第26話「悪役令嬢、始メテノオ使イス」
「決めた、私冒険者になる」
リアは突然こんな事を言い出しちゃった。先程一応人助けをしたというのがリアなりに思う所があったんだろう。とはいえ、長年リアを見てきたであろうケイトさんはいい顔をしなかった。
「【ガイドさん】様、貴族令嬢として育ったお嬢様に、そのような仕事ができるはずがないと思いますが……、それに命にだって関わるのですよ?」
「えー、ダメ?」
「いやリア、ダメとかどうとか以前の問題だと思うぞ?」
【ご案内します。私は意味もなく冒険者という名称を出したわけでは有りません。
旅を続けていく以上、安定して
「えっちょっと待って、俺様のDPってもうそんなに使っちゃったの?50000ポイントあるとか言っていなかったか?」
【ご案内します。現状のDPは残り6000程です。このままですとあと40日でジャバウォック様は動く事もできなくなりますが。ちなみに、先程の盗賊との戦闘では500P程を獲得しております】
「こないだは1日あたり100DPとか言ってなかったか?まだ2月くらい行けるだろ?」
【ご案内します。今現在の1日あたりの消費DPは154DPとなっております。スキルの獲得やデコトラの改造と共に、1日辺りの消費DPも増加して行きますのでご注意下さい】
「先に言ってよ……、なんでもっと早く言ってくれないんだよ」
【申し訳有りません。しばらくはエルダーワイバーン分のDPでどうにかなったのと、そもそも王城での騒動や国外脱出等の大き過ぎる出来事が重なり過ぎましたので」
そういう事を言われてしまうと返す言葉も無かった。単に俺様の見た目とかをカスタムしてたくらいでは別に問題無かったんだろうな。
「このままだと旅を続ける事もままならんのか。魔獣とかを狩っても良いけど、その魔獣が都合良く見つかるかどうか。こないだのエルダーワイバーンみたいなのがそうそういるわけじゃないみたいだし」
「だとすると、冒険者ギルドで魔獣討伐等の依頼を受けてジャバウォック様が退治した後、リア様の名前で報酬を受取るのは良いかもしれませんね」
「まぁそれがリアの安全も含めて一番手っ取り早いだろうなぁ」
「えー、私が戦っちゃ駄目?」
「今絶賛疲れ果てて筋肉痛でダウンしておいてそれ言う?自分で戦いたかったら、まず身体を鍛えなさい」
「えー、じゃばば厳しいー」
「安全の為だから仕方ないだろう、ケガしてからじゃ遅いんだよ?つか、リアってケガとかした事あるの?」
「無いねー。病気は何回かした事あるけど」
「リア様は貴族令嬢だったのですから、怪我をするような環境にあるわけないでしょう」
どうもこの2人は危機感が薄いなぁ。お貴族様ってのはこんなものなのかね?
とりあえず、リアの冒険者になるという話は一旦保留にしておいた。
まずは冒険者ギルドって奴がある街に行かないといけないし、そもそも俺様達はその街すらどこにあるのか知らないのだ。
「この先旅を続けるなら、冒険者ギルドがあるような街の場所を知っておくのは大事だな。とはいえどこに向かったものか」
「さすがにこのような地域の土地勘は私とリア様にもありませんし、今後の為にも大きな街の場所は知っておいた方が良いかも知れませんね」
【ご案内します。先程襲われていた馬車が向かった方向に行けば良いのでは無いでしょうか、馬車の轍の跡を追えば良いかと思われます】
「あー、じゃあとりあえず、さっきの馬車を追って西に向かうか」
「地図も何も無い旅ってのはこういう時に困るんだなぁ、次の街まで近いと良いんだけど」
「この道はそこそこ大きな街道のようですし、走っていけばどこかに辿り着くでしょう」
俺様達はその後数日、ちょいちょい現れる魔獣や動物を狩ったりしながら西へと車を進めると、村が見えてきた。街道沿いだし規模としてはそこそこという感じだろうか?
「あの村で何か話を聞けないでしょうか。できれば魔物の肉や素材を売ったりしたい所なのですが」
情報も大事だけどケイトさんの言うように物々交換ででもお金を手に入れたい所なんだよな、魔物の肉なら貨物室の冷蔵庫に山程あるし。
門も無いような村ならともかく、城壁に囲まれた街なんかに入る為にはどうしてもある程度の入場料みたいなものが要るらしいのだ。
「とはいえ誰が交渉役になるんだ? 俺様がデコトライガーの姿で行っても仕方ないだろう。下手したら討伐対象になる」
「私も単なるメイドですし、このお仕着せ服では少々軽く見られるでしょうね。ドウラウジネス家の名前を出した所で誰も知らないでしょうし」
「はいはーい、んじゃ私がデコトラアーマー着て相手をするわ。それなら良いでしょう?」
消去法でこうなるしか無いのか……。
デコトラは目立つので形態変更で車体を馬車の姿に変え、ダミー映像の馬で引っ張らせるというかなり強引な事を【ガイドさん】の制御でやってもらう事にした。
馬車そのものは触れられても問題無いが、馬は触られると手をすり抜けるという問題は、馬にも鎧を着せるという事でごまかす事にした。結果、かなり禍々しい戦闘用の馬車のようになったんだが……、まぁ冒険者の馬車ならこんなものだろう、こんなものだよな?
村そのものは街道沿いなだけあって意外と大きかった。宿屋らしき店やいくつかの店もある、しかし俺様達はその店に入る金すら全く持ち合わせていないという困った状況なのだ。
これから先ギルドに行って登録してもらうにしても、大きな街に入るにしても、何をするにもそれなりの金は要るはずなので、とにかく何かの手段で金を稼ぐ必要があった。
村へ入るとあからさまに村人達は警戒している、当たり前だな、馬車から降りてきたのはデコトラアーマーを着込んだリアなのだが、少々上背が無くても威圧感はあるだろうから。
まさか宿屋に入って『肉買いませんか』というわけにもいかず、酒場ならそれなりに可能性もあるだろうがまずは一杯頼むというのが礼儀なのだろう。だが今の俺様達はその一杯の水すら買えないのだ、現実はシビアだぜ。
誰か話しかけようにも皆遠巻きに見るだけなんだよな、闇雲に話しかけて警戒させても困るし。さてどうしたものか。
「(ねぇ、じゃばばー、私、どうしたらいいの?)」
「(うかつに動けん、ちょっと大人しくしてその辺を歩いてくれ、できれば大きい道沿いに)」
「(はーい)」
ガチャガチャを鎧を鳴らしながらリアが歩くと、人々もあわてて離れるが、付かず離れずといった感じだな。
「(うーん、凄い気になるんだけどー、どうしよう?)」
「(格好が怪しげだからなぁ、)」
「あーもうキリがない、すいませーん!」
リアは突然立ち止まると、兜を脱いで顔を村人に晒した、長い髪が風に舞い、可憐な顔と異様な鎧がアンバランスなので村人たちは
「何だ!?女の子?」
「結構かわいい……」
「すいませーん!この村に冒険者ギルドはありませんかー?ちょっと用があるんですけどー」
「いや、この村には無いけど……、あんた冒険者なのか?」
「そうよ?魔獣を討伐したんだけど、肉を処分するのに困ってたのよねぁ、誰か買ってくれない?」
「そ……、それなら肉屋の」
「そう?その店どこにあるの?」
次回、第27話「零羽(レイハ)、登場ス」
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