第81話「帝都ノ依頼」

「リア嬢ちゃんも帝都に来てたのか、相変わらずドレスなんか着てるから絡まれるんだよ」

「まぁ、このお嬢さんらしいといえばらしいですがね」

冒険者のフェルドと、同じく冒険者のマクシミリアンだったか?2人がリアと絡んできた冒険者の間に割って入ってくれた。

そういや彼らにもきちんと別れの挨拶もせずにこっち来てしまってるんだよなぁ。


「なんだお前ら、こいつらの知り合いか?」

「まぁそういう事だ、おい、こいつには関わらん方が良いぞ。

こっちにはまだ噂届いてないだろうがな、このお嬢ちゃんはリヒトシュテルンの冒険者ギルドで『極悪令嬢』という二つ名があるくらいメチャクチャな事をしたからな」

フェルド……、リアをかばってくれてるのかも知れんが、それはあんまりじゃないかなぁ!?

「本当ですよ、ギルドの試験でも他の試験者達を信じられない手段で全員退場させて一人だけ受験してましたからね」

マクシミリアンまでー!事実だけどさぁ!


「むぅ、リアそんな酷い事してないと思うんだけど」

「お前がそれ言うか!? 俺達がどんな酷い目に会ったと思ってるんだよ!」

「たとえ人を助ける為とはいえ一切手段を選ばず、ためらわずやってのける。そんな彼女の所業悪行から付いた二つ名、それが『極悪令嬢』なのですが、それでもこのお嬢さんに絡みますか?

 伊達にドレス着て冒険者やってるんじゃないんですよ? この格好のままダンジョンに入って普通に依頼を達成したりしますからね? 本当ですよ?」

フォローのつもりなんだろうけど、全部本当の事なんだけどやめてくれないかなぁ? しかも芝居がかった感じではなくリアルに自分達の経験を語ってるからよけいに不気味な事になってる。

けど俺様達そんな悪い事したかなぁ? ちょっとデコトラで全員跳ね飛ばしたりしただけだと思うんだけど。

【ご案内します。それをやり過ぎと言うのです】


だが、2人の弁護? は効果があったようで、絡んできた冒険者はリアを不気味なものを見るような目で見て後退りしていく。

リア、だからって悪い顔しながら自分から同じように寄って行くんじゃありません。相手涙目になりかけてるからそのへんで許して上げて。いやだからステイ! リアさんステイ!

「その辺にしてやれリア、お主もこの街でも悪名を轟かせてどうする、まぁ時間の問題じゃろうがなぁ……」

レイハがリアを止めてくれたが遠い目をしていた。俺もそんな気がするけどさぁ……。


「ん? 誰だ? このお嬢さんは、また別の東方人か? あのレイハって子はどうしたんだ?」

フェルがレイハが誰かわかってないようだ、それもそうだ、身長も年齢も全く違うもんな、姉という事にでもするか?

「ふふん、ウチが誰かわからぬとは、まだまだじゃのぅ。ウチじゃよウチ」

いきなりバラそうとしてるー!


「ウチって、どう考えても初対面なはずだが……?」

おいフェル、レイハが思い切りドヤ顔で胸張ってるからってちょっと視線を胸にやるな、丸わかりだから。男は悲しい生き物だぜ。

「うむうむ、ウチの変装もなかなかのものじゃったんじゃなぁ。ぬふふー」

レイハはレイハでめっちゃ嬉しそうだし……、以前はお子様扱いされてたからなぁ。

「……もしかして、サクヤ嬢、ですか!? いやまさかそんな」

「はぁ!? おいマックス何言ってやがるんだ、あのちびっ子がこんな……、こ」

マクシミリアンが気づいたようだが、フェルドは否定する声も弱い、だからレイハの身体を上から下まで見るんじゃありません、丸わかりだから。男は本当に悲しいぜ。


「いやいやいや、あのちびっ子とは全然違うだろ! 身長だって俺とそんな変わらんし、胸だって……」

「お主そんな所見ておったのか、まぁ仕方ないのぅウチのこの身体では、この助兵衛ー。ほれほれ、ほーれほれほれ」

またフェルドが胸を見てるものだからレイハのからかいが加速するなぁ、寄せて上げてのサービスまでしてるし。

しかしレイハも、リアより年下だったとはいえ身長とか色々と成長度合いが控えめだったのをそんなに気にしてたのか。

背伸びしたいお年頃の子が、その背伸びしたくらいの年齢になったわけだからなー。


「な……、いやいやいやいや、お前本当にあのちびっ子か!? なんだってそんな事になってるんだ?」

「うむ、詳しいことを色々説明するとややこしいのだが、簡単に言うとあれは変装だったのじゃ」

「そんなわけあるか! どんな変装だよ!?」

レイハがフェルドの疑問に対して言い切ったけど、まぁ俺様でも無理があると思うの。


「いやいやいや、これが本来のウチなんじゃよ。子供扱いできなくなって残念じゃのぅ、これからよろしく、フェルくん」

「ふぇ、フェルくん!? いやお前何歳だよ!?」

ついに年下扱いされ始めたぞフェル君。今のレイハは東方人特有の年齢不詳の美人だからなぁ、年上と言われるとそうかも知れないと思えてしまう。

「男子三日会わざれば、と言いますが、女子もなかなか油断なりませんねぇ、興味深い。少々身体を調べさせてもらえませんか?」

「いやちょっと待て、怖いぞお主、ち、近寄るでない」

今度はマクシミリアンがおかしな眼光でレイハに迫って行く。エロ目的ではなくマッドサイエンティストの目ではあるがそれでも嫌だよなぁ、あのレイハが引いてるぜ。



「あのー、本日はどのような御用で?」

さすが帝都のギルドの受付さんだ、常日頃荒くれ者どもを相手にしてるわけだし、いい加減受付前で騒ぎ続ける俺様達をなんとかしたいんだろう。

営業スマイルで『用が無いなら消えろや』と目が言ってる、怖い。


「う、うむ、今日はウチが冒険者になりたいので登録に来たのじゃ」

『はぁ? お前B級冒険者だっただろうが」

「う、うるさい、人には色々と事情があるのじゃ!お主が口を出すでない!」

「お客様ー、こちらに手を触れていただけますか?」

レイハが慌てて登録を申し込んだが、フェルドが余計な事言うので揉めかけた、が、受付嬢さん一切慌てる事もなくレイハに登録用の装置に手を置くように促す。


「はい、B級冒険者様のレイハ様ですねー、どうされましたか? 呪いでも受けましたか?」

「なんじゃ? 見た目変わったりするというのはよくある事なのか?」

「ええ、呪いで年齢が変わったり、場合によっては肉体の性別が変わったり、精神の性別が変わったりするのは珍しくありませんので。以前の登録証を出していただけますか、はい更新いたしますね」

あ、慣れっこなのね……。レイハが登録証を出して本人だと認めてもらったので、フェルドも「本当にあのちびっ子だったのかよ……」と、軽くショックを受けていた。


「あれこれ考えてたのがアホらしくなるのぅ」

「レイハ良かったねー、B級のままでいられて、また最初からだと受けられる依頼少なかったよ?」

軽い当てつけなのか、女子二人はフェルドとマクシミリアンを無視して依頼が貼り付けられている掲示板の方に移動する、こういう時女子ってのは残酷だねぇ。

さて、帝都ともなると依頼が……、凄い限られてるな。


次回、第82話「悪役令嬢、変身ス」

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