第4話 ライバル
突然保健室の扉がガラッと開き江藤の肩は跳ね上がる。
「静かにしなさい!」
「!!‥」
「またサボり?上田!」
どうやら女の子は上田さんという名前らしい。突然入って来た保健の先生は腕を組みジロリと睨みつける。
「上田!次サボったら保健室出禁って言ったわよね?」先生はズイっと上田さんに詰め寄った。
「あ‥うぅ!」
上田さんは目を反らしサッとウイッグを背中に隠す。
「あの‥」
江藤は庇うように先生と上田さんの間に入り込み小さく頭を下げ
「僕が保健室に入って来たせいで‥その‥体調の悪い上田さん?を起こしてしまいましたかもしれません‥」
何も考えず出た言葉はまとまっていなかった。先生は江藤と上田さんを交互に睨んだ。上田さんは江藤を盾にするように後に隠れてしまうがほぼ同じ身長で隠れきれていない。
「はぁ~‥」
やれやれといった感じで
「今回は見なかった事にしてあげる!次の授業にはちゃんと出る事!」
強張っていた上田さんの顔はフニッと笑顔になりコクリと頷く。
先生は「あ、江藤くん、遅くなってごめんなさいね?はいこれ、課題!」
江藤は先生から課題のプリントをもらうと上田さんは後ろから江藤の顔を覗き込む。
「な、何?」
「‥江藤?3組?」
「そうだけど‥」
「ツチノコ発見!」
「は?」
どうやら江藤は教室に1度も入った事が無く幻の生物扱いをされていたらしい。
昼休み。
「え〜と〜う〜!」
上田さんがお昼を持って保健室に来た。
江藤の正面の椅子に座り弁当を広げた。
「お弁当は?」
江藤はコンビニで買ったサンドイッチを取り出す。
「そう言えばさっき‥」上田さんが切り出そうとした時、保健室の外の廊下から興奮気味に話す複数の女子の声がし思わず息を潜めてしまう。
「今日のETOの新曲聴いた?」
「ヤバいよね〜」
「リエルが新曲ぶつけてきたけど断然ETOだわ!」
「リエルがETOにライバル心バチバチ」((笑))
「ETOの新曲聞いたらカラオケ行きたくなってきた〜」
「帰り行こ!」
「「うんうん」」
女子達はワイワイと保健室の横を通過して行った。
黙って嬉しそうにうつむく江藤。
ふと上田さんを見るとニッコリと笑って頬杖をついていた。思わず恥ずかしさで顔を反らした。
江藤のポケットのスマホには「800件のコメントが投稿されました。」と点滅する。
「上田 凜」
はっ!と上田さんを見る江藤。
「私。上田凜っていうの!さっきは先生から庇ってくれてありがとね?凜でいいよ呼び方!」
同時に凛は催促するかのように手のひらを差し出して来た。
「‥ん?」
何が欲しいのか分からずサンドイッチを一切れ手のひらに恐る恐る置いた。
「あ、ありがと‥‥って違うから!!」
「え?」
「自己紹介の流れでしょ?」
「あ‥あぁ‥僕は江藤蓮司‥呼び方は‥ツチノコと呼ばれてるらしい‥です‥はい‥」
「‥‥‥」
「「プッ」」
微妙な間が同時に二人を吹き出させた。
こうして同級生と笑い合うのは忘れてしまうくらい過去の事で良い意味で心がキュッっとなった。
凛は手に持ったサンドイッチを自分の口にパクリと咥え
「蓮司!あ〜!」
「んぁ?」
自分のお弁当から大きな唐揚げを1つ僕の口に押し込んだ。
「‥‥おぃひぃ‥」
あまりに有無を言わせないスムーズな箸運びに怯むも恥ずかしいも無かった‥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます