第92話「悪役令嬢ト デコトラノ遺物」
「その、デコトラ遺跡って何なの? 地面の下に埋もれている街とか?」
リアさん、それ以関わらない方が良いですよ、下手に聞くともっとおかしなのやって来るから。
何なんだよ『デコトラ遺跡』って……、そりゃ古代デコトラ文明があるならデコトラ遺跡だってあるだろうけどさぁ。
「『遺跡』とは言うが、実をいうと太古のデコトラの残骸なのだ。だがあまりに巨大でな、一つの都市くらいあるので遺跡と呼ばれている」
「おーきいねー」
「巨大すぎんか、どんだけ成長したんじゃそれ……」
リアの反応は置いておいても、レイハが呆れるのも当然だ。今の俺様のデコトラ状態を基準にしても巨大ってレベルじゃないな。
「なぁマックス、俺達場違いな気がしてきたんだが」
「あなたも今更何を言ってるんですか、大人しくしていると思ったら。もう手遅れだと思いますよ?」
そういえばフェルドとマクシミリアンもいたっけ、あまりにも色々あり過ぎてて忘れてたぜ。
「ねぇねぇ、その遺跡って見学とかできないの?」
リアが興味あるのか団長に申し出てるけど、見たいかそれ……?さすがの団長もちょっと困ってるみたいだ。
「見学、と。あの、陛下、あれは国家機密に属する事ですし、うかつに見せるわけにはいかないのでは?」」
「私も賛成です。今は”成りすまし”の件さえ解決すれば良いのであって、いかに高位冒険者とはいえ機密を漏らさないとも限りませぬ」
「うむうむ、良きにはからえ。今回の件に無関係であるなら情報開示の必要は無かろう」
ヘルムート団長とフィッシャー子爵の心配ももっともではある、別に事件解決の為には遺跡を知らなくとも良さそうだからな、というか知りたくない。なるだけ早くここからお暇したいのだ俺様は。
「では、一部の見せるわけにはいかぬ遺物に関しては別室に移したので、今ここにあるものであれば事件の参考として見ても構わぬ」
団長は構わないというが、それこそ俺様にしたらもう帰るのでお構いなくみたいな心境だ。
まぁせっかく机の上に色々広げられているのだから、見るだけ見て帰るか。
机の上には大小様々なものが並べられていた。単なる錆びた金属の塊だろみたいなものから、錆びもせず形を保っているもの。多くは車の部品のような形をしている。
「これらは軽く1000年以上経過しているにも関わらず原型を保っておりましてな。どのような金属かというのが判明するだけでも画期的な発見でしょうな」
ああ、それでさっき俺様の鎧を削ろうとしたのか、もしかして事あるごとに金属のサンプルを集めるのが趣味なのか?
【ご案内します。これらの多くは単体では何かをできるわけでは有りません。が、一部でも理解すれば科学技術は大幅に飛躍するでしょうね】
とはいえ、見せられたとしても俺様には見当もつかない。そもそも俺様自身が自分の体内の事なんて知らないからな。
リア達も見て回っているが、素人がエンジンルームの中を見せられても、あーそーですか、なノリになるような、何かを理解している様子ではなかった。
「ははは、さすがにデコトラに関して知識が無いと、それらはただの金属の塊でしかないですからなぁ。我々も何年もかけてようやく1つの技術を理解するような有り様で、たとえばこの円筒状の品物ですが」
ヘルムート団長がそう言って近くにあった金属の塊を持ち上げた。外装は錆びてはいないが、隙間には土や錆びた金属が詰まっているようなものだ。
「これは最初、何がなんだかわからなかったのだがな、構造を再現して回してみると、なんと雷と同じ力が取り出せる品物なのだという事が判明した」
え? 発電機なわけ? それがわかるだけでも凄い技術の発展に貢献しそうだな。
【ご案内します。あれは発電機ではなくモーターのようですが、原理的には同じものなのでその結論にたどり着いたようですね】
「正直、最初にこれを発見した時は驚愕したぞ、魔法も使わないのに回すだけで誰でも雷撃魔法のような事ができるのだから。とはいえその力は微々たるものではあったのだがな。
だが!これにより、我々は
「おおー」
リアが合いの手のように拍手をするので団長は上機嫌だ。
「冒険者ギルドにある昇降する小部屋というのは、もしかしてこれを使ったものであったのか?」
「その通り、あれはこのダルガニア帝国の技術の中でも最も将来性の高いものでしてな、まだまだ装置が大掛かりなのでそういった施設にしか使えないのが難点なのだが……」
