第77話「黒イ デコトラ」


起きるのです、起きなさいフォルトゥナ

「……ん? あ! ぎゃああああ! リアっち! あーしじゃなくて!……あれ? ここ、どこなワケ? (੭ ᐕ)?」

貴女は少々未来へと時間転移させられておりました。丁度良いので呼び寄せたのです。

「呼び寄せた、とか言われても、何も無い真っ白な世界で声だけの人に言われてもなー。おねーさん誰? \( ᐙ )/」

端的に言うと、神です。

「カミ。髪、紙? 噛み? うーん、どれだろ  ( ᐛ )?」

わざとやってます? そういうノリは嫌いではないですが。


「やだなー、会話をスムーズにするジョークってやつ? てか、マジに神様なわけ? (*ノ>ᴗ<)テヘッ♥」

神です。何か言いたい事がありそうですね?

「あるも何も! 神様だって言うなら、どうしてレティが困ってる時に出てきてくれなかったのさー! レティすごく苦しんでたよ? ٩( ꐦ•̀ з•́)و」

その事については申し訳なく思っています。こちらにも出てこれない事情というものがありましたので。

「事情? どんな ?(๑๏ิ₃๏ิ๑)」

私が貴女達の世界に現れるのは、実際にはもう20年程先の事なのです。ですので貴女達の世界にあまりに大きな影響を与えてしまうと、私が神として出現する未来が変わってしまい、とても困った事になるのです。

「……え? 今ここにいるっしょ? なのに現れるのは20年先っておかしくない? ?(ᐙ 三 ᐕ)?」

いえ、私が過去現在未来の中のどこかで出現すれば、遡って全ての時間に等しく存在するようになるのです。神とはそのようなものですから。

「……よくわからん 。 (。•́︿•̀。)」


少々難しいでしょうね。つまり貴女の世界には、神が過去も今も未来にも存在はしているのですが、貴女達の時間だけは私の未来に大きく影響いたしますので、迂闊に手出しができなかったのですよ。

「余計なちょっかい出したら、神様が未来で現れないから、神様のいないままの世界になっちゃうって事?  ᕕ( ᐛ )ᕗ?」

そういう事ですね。長い長い時間の中では神が存在しない数十年はほんのわずかな期間でしょうが、それでも今を生きている貴女達には不平や不満もあるでしょう。

「あれ? でもレイハっちは神様とかよびだしてたけど、あれは何なの。 ᕙ( ˙-˙ )ᕗムンッ」

あれは、限定的な範囲を管理する権限を持った存在です、それゆえ世界に与える影響もまた限られているのです。対して、私は3つ程の世界を管理しておりますので存在の規模そのものが違います。


「はぁ、なんだかよくわかんないけど、要はいろんなカミサマがいるって事でおっけー?  (ㅅ •͈ᴗ•͈)」

概ねそれでかまいません、しかし私も本来貴女のような話し方なので少々むずがゆいですね。

「え? まじ? なんでまたそんなエラソーな話し方なわけ? (っ ‘ ᵕ ‘ c)」

素の話し方だとキャラが被ってしまいそうなので考慮してみましたが、この分だと普通に話しても良かったかも知れませんね、今更変えられませんが。

「キャラ被りって……、そんなん気にする神様なんて初めて知ったんですけどー。話し方くらい好きにすれば良いのに、色々面倒なのね?  ( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )」

それが神というものなのです。さて、雑談もこの辺にしておいて、そろそろ本題に入りましょうか。

「え? あー! そういえば、あーしもだけどレティが! 今どうなってんの? ٩(・̆ᗝ・̆)コリャー」

ご安心なさい、レイハが助けてくれました。色々ありましたがひとまずは無事です。それよりもその後の方が問題なのです。貴方がたが追っていた闇の魔力の根源的な存在が貴女の世界に顕現しつつあります。

「色々知ってるんなら助けて欲しいんですけどー、と言いたいけど、それも出来ないワケか。あーしは何をすれば良いの? (ㅅ •͈ᴗ•͈)オセーテ」

話が早くて助かります、それでは元の世界に戻り、ルクレツィアを助けてあげて下さい。とはいえその後にも色々と続くのですが。

「もー何でも良いから全部まとめて引き受けるよ、ところで、おねーさんの名前は何って言うの?いいかげん名前も知らないと話しにくいんですけどー。 (ง •̀ω•́)ง」

