第58話「デコトラ、聖女ヲ送ル」


「……まさか送るはめになるとは思わなかった」

「いーじゃん、お互いもっと色々と聞きたい事もあるっしょー? ∩(^ΦωΦ^)∩」

俺様は聖女様御一行、といっても聖女の子とギャルトラの子を乗せてリヒトシュテルンの冒険者ギルドへと戻っている。

聖女様はちょこんとソファに座ってるが、隣のギャルトラの子は何故か形態変化で小さな白い猫になっていた。

しかも俺様のようなメカ生体ではなく、ちゃんとした生き物に見える猫に偽装してるぜ。大したもんだ。

よくよく考えたら俺様は車だからって機械になる必要も無かったんだな、今度試してみよう。


「貴方がたが、ダンジョンコアを妙な所に転移させるからなのですよ。

 私達も長距離を急行したので貯めていたDPや因果力を使わざるを得ず、浄化する為の力を使い切ってしまったのです。今回のは封印なのでDP取得には無関係でしたし」

「そりゃ申し訳なかったがよ、なんだってまたそんな急いでこっちに来たんだ?一応こっちにも闇の魔力をどうにかする手立ては無いでもなかったんだが」

そうなのだ、あの九頭竜の討伐には成功したものの、闇の魔力に汚染されていたせいか、その分のDPは入ってこなかったのだ。【ガイドさん】からも、【あれはノーカウントです】とのお言葉を頂いてしまった。


「そのようですね、ですが放置するわけにはいかなかったのです。

 貴方も見たでしょう、あの黒い魔力の塊の中に現れた『黒いデコトラ』を」

「……見間違えとかじゃなかったのか、ありゃ一体何なんだ?闇の魔力と何か関係してるのか?」

俺様達は見た、九頭竜が崩れ去った時、残った闇の魔力の塊がまるで門のように何かを呼び寄せており、それが黒いデコトラのような何かだったのを。

その姿はまるで黒い炎でできているかのように不定形ではっきりしないものではあったが、紛れもなくデコトラだったのだ。


「今のところは、関わってるらしい、としかわかりませんね。私達も行く先々で潰してまわっているのですが」

「ねー、それってレイハも色々事情があるみたいだけど、話してくれないの?」

「すまぬ、ウチの国でも機密事項扱いなのだ、おまけにさっきの黒いデコトラの出現で、より慎重に扱わないといけなくなった」

リアの質問にもレイハは答えてはくれなかった。さっきの神様大集合なノリで巫術とやらを使いまくっていたし、かなりの大事なのかも知れない。



「えーと、ひとまずダンジョンコアは光翼教会で浄化した後、あの遺跡に戻すかどうにかするって事で良いのか?」

「その予定です、あれを破壊したらしたで妙な事になっても問題ですし」

聖女様いわく、ダンジョンコアは元々魔力の強い土地に設置されているもので、下手にそれを排除した事で魔力が溜まり、淀んで異変が起こっても困るという事だ。

1000年何事も無くその状態だったのだから、元通りにしておいた方が良いだろうとの事だった。今はその許可をもらうべく冒険者ギルドに戻っている所なのだ。


「浄化した後は戻して封印してしまうのが良いでしょう、ですが、闇の魔力だけは別です、あれだけは何としても始末せねば。レイハ様、貴女はそれをどこで?」

「北方のとある山村を荒らし回っていたゴーレムからじゃ、とはいえ断片的なものでしかないし、その黒いデコトラとは無関係……いや、あの擬態型ゴーレム、まさかその黒いデコトラを見て擬態したのではなかろうな?」

ルクレツィアはレイハの持っていたマガタマというネックレスの存在に気づいていたらしい。取り上げてしまおうとしないのは一応封印されているようなものだと理解してくれているのかな。

