第10話 本音

「お邪魔します。」

『どうぞ…。』

時が過ぎるのが早く感じる。この日を待ってたと言わんばかりに心が物凄くドキドキしている。

『今日は私しか、お家にいないからゆっくりしてください。』

「そうなんだ。両親は?」

『お父さんはお仕事。お母さんは私にはいないの。』

「あ…悪い。お母さん。亡くなったのか?」

『ううん。小さい頃に出ていっちゃったんだ。

それきりどこにいるのかもわからない。』

「顔は覚えてるのか?」

『うん。覚えてるよ。

凄く綺麗なお母さんだった。みんなに自慢したいくらい美人で、笑顔が素敵な人だった。

今でもね、会いたいって思うんだ。どこにいるのかな。』

「みき、…。っ…。」

ブルル、ブルル

「悪い。電話だ。」

『うん。どうぞ。』

「もしもし。あ、うん。俺だよ。

うん。……うん。わかった。すぐ行く。」

「ごめん。みき。今からちょっと行かないといけない用事ができて。ほんとにごめん。」

『そ、そっか。大丈夫。そっち優先させて。』

「ごめんな。じゃまた。」


もっと側にいたかった。

それが率直な気持ちだった。

なんか凄く胸が痛いや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る