ハッピーバースデー、私。
たっきゅん
誕生日
日付けが 1月22日に変わり、私はまた一つ歳を重ねた。
「これは⋯⋯手紙?」
仰向けになって寝ていた私は目を凝らして天井を見るが天井しかない。どうやって降ってきたのかわからないが、確かに封筒に入った何かが私の元へと届いた。
「って、白紙じゃねーか!」
隠された秘密の力や、ふって沸いたような巨額の遺産相続を少しだけ期待したが封筒に入っていたのが白紙とは全く予想外だ。
「はあ、魔法使いになれたらこんな人生も変わるのかな⋯⋯」
その呟きに反応したのか紙に文字が浮かび上がる。
「ハッピーバースデー、私。って、なんだこれ」
読み上げた瞬間、アパートの一室は開かれたオモチャ箱のように世界を塗り替えた。
「おめでとう」
「おめでとう、私」
「おめでとう」
四方八方からおめでとうの嵐。バニーにカエル、ゾウにアヒルと動物たちの着ぐるみが拍手で祝福してくる。
「めでたくなんかないさ。無意味に歳を重ねた俺なんて祝ってもらう価値もない」
「そんなことないよ。生きててくれてありがとう」
ゾウの着ぐるみが頭を脱ぐと何年も会っていない親父が中に入っていた。
「そうよ。それにアナタは何もしていないままじゃない。こんな世界を変える魔法まで使えるじゃない」
バニーの着ぐるみにはお袋が入っていた。
「⋯⋯これは俺がやったのか?」
実感もなく、手紙に目を落とすと〝偉大な魔法使いの誕生日〟と文字が変化していた。
「おめでとう、私。──────無力だと私が思っていても世界を変える力が確かにあるんだ。自分を信じて来年こそはと筆を取れ」
魔法使いには杖じゃないのか?
「こまけぇことはいいんだよ!」
ああ、この感じは確かに俺だ。だが何故?
「歳をとるのが不安なんだろ? ふあんタジーに変えてやれよ。それが私、いや、お前だろ」
朝、目が覚めると作品が更新されていた。
《ハッピーバースデー、私。》
─ 完 ─
ハッピーバースデー、私。 たっきゅん @takkyun
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