第94話「悪役令嬢 再会ス」


「おい嬢ちゃん! いくら何でもやり過ぎだろ!」

「えー、だってデコトラの事色々聞かれたら面倒くさいんだもの」

リアが俺様に命じて技術団や鉱山の人々を全員失神させた事については、さすがにフェルドからもお小言が飛んできた。まぁリアはどこ吹く風なんだが。

けどデコトラについて根掘り葉掘り聞かれるのが困るのは俺様も同意見なんだよなー、しかも相手はあの技術団だし。この辺難しい問題だね。


「フェルド、あなたもいい加減慣れるべきですよ。この人が手段を選ばないなんて分かり切っていたことでしょうに」

「いや、でもよぉ、これどうするんだ? 全員このまま寝転せておくのか?」

マクシミリアンが呆れながらフェルドをたしなめてるが、フェルドの言う事ももっともだった。結構な人数が転がってるからな。

「遺跡の罠的な何かでアレされて気を失った事にすればいいじゃない、後で私達も気を失っていたんだとででも言えばいいわよ。さ、行きましょう」

リアさんマイペースで奥へと向かってしまった。許せ皆のもの、後で起こしてやるからな。


向かう先は一応発掘中の遺跡なので灯りも少なく、まだ埋まっている区画もある。街全体を掘り起こすのも大変だろうし大通り以外はまだほとんど手付かずなんだろう。

言われた先へ向かってみても目印があるわけでもなく、リアも明らかに適当に歩いていた。

「ここの奥、って言うけどどこなのかしら?ねぇ、じゃばば、何か感じる?」

「俺様に聞かれてもなー、ちょっと待ってくれ」

俺様が【ガイドさん】に丸投げする事にした、俺様自身は何も感じないのよね。

【ご案内します。この遺跡はたしかにデコトラです。巨大過ぎて中枢はまだまだ奥ですが、端末が近くにあるようですのでそちらに誘導いたします】


「こっちみたいだぜ、ついて来てくれ」

「ついてきて、って言うけど、そもそもお前何者なんだよ、やけにリアと親しいようだが」

あれ?そういえば俺様はフェルドと話をした事なんて無かったっけ?いつもはネックレス状態なのと、あとは……、ダンジョンで撥ねた時くらいか。

俺様の方が勝手にフェルドと面識があった風に感じてただけで、そういや初対面なのか。

「あー、俺様はジャバウォック。まぁ旅の、デコトラ研究家だ」

「デコトラ研究家ぁ? おい、なんだってそんなのと知り合いなんだよ」

「いやおい、説明すると長くなるんだがー、あー」

なんだよデコトラ研究家って、自分で言ってて意味わからんわ。が、フェルドに聞かれたリアはまた不穏な雰囲気になる。


「ジャバウォックー」

「フェルド、そこまでです! これ以上詮索すると、あなたや私まで眠らされますよ! 大人しくしていて下さい!」

マクシミリアンの一言でフェルドはそれ以上追求する事をやめてくれた。だんだんリアが触れてはいけない人になってきている。

「ちっ」

ちっ!? 今ちっとか言った!? リアさんもしかして眠らせられなくて残念とか思ってる!?

「うーむ、ウチはどうすれば良いんじゃろうか……」


ともあれ、俺様達は遺跡の中を進んで行った、とはいえ先程も言ったようにこの遺跡は妙に真新しく見えてしまい、遺跡とは思えないのは奥に進んでも同じだ。

装飾が施されて絢爛豪華な感じのパネルが壁を覆い、何かの施設や装置らしきものも転がっているが、【ガイドさん】いわく、今はエネルギー源が枯渇してるので調べても意味が無いそうだ。

「あそこ、みたいだぜ」

俺様が指を指したのは、壁にはめ込まれた液晶画面のようなものだった。手前には何らかの操作をする机のような操作装置らしきものがある。ここはインフォメーションセンターみたいな所なのかな?

しかし適当にボタンらしきものを押しても何の反応も無い。

完全に止まってしまっているのか? あれ? フォルトゥナやばくない?



「止まっちゃってるねー、どうにかならないの?」

「間に合わなんだか? DEデコトラエネルギーが無くなりつつあるとか言っておったしのぉ」

リアやレイハも色々いじるが反応が無い。ここまで来て無駄足どころか、死亡を確認ってのは嫌だなぁ。【ガイドさん】、再びどうにかならないの?

