第74話「レイハ ト 最高神」
リアとアメノトリフネ様との共同作業……格闘戦はまだ続いていた。
なんだかんだこちらが殴る蹴るの暴行しか攻撃手段が無いのに対し、人造天使側は回復能力があるのですぐ修復してしまうのだ。
「なかなかタフねぇ、どうしたものかしら」
とデコトラアーマーを着て腕組みするリアと、アメノトリフネ……、俺様達が乗せてもらっている船の神様は相手を睨む。
天使が威嚇するかのようにこちらに向けて咆哮すると、アメノトリフネ様も、「あ? やんのかこら! 姉さん、さっさとやってしまいましょうぜ」という雰囲気を出してくる。妙に気易い神様だな……。
先ほどから教会の上空で戦っているものだから、下の方では信者や住民の方々が大騒ぎになっている。
天使がダメージをうけるたびに「天使様ー!」とか「がんばれー!」とかの声が上がるんだけどいいのか? この天使って、君らを断罪しようとしてるんだけど……。
「リア、考えたんだけどこの船であいつを持ち上げていって、どんどん上空へ押し上げないか?あまり長々と大勢の人達にこれを見せたくもない」
いつまでもこんな事は続けてはいられない。そもそもこの人造天使自体がDEやダンジョンコアやらを使ってでっち上げられた人造物なのだから。
そんなのが教会の上で天使気取りでこれ以上余計な事を言ったら、何が起こるかわからない。
「うーん、できるかなぁ。トリさん、お願いできる?」
リアがお願いした瞬間、船は一瞬で加速して、再び相手のみぞおち部分に船首を突き立て、斜め上へとカチあげるように上昇しようとした。
だが、その船首は人造天使の両腕で捕まえられてしまった。一瞬で近づいたのになかなかの反応速度だな!
捕まえられてしまったとしても、上空へと持ち上げようとする力は加えられるのだが、向こうも向こうで抵抗するので膠着状態だ。
「リア! 今なら至近距離から攻撃できるんじゃないか?」
「近すぎるし私達まで巻き込まれない? それにルクレツィアだって怪我するかも」
【ご案内します。主様の意向のが正しいと思われます、現状ルクレツィア様は金属の皮膚で覆われているような状態ですので、炸裂系の武装でないと効果は薄いようです」
先ほどまでの船での格闘戦は一応ルクレツィアの事も考えての事だったのね……。
だが、膠着状態というのはあっちにとっては有利だったらしい。人造天使が口を開くと、そこに何かの力が収束していくようだ。まずい! 逃げ場が無い!
「『神威
後ろでレイハの声がすると、突然太陽が欠け始めた。いつかのようにまた日食が発生し始めたのだ。
しかし辺りは暗くなるどころかより明るくなっていった。黒い太陽から、別の太陽がやってきていたのだ。
その小さな太陽はまっすぐ俺様たちの乗る船、特にレイハ目指して飛んできた。彼女の身体が光に包まれ巨大な人影を描く。
光が収まると船の側にいたのは、人造天使に匹敵するほど巨大な一柱の女神だった。
いつだったか呼び出した女神様と同じ姿ではあったが顔が違っている、大人びたレイハの顔になっていたのだ。
《時間がかかってすまぬ。あとは我が相手をするゆえ下がっていよ》
「ねぇ、あれ、レイハよね?雰囲気がぜんぜん違うけど」
【ご案内します。あれはレイハ様の存在と、呼び出した『神としての存在』を混ぜて作り上げられた実態のある虚像です】
「実態のある虚像……?」
【ご案内します。あれは本来ここには存在しないものですが、外部からのエネルギー供給により存在を維持し続け、あたかも実体が存在するかのようにふるまっています】
うん、よくわからん。だがまぁ、そこにあるんだからそういうものなんだろう。
ゴァァアアアアア! と、人造天使がレイハが造り出した人造神を威嚇するように咆哮し、片方は天使の模造品で片方は神からの借りものというややこしい存在どうしが対峙する。
下の方では大騒ぎになっているな、そりゃそうだ、天使だけならまだしも今度は明らかに神のような何かが突然出現したんだもの。
《人の子らよ! 騒ぐな! この天使は
レイハは、眼の前の天使だけではなく、下にいる人々にもそう呼びかけていた。
「何を言う! 異教の神を騙る貴様こそ神罰に値する!」
人造天使が無数の小天使を造り出しレイハに向けて繰り出してくるが、レイハは慌てる事もなく全身から光を放射した。
それに照らされた小天使は次々に分解され、光となって消えていくのだった。
《紛い物で天使を気取っていても、いずれ無理が来るぞ。その先にあるのは破滅だ》
「黙れ! 私達の神が私達を見放すはずがない! お前こそ神気取りの邪神め! その身をもって思い知るがいい!」
小天使は全て打ち消されたが、人造天使は何かされる前にと言わんばかりにレイハに向かって翼をはためかせ、羽根をミサイルのように飛ばしてきた。
それに対してレイハは、掌から無数の光の珠を放出すると、それを身体の周囲で飛び回らせ、事もなげに迎撃してみせる。
《無駄だ、その程度では我には通じぬ。それにしても争いばかりだなお前は、相手とわかり合おうとはせんのか?》
「神を僭称する者などわかり合う必要などあるものか! 我らの神は至高にして絶対! 人は皆その教えに従えばよい!」
《教えだの教義だの戒律だの、お主らの神もそのようなもので人を縛り付けようとは思っておらぬと思うのだがなぁ」
「黙れ! 人は過ちを犯す! 何度も何度も何度も! だからこそ人は神に許しを請い、罪を贖い続けなければならぬのだ!」
どういうわけかレイハと人造天使が問答を始めた、それに対して下にいる人々からも声があがる。主に天使に賛同する方が多いな。
《おい、そもそも無数ともいっていい教義や戒律を覚えて、全て完璧に実践できるなら誰も苦労せんだろう、そのようなものは人と呼べるか? 何故神々が人をこのような存在に創り出したか考えた事があるのか?》
「か、神の思し召しを人が理解できるはずがなかろう! どのように解釈してもそれは人が勝手に……」
《うむ、お主も気づいたのではないか?神の従僕である天使と一体化していたのでは、その考えに至る事もなかったはずだ》
「て……んし、かみ、のじゅうぼく?」
《やれやれ、お主の考えは天使と相性が良すぎたようじゃな。まずはそれを祓わねばならぬ》
次回、第75話「レイハ ト 暴走天使」
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