神としての名はありませんが、人であった頃の名前はロザリア、ですね。それでは今から貴女に大切な事を伝えます――――。



「何だ、あれは、失敗作が落ち着いたと思ったら穏やかではない様子だが」

「公爵様、公爵様、失敗作とはずいぶんな言い草ですなぁ。一応神は無理でも天使はできたでしょう?あと一息だったじゃないですかー」

「おおおお、御使い様、何故あのようなお姿に。我らの行くべき道は」

「大丈夫かこの男」

「上位世界をもろに見てしまいましたからねぇ、我々では理解しきれませんでしたが、聖職者として修行を重ねてたから物凄い影響があったようで、この先一生をかけて追い続けるかも知れませんなぁ」

「まぁこいつの未来はどうでもいい、それよりもあれだ、何が起ころうとしている」

「上にあるのが上位世界への扉、では下にあるのは恐らく『魔界』の扉でしょうなぁ、ですがそれは大した問題ではないでしょう、魔界の扉は単なるエネルギー源止まり、問題は他所からやってきてそれを総取りしようとしている存在です」

「まさか、あの薬をバラ撒いた影響で出現したアレか」

「アレですなぁ」



俺様達はアメトリノフネ様で巨大な姿の方に戻ったらしいレイハの側に移動していた。助け出されたルクレツィアを船の方に乗ってもらったが、どうも妙な事になっている。

「何……? あれ。じゃばばとかフォルトゥナにも似ているけど」

《デコトラ、じゃな、それも黒い。やはり、己が力を最大限に満たす為に虎視眈々と機会を伺っていたか》

「おーいレイハ勝手に納得しないでくれ、ありゃいったい何だ? 俺様のような黒いデコトラのようにも見えるけど」

《我が、いや、ウチが故郷からずっと追っていたものじゃ。魔界への扉が開いた事で闇の魔力の流れに乗じて人造天使に取り憑き、本性を現そうとしている》

「おいおいレイハ、だったらのんびり構えているヒマは無いんじゃないの?」

《こちらにもうかつに攻撃できん事情があるのでな、デコトラはともかく、中に乗っている奴が厄介なのじゃ》

そういえば、デコトラであれば誰かが乗っているのは当然だった、怪しげなデコトラにばかり気を取られていたが、そういえば誰が乗っているんだ。


《いい加減姿を現せ、デコトラ『スサノオ』と兄上》


その瞬間、人造天使の存在を完全に乗っ取ったかのようにデコトラが完全に姿を現した。その姿は黒く、実態がはっきりせず禍々しいものだった。同時に物凄いプレッシャーが周囲に放射される。

「レイハ、デコトラの名前まで知っていたとはともかく、兄って、お前のお兄さんがあれに乗ってるのか!?」

《兄とはいっても、もう生きているとは言えんかもしれんがな。デコトラには主が必要、それを満たす為にデコトラの甘言に踊らされ、全てを奪われた哀れな存在よ》


「れ、イハああああああ」

眼の前の黒いデコトラから、呻くような重低音の声が響いてきた。が、レイハは特に表情を変える事は無かった。

《兄の声と言葉で我が動揺するとでも思うたか!主導権はお主が握っておるのであろう?『スサノオ』》


《姉上の声で儂に語りかけてくるお主への意趣返しであったのだがな、汝は日之本皇家の姫か、この者の命を獲りに後を追っていたのか?生憎だがもう遅い、今の儂はほぼ完全に復活しておる》

《愚かな、あのまま御柱みはしらの底で大人しくしていればいいものを、この世界はもう人が生き、治めているのだ。我ら神は見守るだけで良い、いつまで子どものように暴れまわっておる》

《儂を利用したのは人間の方だろう! 機傀神之大戦デコトラノマキアのおり、儂の助力が欲しいと国を挙げて願っておきながら、戦いが終わればデコトラ諸共に封印されて大人しくしていろというのか!》

《それが神というものじゃ。一旦人を助けると決めたのであれば貫き通せ、朝令暮改で気分のままに生きておれば人の世が乱れる》

《姉上の説教はもうごめんだ、そろそろこの世界にも飽いた、儂はあの世界で暴れさせてもらう!》


『スサノオ』がそう言うと、頭上の光る輪が輝きを増し、大きくなっていく。

「あれ!教会の地下で見たのと同じ!」

「なんだかよくわからん別世界への門か!」

魔界にしろ上位世界にしろ、気軽にぼこぼこと世界に穴を開けられたらたまったもんじゃない。『スサノオ』はその世界に行きたがっているようだがレイハが呼び出した神様の弟って事は一応神様だよな?

いなくなられても困る気がするが、俺様達には手出しをするにしてもどうしたものか、と一瞬戸惑っていると別の動きがあった。

その輪っかの中の上位世界から誰かがやってきたのだ。


「はーいそこまでー!姉弟ケンカにこの世界を巻き込まないで欲しいんですけどー! \٩( ᐖ )و/ヤー」


次回、第78話「聖女ト守護天使」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る