【ご案内します。端末の右下にある端子に手を近づけて下さい。DEを供給しますので】

え? でもこんな巨大な遺跡にDEを流し込んだら、俺様の分が無くなっちゃわない? さすがに共倒れはちょっと。

【ご案内します。部分的な機能の復旧に留めます。そこから遺跡中枢へとアクセスいたしますので問題ありません】

まぁそれなら、と俺様がその空いている穴に指を近づけると、俺様の指先が光って穴に光が流し込まれた。

同時に目の前の表示画面に光が灯り、何かの文字が表示されはじめた。PCの起動画面みたいだなぁ。


『ああああああああああ! ヤバかったー! マジ死ぬ寸前だったんですけどー!。。゜(゜இωஇ゜)゜。

 ん? おおおおおおお! じゃばっちー!リアっちもー!助けに来てくれたのー!? 三三三三ヽ(*゜∀゜*)ノ

 マジ感謝なんですけどーーーーーーーーー!!⁽⁽٩(◍˃ᗜ˂◍)۶⁾⁾』

うん、元気いっぱいだ。俺様も会えて嬉しいけど、文字しか表示されないし、これ俺様にしか読めないから周囲の反応は薄いんだよな。


「おー、フォルトゥナ、生きてて良かった。っていうかお前、文字でしか話せないの? これだと俺様しか読めないんだけど」

『あーしの本体はここからもっともっと奥だからねー。図体が大きくなりすぎて維持するDEが追いつかなくなっちゃったのよ。(۶ ͛⌯ᾥ⌯ ͛٩)ウーン•••

 遺跡全体を再起動するくらいのDEなんて持ってないよね?ʅ(。◔‸◔。)ʃ?』

「さすがの俺様でも多分足りないだろうなぁ」

【ご案内します。現状『個体名:フォルトゥナ』の進化状態は神傀城デコトラストゥルムに達していると思われます。

 衛星軌道上での太陽光によるエネルギー生成ならともかく、この地の底では再起動はほぼ不可能と思われます】

以前聞いた地属性デコトラの究極形態に達しているって事か、どんだけの年月が経ったんだろ。ん?全体な駄目でも部分なら可能って事?


俺様が画面と会話してる感じだったのでリアが後ろからのぞき込んで質問してきた。

「ねぇ、この文字ってフォルトゥナ? 生き帰ったの?」

「ああ、全体の再起動は無理でも話するだけなら見ての通りなんだけど。この文字って俺様しか読めないのが不便なんだよな」

「ウチもルクレツィアの事を色々と聞きたいんじゃが……」

『あーしも色々とあったから話したい事は山ほどあるんだけどー、今はこれが精一杯なのよねー。これだって読めないだろうし。( ˘•ω•˘ ).。oஇ』

【ご案内します。『個体名:フォルトゥナ』のデコトラコアの位置を特定いたしました。画面に表示させます】

ガイドさんがそう言うと、画面に街の地図のようなものが表示された。

見た目は聞いていた通り円状に広がる計画的な都市って感じだな。円の中心が光っていて、そこがコアなんだろう。俺様達は遺跡の端の方だ。

『おおー、これこれ、今のあーしってこんな感じの都市になってて宇宙空間にいたんだけどさー、機塊神之大戦デコトラノマキアで落とされちゃってこんな所に埋まっちゃったのよねー。(*ノ∀`*)ゞエヘヘ』

さらっととんでもない事が出てきたな。フェルド達に理解できなくて良かったぜ。


「この光ってる所がこの遺跡の中枢なんだそうだけど、とりあえずそこに行けば何とかなりそうだ」

『そゆこと、早く来てー!(人>ω•*)オネガイ❤』

とはいえ、この遺跡って鉱山の中に埋まってるだけあって大半が土と岩に埋もれてるんだよね、掘っていくのは大変そうなんだよなぁ。

「なんだ、んじゃ掘って行けば良いじゃない。ジャバウォック、デコトラドリル」

は? え? いやある程度の大きさの通りだから問題無いけど、俺様の正体ここでバラしちゃって良いわけ?

俺様はリアの命令通り、デコトラの姿に戻ってデコトラドリルを車体の前に付いた状態で出現した。

あーデコトラの姿って久しぶりー。思わず身体を伸ばすようにしてストレッチしちゃうぜ。何?全身のサスペンションとかだよ、気分の問題なの。


「なんだこいつ!? 姿消えたと思ったらあの時の巨大な箱に!?」

「なるほど、先程までの鎧姿はこれの偽装だったと、しかも独立した意思があるようですね、これは興味深い」

「はーい行くよー、乗って乗って」

リアはとまどうフェルドとマクシミリアンを放置してさっさと運転席に乗り込んだ、レイハはともかくとして、そのフェルド達まで乗り込んできてしまったけどな。


「なんじゃお主らまで来るのか?」

「ここまで来てこんなもん見せられて終わりって事は無いだろ!」

「中は空間歪曲か何かで空間まで操作できるようですね、この見た目といい、まさかこれがデコトラなのですか?神話の時代の産物かと思っていましたが。中はまるで貴族令嬢の部屋ですね」

マクシミリアンが興味深そうに運転席とは名ばかりの小部屋を見ている。内装はリアの趣味が入りまくったカスタムだからなー。


「さぁー!いっくよー!」

『|・ᴗ・ )੭⁾⁾イッテラー♫』

俺様はデコトラドリルを回転させ、遺跡内部を掘り進んで爆走を始めた。やだこれ久しぶりだからすっごい気持ちいい。


第95話「悪役令嬢ト『転生』」

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