第2話 美少女になれば主人公なんてイチコロでしょ



「闇光ライト。それが私の名前コード



ふっ、ドヤ顔で決まったぜ。前世でも言ったことがないような中二病がほんのり香るこの台詞。普通にカッコよくない?しかも主人公くん載りイイからなんかわかんないけど固まっちゃってるし!フハハハハハ。この無情な声を出すのに何時間かかったと思ってる!120時間だぞ!これが俺の人生の中で一番地獄だった日々の成果だぜ!あー気持ちィィィ!この謎の美少女ごっこの中毒回避すんの不可だわ



「じ、じじじじ、じゃあぼ、僕のこと覚えてる?」



え?まさかの展開。主人公くん俺が自己紹介した瞬間いきなり顔真っ赤に染めてるし。キショいぞ、そういうのは美少女がやると可愛いんだよ。爽やかイケメンが顔赤くするところを見るなんて、残念ながら俺はそういう趣味を持ち合わせていない。ごめんな、ここはキャラを作るためにも、冷たく行かせてもらうぞ



「誰?私の記憶データには貴方の情報は読み込まれてないわ。取り敢えず、突っ立ってないで座りなさいな。淹れたての紅茶を出すので」



「う、うん」



俺を主人公くんは必死に目で追っている。眼球エグいことになってるぞ、早く気づいた方がファン減らずにすむぞ−。だが先程の主人公くんが言った言葉、アレ本当なんだよなぁ。実際にエンドロールで流れる曲に原作での闇光シュウが幼い頃、何故か女装してダンジョンの花畑でまたまた幼い主人公と遊んでいる様子が描かれる。そして会話をしているのだがアレにはさすがの俺も泣いた。主人公くんが一目惚れしてシュウに『大きくなったら結婚してね』と言うとシュウが声変わりしていない声で『なら、千人ダンジョンで人を救ったら、いいよ?』と冗談で返答するのだが、主人公はそれを真に受けて千人ダンジョンで人を救おうとし、結局心が折れて自殺してしまうという映像が流れる。悲しいよね、でもね、現実での俺はその悲しい主人公側ではなくもっと比べ物になんないくらい悲しい悪役側なのよ。だからね、主人公くん。。ティーポットでカップに紅茶を注ぐ。ああいい匂い



「ほら、飲みなさんし」



「ありがとう」



「遠慮はいりませんわ。言いたいことが在るなら言いなさい」



俺が言うと主人公はおずおず口を開いた



「その、君が嫌ではなかったら、あの、ぼ、僕と同棲しない?」



は?は?は?ん?話し飛び過ぎではないか?流石の俺の演技力で無表情キープで済んだが普通の人ならちょっとドン引くぞ。でも、俺の天敵は主人公だけではない。その取り巻きのヒロイン達も天敵である。ゲームでの中立学園はすごくて、なんと彼女&彼氏会という謎の会が開かれるのだ。主に中立学園の生徒の恋人たちが集まってワイワイするという謎の会。でもそこにはヒロインたちがウジャウジャといる。例えば途中でNTRるロイに片思い中のギャル系ヒロインとか、ロイに片思い中の巨乳ポニーテール系ヒロインだとか、ロイに片思中のロリ美少女だとか。本音を言うとそこに俺という爆弾を打ち込んで嫉妬したヒロイン共に主人公くんを刺してほしいんだよなぁ。ん?てかそれじゃん!俺、いいこと考えちゃったかも



「なぜ?」



「それは君に一目惚れしたから!」



すげー、原作では超ヘタレだったのに...超元気で原作キャラとは真逆じゃん



「貴方、冒険者ランクいくつ?」



「SSだよ」



おいおいおいお、原作だとお前周りには教えてはいけないとか言って秘密にしてたのに大丈夫か?



「なら、転送術使える?」



「うん、使えるよ!」



「じゃあ、いいわ。同棲してあげる。でも、二人で住むのは貴方の家ではなくて、私の家ね」



「嬉しい、君が同棲してくれるなら火の中水の中どこでも一緒に住むよ」



火の中水の中の家か...それはそれで嫌だな...まァ俺の家は火の中水の中と同じくらいヤバいところにあるけどな!



「私の家の住所は、貴方のスマホに送るわ。一週間後、その家で会いましょ」



ガハハハ!!!!!美少女最高!さっすが美少女、主人公イチコロだわ。あとね、君シュウを探しに来たんじゃないの?もしかして本来の目的もう忘れてる?


−−−



僕の名前は堕天ロイ。きっと僕みたいな人間はそうそういないだろう。まさか初恋相手に運良く再会して、運良く交際ok貰って(貰ってません)、同棲までokされたなんて。シュウくんの家から自宅までの景色がとても色鮮やかに見えるくらい、今の僕はハイテンションだった。スマホを見ると、もうデータが送られてる。さすがライトちゃん、可愛いし有能だし、もう最強では?



「あー!ロイだ!久しぶりだね!」



ポニーテールの髪の幼馴染ハナが元気よく後ろから抱きついてくる。すごい、邪魔だなぁ。でも、ライトちゃんに後ろから抱きつかれたら嬉しすぎて気絶しちゃうかも。ハナの存在を無視して進むとハナがキレれて追いかけてきた



「ロイぃ!なんで無視するの!いつもはもっとかまってくれるじゃん!」




うるさいなぁ



「ねぇロイ!聞いてるの!」



鼓膜破れそう



「ロイ、無視するならもう話してやらないんだから!」



別に話さなくてもいいんだけどねぇ



だって俺にとって、お前は大切なモノではないんだから





―主人公(脳破壊済み)ルート変換

     ↳主人公(脳破壊済み)悪役ルート に変換しました

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る