第57話「デコトラ ト ギャルトラ」


拝啓、前世のオーナー様。俺様は今、前世で気になっていた子と再会しております。ですがその再会は望んでいたものと少し、いえかなり違っておりました。

「あーしの名前はフォルトゥナって言うんだけどさー。ウケるっしょwww あーしがフォルトゥナってガラかってのwwwwww (๑>◡<๑) ɭ ɿ兯ƕ❤

 ねーねーねー、デコトラくんの名前おせーてよ、名前ー。 “(⌯¤̴̶̷̀ω¤̴̶̷́)✧」


で、デコトラくん……。いえはい、あの、僕、えっと、どうしたら良いんだろう。いや別にね、変な幻想とか抱いてたわけじゃないですよ? 絶対にね? 彼女にも彼女の車としての人生があったわけで。それを僕みたいなのが否定する事はできないと思うんです。でもね、やっぱり夢って壊れたくない、壊したくないものじゃないですか。相手にこうあって欲しいというのを押し付けるのはさすがにダメですけど、自分の夢って守りたいって思うのが普通だと思うんです。


「何か……固まっておられますね? 貴女のデコトラ。あ、初めまして、私はルクレツィアと申します」

「じゃばばどうしたんだろうねー。私はリーリアのリアだよ、よろしく」

「気持ちはわからんでも無いが……。予想外過ぎるのこの相手、ウチはレイハと言う。こっちのリア共々冒険者じゃ。」


「じゃばば? それが名前なワケ? じゃばっちー、ちゃんとした名前おせーて? (人>ω•*)オネガイ♡」

じゃばっち……、ああオーナー、『女ってのは、遠くの方から眺めてるくらいが良いんだよ』ってそういう事だったんですね……。

いえ僕もね、別にそんなやましい気持ちとか無かったですよ? 人じゃあるまいし車なのでお付き合いしたいとかそういう欲望はありませんし。

でも向こうからその夢とか幻想をぶち壊しに来るというのはちょっとどうかと思うんです。

【ご案内します。いい加減キモいので止めて下さい。好きな子が放課後はギャルと判明した童貞かおのれは】

童貞言うな! さすがにこんな事態は誰も想像してなかっただろ!!


「お、俺さ、いや俺の名はジャバウォック、だ。」

「あー、やっとしゃべってくれたーw 名前ジャバウォック!? イカツっ! 超カチカチじゃん! ( •ॢ◡-ॢ)-♡」

「い、いか、イカツ?そうかな?」

「いやマジイカツいカスタムしてんじゃん、これカスタム超ー大変だったっしょ? てかこれ、どっかで見た事無くね? んー、どこだったかなー? (° ꈊ °)✧キラーン」

ギャルな白いトラックさん?は俺様の姿をまじまじと見るように周囲をゆっくりと回るんだけど……、距離……、距離が近い! ほぼ横付けしてこられたら!

ああっ! オイルの匂いが違う! 自分と違うオイルの匂いなのに何故か嫌じゃない!! つかエンジンの温度高いのかちょっと周囲の温度が温かい!


「んー? んんんー? (´◉ω◉` )じ―――」

俺様を見つめるヘッドライトがよく見たらコーティングで虹色に光ってて凄い綺麗! そんなので見つめられたら凄い困る!

……っていうか、フロントグリルの所、妙に開放感が無いか? な、中が丸見えなんだけど!?

ああっ、そんな感じで覗き込まれたら丸見えなんだが!? こうしてみるとフロント部分結構曲線多めで悩まし過ぎるんだが!?

「ああー! ◯◯丸!! ちょ!? マジ有名なデコトラじゃん! マジでレジェンド的な有名車なんですけどー!? Σ(ʘωʘノ)ノ」

あ、それ俺の前世の名か、この子にも知られてたのか。まぁ俺様デコトラの創成期から存在してたからなぁ。


「何じゃ? ジャバウォックの奴、あれでも前世では有名だったのか?」

「凄いテンション上がってるねー」

「いえ、あの子はいつもあんな感じなのですが」


「ねーねー! マジでちょっとマジで一枚撮って良い? 一枚だけ! 一枚だけだから! (๑✧∀✧๑)つ[[゜]]」

ギャルの子のトラックの側面からみょいんという感じで機械のアームが出てきて、その先に……スマホ。いやスマホ型のカメラか?

