっくり見上げるとニヤリと笑う知らないおじさんだ。


「‥変質者?」


蓮司は小声で言うとおじさんは


「違うわ!」


と大声でツッコむ。


「しっかし、こいつは驚いたな‥」


蓮司をマジマジと見る。


「‥おっとスマン」


と言いながらおじさんが胸ポケットからヨレた名刺を蓮司に渡す。


「Vision動画(株)、東京支部長、丹羽たんば清」


蓮司は嫌な予感で顔を上げるとおじさんは


「こりゃ見つからねぇ訳だ!」


「‥男だったとはな‥‥‥」



「歌姫ETO!!」



蓮司は思わず、前髪で顔を隠そうとするもウィッグを着ける用にセットされていたので、前髪はフワリと流れETOの顔を晒す。


男子トイレに誰かが向かって来る足音がした。

蓮司は慌てて下を向きサングラスを付けた。


「向こうで話そうか‥お姫‥」


蓮司はぷぃっと明後日を向く


丹羽は江藤を別室に案内した。



「座って!」


丹羽は自分の前に蓮司を座らせた。

蓮司はバレてしまったので無意味なサングラスを外す。


さっきの受付の女性がお茶を運んで来た。お茶を置き、蓮司をじっと見惚れて離れない。


『‥‥何かしらこの可愛い生き物‥‥男の娘?実在するのね‥‥』


「‥‥‥‥‥」




あずま!いつまでそうしてる!」


「ご、ごめんなさい!大好物です!!」


「は?  ‥‥‥欲求を声に出すな!!」


「は!はぃ!!」


と東さんは真っ赤になり慌てて部屋を出ていった。

閉めた扉の向こうから


「ETOちゃんかわいすぎる〜!」


と、かん高い小声が丸聞こえだった。


丹羽は額を掌で押え天井を仰ぎ呆れた声で


「あのバカ‥‥」


と呟く。

ゆっくり蓮司に向き直ると

「‥言っておくが、別に取って食おうとか、そう言うんじゃない。」

「お前の事は外部に漏らさないようちゃんと管理してある。」


蓮司はすかさず東の絶叫した扉の向こうを指差し「漏れてません?」と言いたげにジト目を向けた。


「すまん‥‥」


丹羽は下唇を出し気まずそうに目を反らした。


ふぅ‥と一息付くと丹羽は一枚の用紙を眺め


「長かった‥流石に無理かと思ったぜ‥」


蓮司は眉をひそめ


「良いオジサンが泣いてるんですか?」


「泣くわ!!」


間髪入れず丹羽は言う


「思い返せば‥‥」


丹羽はわざとらしく目頭を押え思い出す‥


ETOとリエルが新曲を上げた日の事‥‥‥




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