『ヴァチカンのエクソシスト』〜従来の悪魔祓いモノとは一線を画しているけど実録物?

『ヴァチカンのエクソシスト』、、、


実在のエクソシストの回顧録が原作らしい。


ってことは実話。


しかも本人著。


このパターンは、だいたいが全編自慢話である。


途中、自虐的な懺悔も含め、結局は自慢で終わる。


だが、見た人達の評判が良い。


ってことは、エクソシストの実録か?


それはそれで興味がある。


エクソシスト(悪魔祓い師)は有名なわりに、実態は知らない。


と言うことで見ることにした。


面白かった。


が、これ、ホントに実録モノなの?


回顧録は読んでないけれど、ホントに回顧録にこんな事が書いてあったの?


と言う疑問が頭の中をグルグルまわるくらいエンターテインメントとして面白いのである。


ストーリーはある意味で、有りふれた手垢つきまくりの物語。


年代は1987年、スペインの古い修道院が舞台でその修復作業中に所有者の息子に悪魔が取り憑く。


その悪魔祓いに訪れたエクソシストが主人公、回顧録の作者である。


正直、キリスト教徒ではない私には、絶対善(神)と絶対悪(悪魔)の対立という定番フォーマットは今一つピンと来ない。


おそらく日本においては精霊信仰アニミズムが強く、いわゆる精霊(=神、妖怪、物の怪)は人間のような感情をもち、単純な善悪の二元論に片付けられないという思考の方が強いと思い、かくいう私もそうである。


だから、シンプルなエクソシスト物はクライマックス辺りで感情移入しきれない。


が、この作品は、エクソシストを扱いながら、その定番フォーマットに陥っていない。


まず、主人公がバイクをかっ飛ばすあたりから、従来のストイックなエクソシスト像と違うのである。


また、演じているのがラッセル•クロウなので、オジさんのヒーロー感が強い。


そして、若い神父が登場して、途中から完全なバディモノと化す。


映画の全般は、少年に憑いた悪魔(わりと強めの悪魔)との闘いが軸になるのだが、修復中の修道院に纏わる過去の歴史的事実の隠蔽された真実が絡み、途中から“インディ•ジョーンズ”“ダビンチ•コード”系の遺物を巡るストーリーが展開され、これがまたハラハラする良い出来なのだ。


一応、ホラーに分類される映画と思うが、私は、伝奇ミステリー、アクション付きのような感じで楽しんだ。


ぶっちゃけ悪魔の描き方は、昨今の映像技術の進歩を感じる派手さではあるが、そこそこホラーを見ていたものには、怖さは感じない。


けれど、ネタバレになるので詳細は避けるが、キリスト教の教義に基づき行われたアレも、実はキリスト教ではなく、悪魔のせいだっていうんだね、、、って、歴史の真実を語るという一面もあり、これが実話だっていうんなら、どこかから文句が来るんじゃないか?といらん心配をしてしまうほど。


そして、それらを踏まえたクライマックスの修道院の地下での悪魔との闘いなんて、ロールプレイングゲームのラスボス戦かいっ、、、と、ツッコミたくなるほど派手で美しい。


そして、悪魔祓いモノの定番の実は悪魔はこっちに憑いていた的な、続編を匂わせるオチではなく、正面から続編を199本作れますよ〜とするオチ。


好きだった。


壮大な“インディ•ジョーンズ”系バディ物ホラーシリーズの誕生だよ〜というエンターテインメント精神に溢れたラストが好きである。


そして、クライマックス以降を楽しめば楽しむほど、これって、ホントに回顧録を映画化したの?というツッコミが出てきてしまうのである。


時間も1時間半と、軽く楽しむにはちょうど良い長さ。


おすすめの一作だ。


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猫おじさんのエンタメ巡礼 奈良原透 @106NARAHARA

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