作ったのか、DPで……。まぁ平和で良いけど。巡航ミサイルまで撃ってた俺様よりよっぽど有意義だよなぁ。

「ねーもうちょっと顔寄せて、だから、離れんなし! ٩(◦`꒳´◦)۶ プンスカ」

「い、いやだから! 何故に!?」

ほぼ横付けされて顔というかキャビンを擦り寄せられるようにされて焦るしかない俺様。ちょ、待て!いくら何でも近すぎる!

チャラーンという音が鳴ったが、それがシャッター音らしい。


「何をやっとんのじゃ? あやつらは」

「あの子はたまに、ああして記録したがるんです。何の意味があるのかわからないのですが」

「いきなり仲良くなったねー」


「ああー! マジ感謝! 待ち受けにするー! ⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾ヤッター」

「お……おう。」

「……。ねー、さっきからテンション低くね? あーしみたいなの嫌? ねぇ嫌い?嫌い?(⑉・̆н・̆⑉)ھ」

「い、いやそういうわけじゃ。というかそんな感じだったんだな」

「え? そんな感じ、って、どこかで会ったっけ? ……あー! ある! たまに隣走ったりしてたー! (⚙♊⚙ノ)ノ」

「お、おう、久しぶり」

「お久ーというか、あの頃のあーしには明確な意識無かったからねー。 ( ˙꒳˙ )スンッ

 そっかー、じゃばっちもこっちに来てたんだー、じゃばっちは変わらないねー、あーしはほら、ごてごてと色んなの付けられちゃってさー。もうこんなザマよー。(⁎˃ ꇴ ˂⁎)ッキャー❤」

前世ではシンプルな普通のトラックだったもんな。今では色んな飾りが付いたので、ほぼデコトラだ。

「い、いや似合ってると、思うぞ?」


「えー? マジー? じゃばっちやさしー! 。゜(.இ‸இ.)゜。

あー、でもほらほら、内装は前と変わんないっしょ? 前世のオーナーってああ見えて結構ゴス趣味入っててさー。ちょい地雷系に片足突っ込んでるんだよねー」(ドアカパー)

「!? ま、まままま待ちなさい! ドア閉めて! 女の子なんだから!

 女の子がドアを開け締めしない!運転席とか足元のぺ……ペダルが丸見えだから!」

「え? 何キョドってるわけ? あーw、もしかしてあーしの運転席とか見てコーフンしたわけー? じゃばっちやらしーwww(⚗❥⚗ )

 ほれほれ、ほーれほれ(,, ՞ਊ ՞)=☞)՞ਊ ՞)」

「ぬぐおっ!?」



「あの子があんなにはしゃぐなんて、初めて見ましたわ」

「……いつまでイチャコラしとんじゃ。そろそろ見てて腹たってきたのぉ」

「むー、なんか、こう、なんかー!」



さすがに見かねたのか、聖女?さんがこちらに来てくれた。

「フォルトゥナ、そのへんにしておきなさい。殿方をからかうものではありませんよ、はしたない」

「もー、レティは相変わらずカタいんだからー。いーじゃんちょっとくらい。(๑˘・з・˘)ぶー」

「何を言っているのです。ダンジョンコアがまだ稼働したままなのですよ。放置できないでしょう」


そういえばおそらく聖女さんが白い光で浄化?してくれてたと思っていたが、その場所にはダンジョンコアがまだあった。

黒い煙のようなものは恐らくまだ闇の魔力ってのが完全には抜けきっていないのだろう。

「大分奥底にまで浸透していたようですね。この場ではこれが精一杯ですので、持ち帰って浄化しないと。フォルトゥナ、これを収納してください」

「はーい」


ギャルの子改めフォルトゥナは車体側面から羽根を出すとふわっと浮かび上がる。

車体後部の貨物箱部分がパネルを開いたかのように展開し、巨大な羽根のように横に広がり平らな板状になる。そしてぐるんと裏返りその面を地面側に向けた。

板状になった面に、魔法陣とかいうやつか?円状の紋様のようなものが浮かび上がり、そこにダンジョンコアを吸い込んでゆく。

さすがに魔法陣の中に吸い込まれていくわけではなく、魔法陣の上で半球状の光がダンジョンコアを包み、貨物室のパネルもそれに合わせて閉じてゆくのだった。

その作業が終わるとフォルトゥナはまたぐるんとひっくり返って元の状態に戻り、こちらに戻ってきた。あれで封印だかしてくれたんだろうか?


「さて、ひとまずはこれで事態は収拾できました。理由は不明ですが闇の魔力がかなりの悪さをしていたようです。

 貴方がたもデコトラに乗っていたとはいえ、よくあれをあそこまで追い詰めましたね」

「そーだよ! あーしなんてロクに力使えないのに、じゃばっち凄くね? 何あのミサイルみたいなの、凄すぎて軽く引くんだけどー。 : (´◦ω◦)ω◦`): コワーイ」

「え? だってそっちにも俺の【ガイドさん】みたいな能力をナビする人? がいるんじゃないの?」

「何それ、あーしにはそんなのいないよ? 運転席でスキルツリーとかいう表がでるから、それ見てあーでもないこーでもないって、レティとずっと苦労してるんだけどー! ٩(◦`꒳´◦)۶ムキー 」



話を聞くと、フォルトゥナはいきなり聖女ルクレツィアという子の所に転生してしまったはいいものの、何をしていいかはわからず最初は途方に暮れていたらしい。

最初は自分で動く事もできず大きさも変えられず、教会の物凄い邪魔物として鎮座してしまっていたそうだ。

おまけに自分を改造するにしてもDPの加減がわからず、使い切りかけて動けなくなった事も一度や二度ではなかったとか。

対して俺様はわりと最初の方から【ガイドさん】の存在で色々とスキルや武装のレクチャーをしてもらっていた。

DPについても一応管理してくれるし、適切な時に適切なスキルや武装を追加してくれたりもしている。


「ちょっと! あの神! 贔屓にも程があると思うんですけどー! あーしこれでも結構苦労したんだよガチで! ٩( ꐦ•̀ з•́)و」

「そ、そんな事言われてもだな、なんか俺さ、俺の場合、不可抗力で転生したようなもんらしいから」



「あー、オーナーを罪憑きになるのを救ったのかー、んじゃ、しゃーないかなぁ」

俺様が転生して来た時の事を話すとフォルトゥナは一応納得してくれたらしい。俺様は何の代償も無く転生してきたわけじゃないからなぁ。

「フォルトゥナ、貴女との会話でたまにその罪憑きという言葉が出ますが、いったい何なのです?」

「あーしらはさー、元々ただのモノだったわけ、様々なインガ的なアレで気付いたら心? 的な? 自分の心を持つんだけどさー、おんなじよーに、あーしらの中には悪いものも溜まっちゃうみたいなんだよねー。.*・(*ᵕᴗᵕ)⁾⁾ ゥンゥン」

「その『悪いもの』というのが何かはわからないんだけどな、ともかく俺達を使って人を殺してしまったりした時は、その全てが運転していた人に向かってしまうんだよ」

「業を背負う、ようなものですか、あまり良い事は無さそうですね」

俺様達にも良くわかってはいない事なんだが、聖女さんは一応その説明で納得してくれたらしい。


「さて、互いに状況説明や自己紹介も終わった事ですし、そろそろ本題に入りましょうか、ちょっと光翼教会へ来てもらえます?」

……なんで (੭ ᐕ)?


次回、第58話「デコトラ、聖女ヲ送ル」


デコトラに優しいギャルトラは実在する、多分。

しかしギャルトラxデコトラのイチャコラ書いておいてあらためて思う、何を書いてるんだ私は。(素)

自分でも要素が過積載過ぎると思う。

どうして私の書くお話にはいつも参考となる作品が無いんだろう……。

どこかに参考となる擬人化しない無機物どうしのラブコメ無いものだろうか……。

(この際百合でもBLでも構わない)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る