団長が機嫌よくレイハの疑問に答えているが、雷力、つまり電力を溜め込んでおく電池か電気を流してくる電線が必要なのでは、という技術的な問題は、なんと雷撃魔法を蓄積する技術の応用で、魔石電池とでもいうべきものも発明されたそうだ。
「魔力を溜め込むというのは、今までは自然界の力を再現するしかできなかったのだがな、これにより様々なものへ応用する道がひらけたのだよ」
物凄いどや顔で成果発表は続いているけど、正直十分誇っても良い事だと思うなこれ。俺様が蒸気機関の概念とか教えたらどうなるんだろ。
【ご案内します。そういった進みすぎている技術の情報は、世界にとって有用ではありますが与える影響が大きすぎますので、控えたほうが無難かと思われます】
だよねー。
その後も様々な遺物の研究成果を見せてもらったが、中には発光する初歩的な電球のようなものまであった、が、この技術の評判は今ひとつらしい。
「既に魔石でも似たような事ができるからなぁ、わざわざこれを使う理由が無いのだよ」
開発してる時は面白かったんだがなぁ、なかなか結果には結びつかないものだ、と団長は肩をすくめた。
「拝見したところ、これらは魔力を介さずに自然現象を再現する機構がほとんどのようですね?とても今問題になっている”成りすまし”のような事ができるとは思えないのですが?」
「うむ、それは仕方の無い事というか、魔法だって結局の所はある程度のレベルまでは同じであろう?魔法を使うか、古代デコトラ文明の技術を使うかの違いでしかないと思うのだが」
マクシミリアンと話し合ってるが、ヘルムート団長は意外にもそういう技術の研究に関してはわりと真面目だった。
やはり世界には魔法を使えない人の方が多いので、そういった人達が便利になるような技術を優先して開発しているのだそうだ。
【ご案内します。この研究員達は優秀ではありますが、やはり限界はあるようです、DEを利用してのスキルに関しては全く踏み込めていません】
安心したぜ、俺様が使う『スキル』まで解析されて使われたら恐ろしい事になりそうだもんな、中にはこれ核兵器だろみたいなのまであったし。
「さてどうかな? 例の事件の参考になりそうであろうか?」
「んー、レイハ、どう思う?」
「いや……、おそらく無関係、じゃろうなぁ」
「この技術を突き詰めても、人の複製を作り出すとなどいった現象は再現できないでしょうな……、まぁ魔法でもそんな事は今の所無理ですが」
マクシミリアンいわく、今の魔法は自然現象の再現か、それを組み合わせたものが大半で、物凄く複雑な事をすれば転移等もできなくはないが、一人の手には余るような事なのだそうだ。
「それでも、転移というのは時間と空間の法則に介入して距離や時間を短縮するという、自然現象の範疇ではあるのですよ。無から有を作りだすわけではありません」
俺様が知る前世からしたら、それでもとんでもない技術のような気がするのだが。
「ふむ、まぁ技術的な事で見せられるのはこんな所でしょうな、既に巷にも多少なりとも広まっておる代物ですし。見ようと思えば冒険者ギルドの設備の中を見れば見れる程度のものです、あとは文字、ですな」
文字か、そういえばこういう遺物とか遺跡には文字があってもおかしくないもんな。前世でも古代遺跡の文字の解読には物凄く苦労してて、解読できない文字だってあるそうだし。
「これがまた厄介な文字でしてなー、法則性があるのか無いのか、明らかに複数の種類の文字が混ざっており、模様のような文字まで混ざっている複雑なものでして、正直我々には解読できる自信が無いのですよ」
これは遺跡の光る板に時折表示される文字を書き留めたものです、と、ばさぁっと大きな紙が広げられた。さて、どんなややこしい文字なんだ?
『だーれーかー、たーすけーてー(人>ω•*)オネガイ♡』
『あーしはここだよー!でーらーれーなーいー!٩( ꐦ•̀ з•́)و』
『ああー!そこ剥がしちゃダメー!あーしの中見んなし!(๑>◡<๑) ɭ ɿ兯ƕ❤』
『レティ大丈夫かなぁ、無事だといーんだけどー!(⑉・̆н・̆⑉)ھ』
『色々あってDE使い切ってうごけなくなっちゃったの(*ノ>ᴗ<)テヘッ♥』
『そのうち、あーしは考える事をやめた。
なんて実際にやると思わなかったんですけどー!。。゜(゜இωஇ゜)゜。』
『やばい、マジのマジマジやばたにえん、そろそろ限界かもー! \( ᐙ )/アホニナリツツアリマス』
俺様は、膝から崩れ落ちた、何してんのあの子。
次回、第93話「悪役令嬢ト『遺跡』」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます