第2話 クラスメイト①

四月十七日月曜日朝八時半


早くも高校生活がスタートして、一週間が経った。

授業も今週から本格的に始まる。

今日はいつもより早く着いてしまった。

学校に着くと、いつもより人気のない階段を登り、静かな廊下を通り二階の一番奥の教室まで向かった。

教室に入るとまだ教室には私を含めて三人しかいなかった。

一人は教室真ん中の列一番後ろの席で机に顔を伏せ寝ている男子、

もう一人は廊下側の列前から三番目の席で本を読んでいる女子。

私は静かな教室に特に挨拶をすることなく自分の席へと向った。

私は今日も自分の席に着くと鞄から授業で使う教科書とノートを取り出し机の中にしまった。

そして、まだ自分から話し掛けに行く勇気がなく、私も顔を机に伏せ朝の

ホームルームが始まるのを待った。

この時間はいつもより長く感じる。ふとスマホを見るとまだ八時半過ぎだった。

ホームルームまでまだ後三十分近くある。

私はスマホを鞄にしまい、再び顔を伏せ寝ることにした。


そして十分程経った頃、廊下でざわざわ話し声が聞こえ始めた。

話しながら教室に生徒が入ってくる。

すると足音が近づいてきた。頭の上で声がした。

颯人『おはよう、楓。今日は早いね』

雄大『楓ちゃん、おはようー』

と二人の声が聞こえ、私は顔を上げ『おはようー』と返した。

二人は私の後ろの席に着き今日の授業の話しを始めた。

私は挨拶だけ返し前を向いた。


キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴ると同時に

担任の吉村先生が教室に入ってくる。

吉村先生『皆さん、おはようございます。早速出席確認をします。』

と先週と同じく丁寧に挨拶をすると名簿を見ながら、生徒の名前を呼び始めた。

その後、今日の時間割を確認し、

吉村先生『じゃあ一時間目が五分後に始まるので準備して待ってて』

と教室から出ていった。


午前十二時半お昼休み

キーンコーンカーンコーン

四時間目終了のチャイムが鳴った。

颯人『楓、お昼雄大と三人で一緒に食べようよ』

私『えっ、いいの!』

颯人『なんで、いいに決まってるじゃあん。ねっ雄大』

雄大『うん!もちろん、楓ちゃんも』

と颯人は自分の机を後ろ向きに動かし、

颯人『楓、こっち』

と私が立って鞄からお弁当を出していると私の椅子を二人の机の横に動かした。

ふとさっき颯人の雄大って呼び捨てだったよなと、いつの間に仲良くなったんだと昔からの颯人のコミ力が羨ましく思った。

そして椅子に座ると何か話さないとと思いとっさに

私『どうも、よろしく』

と少し緊張気味なのが伝わったのか、

颯人『楓、人見知りなところあるし、緊張してる?』

雄大『楓ちゃんそうなの、ぜひ仲良くなりたいし、よろしく』

颯人『そうなんだよ、楓昔から変わってないな』

と軽く笑って言う。

雄大『颯人と楓ちゃんは幼馴染だっけ?小学校からの』

颯人『そうそう。小一からだからもう十年くらいかな』

雄大『そうかー。いいなー。二人とも今でも仲良いんだ』

颯人『そうだね、腐れ縁ってやつ』

その後も二人は私の話しばかりで盛り上がっている。

私はそれをただ横で聞いているだけだった。

昔も今も二人以上の会話では基本聞いているだけだった。

話しを聞いて、相槌を打つ。それが一番楽だったから。

だから大人数は苦手で存在をすぐ消してしまう。

相手の話しは聞くが自分の話ししないので良く何考えているかわからないと言われることが多い。仲良くなるまでに時間がかかるタイプなのだ。

相手に興味がないとも思われがちだ。でもそんな私だが、颯人には私の思ってることがわかるようで、今回もきっと一週間経っても私がクラスに馴染めてないのを気にしてくれているのかもしれない。だから声を掛けてくれたんだ。

なんてことを考えながら二人の話しを聞いていた。

でもこれも私がただそう思ってるだけで実際は何も考えていなかったりして

なんて考えながら話しを聞いていたので後半の話しはほとんど覚えていない。

キーンコーンカーンコーンお昼休みの終わりのチャイムが鳴った。

私達は机と椅子を元に戻し、それぞれ次の授業の準備をした。


午後三時半ホームルーム

吉村先生『はーい。静かに!先週話しがあったように部活の体験がこの後あります。それぞれ興味がある人はぜひ行ってみてください。今日は終わります。』

号令『起立、礼、ありがとうございました。』

私『はー、やっと一日が終わった』

颯人『だなー。楓この後どうする?部活見学行くの?』

私『あー、どうしようかな、特に考えてなかった』

雄大『じゃあ俺らとサッカー部見学行かない?』

私『えっでも』

雄大『マネージャーも募集してるみたいだしさ』

颯人『そうだよ。どうせ帰っても暇だろ。行こうぜ!』

雄大『決まり、行こう!』

と二人は私の返事も聞かないで先に教室を出て行く。

私は慌て二人の後を追う。

教室を出ると雄大が待っていた。

私『あれ、颯人もう行っちゃった?』

雄大『うん。先行った』

と笑顔で返す。そして二人でグランドへ向かって歩いた。その途中

雄大『あっそうだ、これから楓って呼んでいい?』

私『えっ、あ、うん。別に良いけど』

雄大『ありがとう!俺は雄大で』

すると少し前を歩いていた雄大が急に振り向いて、私が話そうとした時

雄大『では、俺達友達ね!よろしく』

と手を伸ばす。私は話すことなく手を伸ばしお互い握手を交わした。

雄大は笑顔で『行こう!楓』と先に走って行った

私は少しびっくりして立ち止まったままだ。

颯人以外に下の名前で呼ばれたことがなかったので違和感しかなかった。

けど、今日から私にも友達が増えた。込み上げる笑みを堪え、

急いで二人の後を追った。


そしてここから色んな感情が彼ら二人に対して芽生え始めることにこの時の私はまだ気づいていないのだった。












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