そしてレイハの言う通り俺様達が北の村で見た擬態型ゴーレムが擬態していたのが黒いデコトラという事になれば様々な事が繋がりそうな気がしてくる。

「なるほど、つじつまは合いますね、私が見てきた痕跡の道筋ともある程度一致します。

北から西へと向かっているようですが、このままだとダルガニアの首都、ダルガヴォルフまで辿り着く可能性があります、あくまで可能性ですが」


ルクレツィアは地図を取り出し、自分が今まで見てきた黒いデコトラの痕跡の場所を教えてくれた。

その道筋は一応一本の流れのように見える、ような気がする。気がする、というのはどう見ても迷走しているようにしか見えないのだ。

大きな流れではだいたい東から西なのだが、細かく見ると蛇行したり逆行したりとまるで規則性が無い。

「何がしたいのかよくわからんな、北でゴーレムを暴走させては、西で遺跡を暴走させたり、あるいは何も考えてないのか」


「何も考えていない方がまだ楽なのですが、あれを放置するのもまずいのですよ」

「どういう事?」

「闇の魔力は元々この世界のものではない。1000年前の『大襲来』の際、魔界からもたらされたものじゃ。

 人の心の闇に取り憑き、力は与えるが欲望を暴走させてしまい、場合によっては命すら奪う」

ルクレツィアの言葉に疑問を持ったリアに、レイハが教えてくれた。何もかもだんまりというわけでもないようだ。


「それだけならばまだ良いのですが、その取り憑かれた者が適正を持っていた場合、魔力が爆発的に増大して『魔界』との門が開いてしまうのです」

「そーなったらマヂでおっかないよー。さっきの九頭竜みたいなのが山程こっちにやって来るから。しかも殺せば殺す程闇の魔力がこの地に蓄積しちゃうの  ٩(๑º﹏º๑)۶コワイ~」

「ある程度なら、私の持つ『光の魔力』で封じる事もできますが、量によっては私の手に余ってしまうのです」


「おいおい……、なら一箇所でもそんなのを開かせたらまずいって事にならんか?」

「だからこそ、私があちこちに赴いて封じてはいるのですが……。

 今回のは特に強力でしたので本当にダンジョンバーストを狙っていたのかも知れませんね。しかも闇の魔力に汚染された魔物で。そうなったらあちこちで魔界への門が開く可能性が出てきます」

なりゆきとか勢いで討伐してしまったが、どうも本当に危ない所だったらしい。単なる魔物災害ではなく侵略者を呼び寄せかねないものだったとは。


俺様達は事態の深刻さにしばし会話も忘れた、それでもデコトラは道を進む。

少々重い空気を振り払うように、俺様は気になっていたことを質問してみた。

「あー、そういや『スキルツリー』とか言うの?それ見てスキル取ってたって言うけど、どうやるんだ?俺様にもできるかな?」

「別にー、口で言えば良いだけだよー?ちょっと言ってみ?『スキルツリー、オープン』って  (。•̀ᴗ-)bチャレンジ!」


「こうか?『スキルツリー』オープン、おお、本当に何か出てきた。」

俺様がその言葉を発すると、フロントウィンドウ全体に光る文字で表のようなものが浮かび上がってきた。

ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー

名前:ジャバウォック

主:アウレリア・ドラウジネス

ランク:1

装備 :ドリル・無限軌道

武装 :レーザー・ミサイル・ガトリングガン・巡航ミサイル

スキル:形態変更・念動力LV1・車体改造・衝突治癒LV2・スタンボルト・存在感知LV2・時空転移・重力制御LV1・物質透過LV1・空間制御LV1

主用装備: デコトラアーマー・ヴォーパルソード(封印)

保有DP:72983DP

損傷率:5%

属性……風

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「じゃばば、気づいたらいろんな事できるようになってるねぇ」

とはいえ、俺様が今取ってるスキルや装備以外は見る事ができないのか。表示されているのも何ができるかが書いてないので、見ただけではわからんだろうな。


「なんか、あーしのともちょっと違う?的な?単に記録してるだけみたいなんですけどー? ʅ(。◔‸◔。)ʃ…ハテ?」

「あなたのは木の枝のように広がっていく感じだものね」

「俺様のって、こうして見てみると、物騒なスキルや装備ばかりだなぁ。もっと夢のある改造したいよ」

うーん、ステータスウィンドウって各デコトラごとに色々な形式があるのか?よくわからん事をするなあの神。


次回、第59話「聖女、ギルドマスタート交渉ス」

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