第19話 運命の審査結果

 凛と蓮司は駅で一つ隣の小さな公園のベンチで二人でハンバーガーを食べた。


薄暗くなり始め、公園の街頭がふんわり点灯し4月の空気が少し肌寒く感じる。


「ねぇ蓮司‥アタシの歌で出しても良いのかな‥‥ ETO‥下手すぎたら怒るかな‥‥」


さっきのカラオケ乱入事件はまだ立ち直れていないようだ。


いつになく弱気な凛。


「‥‥‥‥‥」


「出さなきゃ合否は分からない‥‥凛は、出さなくて後悔しない?‥」


「きっとETOは‥ETOだったら、凛の言う歌の上手い下手よりも伝わる気持ちを大切にするんじゃないかな‥」


「僕、凛の歌声好きだよ?」


「僕も協力する。だからETOに会いに行こ?」


「‥‥」


しばらく黙って蓮司を見つめていた凛は真面目な顔で手のひらを向けタッチを求めて来た。


「ん!!」


パチン!!


「蓮司!ありがと!元気でた!今から蓮司をマネージャーに任命す!」


「アタシに付いて来なさい!ETOに会わせてあげる!」


いつもの調子の凛に戻って来た。





しかし

 〜数日後


「んぁ〜〜〜〜〜!」


保健室の机でスマホを握りしめうつ伏せる凛。

その横で心配そうに背中をさすってあげている蓮司。

蓮司は肩から斜めに(マネージャー)と書かれたタスキが掛かっていた。


「絶対落ちてるじゃんょ〜‥」


「まだ時間あるし大丈夫だって!」


そう‥

この日、歌コンの審査結果の発表があり、通過者にはメールによって通知が来る。


「凛?何か飲み物買って来ようか?」


「もう、お腹タプタプ‥」


蓮司は苦笑いしながら

「だよね。もう3本目だし‥」


「でも、口がカラカラなの〜」


「じゃあ、とりあえず買って来るよ。少しづつを口を潤せば良いし。」


蓮司ほタスキを外すと保健室から出て正面玄関の自販機に向った。


凛は一人静かになった保健室でスマホをおデコに当て念じる‥‥通知来い!!


「‥‥‥‥ムリか‥‥‥」


次の瞬間


ブーッ!!


スマホが鳴った。


「あう‥‥‥ぇ?ウソ!来た!」


驚きすぎてスマホを落としそうになる。

ドキドキとスマホの画面を開くと




メッセ

蓮司『飲み物、何が良いか聞き忘れてた。』





「っ〜〜〜〜!」


「蓮司〜〜〜〜バカ〜〜〜〜〜!!!」


一階、保健室前の廊下に凛の怒りの叫びが響き渡る。




帰り道


結局、通知は来なかった。


「ヤケ食いしたい気分も出ないな〜‥」


凛は蓮司とトボトボと歩いていた。

さすがに蓮司も掛ける言葉が無くなり「マネージャーの僕の責任です‥」と呟いた。


「いやいや!君は良くやってくれたよ!」


と上司の様にポンポンと肩を叩く。


「ね!蓮司!また次の歌コンに応募したい!だからこれからも練習に付き合って!」


「良いけど、次はチケット取った方が早くない?」


「それだとETOを見るだけじゃん!」


「アタシはETOに会いに行くの!」


蓮司は俯き歩く速さを弱め小声で


「もし‥ETOと会えても僕ら友達で居れるよね‥」


「ん?何?」


凛はクルッと振り返り笑顔を蓮司に向けた。


「んーん」


蓮司は首を横に振る。

凛はポンッと蓮司の肩を叩くと


「じゃ!アタシはここで!また明日ね!」


「うん‥また明日。」


凛と別れ自宅に歩きかけた時、蓮司のスマホが鳴る。

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