第2話 ひきこもり義妹
オンラインゲームをしていると、ウーハーイーツが届いた。
カレーライスと牛丼だ。
女性配達員にチップを入金しておき、俺は冷え切ったリビングへ戻る。
相変わらず、彩音が液体のようにとろけてゲームをしている。
これではニートみたいなものだ。
部屋も暗くしちゃってさ。
いや、俺もこういう雰囲気の方がどちらかといえば好みなのだが……口には出せない。
「彩音、昼飯届いたぞ。ほい、カレーライス」
「ありがとー!」
彩音が容器の蓋を開ける。
俺も牛丼を開封して、半熟タマゴを乗せた。……これでヨシっと。
「う~ん、うまそうだ」
「お兄ちゃん、それ好きだよね~」
「まあね、ネギもたっぷりだ」
「おぉ、豪快だねえ!」
手を合わせ“いただきます”をして、割箸を割く。
俺はさっそく牛丼を摘まむ。
口へ運び、牛肉を味わう。
う~ん、濃厚で肉汁たっぷりで美味い。
半熟タマゴとネギの融合が宝石箱のようだ。
カレーを堪能する彩音も、幸せそうな表情を浮かべていた。
じっと見つめていると、彩音はスプーンでカレーをすくい、俺の口元へ。
「彩音、これは……」
「はい、お兄ちゃん。あ~ん♪」
「マジ?」
「うん、マジ」
こういう行為ははじめてだ。
兄妹になってから、彩音はどんどん距離感を縮めてスキンシップも凄いことになっているけど、今日も一段と攻めてくる。
けど、遠慮はしない。
彩音の好意を無碍になどできないのだから――。
俺は遠慮なく、カレーを食べた。
「――うまッ!」
「福神漬が美味いでしょ」
「ああ、甘くて美味しいよ。って、カレーじゃなくて福神漬かよ」
「一緒に食べるのが美味しいんだよ~」
確かに、このカレー屋のカレーは福神漬と一緒に食べるとほどよく甘くて美味い。辛いのを忘れるくらいにな。
ていうか、彩音のヤツ……結構、辛さの強いカレーを食べていたんだな。唇が若干、ヒリヒリするぞ。
そういえば、辛い物が好きなんだっけな。
そんな感じで食事は進み――完食。
お腹を満たした。
◆
冷房の効いた部屋でオンラインゲームは続く。
グラフィックも綺麗だし、BGMも最高峰。
キャラクターやクラフトの自由度も非常に高い。
彩音は、アイランドを一年前からプレイしているらしく、意外と古参の部類に入るらしい。
という俺も更に昔から住人なわけだが、しかし今は休止中。
リアルやアオハル荘のこともあり、プレイしている暇がなかったのだ。
「楽しいか、彩音」
「うん。だってさ、他人の物資を奪えるんだよ? ストレス解消に最高だよ~」
彩音は笑いながらも、他人の拠点を容赦なく破壊していく。そんな、ロケットランチャーでバコバコと。
次々に物資を奪取。
かなり儲けたようだ。
「強いな」
「かなりやりこんでるからねー。お兄ちゃんも一緒にやろうよぉ」
「うーん。他のゲームならいいんだけど」
「じゃあ、レースゲームでもやる?」
「それならいいぞ」
「わーい! やった」
喜ぶ彩音は、俺の膝の上に乗ってくる。
こう上機嫌にされては断れない。
そうだな、外は馬鹿みたいに暑いし……ひきこもるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます