第43話 05話 視察再開?
------------------------------------------------------------
「テメェら、さっさと出ていかねぇか! ここは家の敷地だぞ!!」
「そんな!? 建物は私たちが建てたのだし、土地代も払っています!」
男たちの争う声が聞こえた。
「え、何? 俺ら帝国に呪われてんの?」
「まさか帝国についてすぐとか……」
「探偵いるところ事件起きるなみに凄いネ」
帝国視察再開、と思いきや、犬も歩けば棒に当たる。
またも問題発生の予感。
「どうする? スルーするか? 別にこんどは大人同士だし」
「自己責任ってことで」
「なかったこと1択ネ!」
「「「しーらんぺ」」」
俺たちは、なかったことにした。
「ここは私たち〝劇団員〟の住む家です。おいそれと渡せません」
男の言葉が、耳に引っかかった。
「「「……」」」
「今、『劇団』って言った? 言ったよな?」
「言ったね」
「言ったヨ」
「「「……」」」
俺たち3人は、1回思考しなおし、
「「「人材確保!!」」」
「なんなら、そっちの姉ちゃんが一晩遊んでくれれば考えてやってもいいが」
「駄目です! 彼女は家の女優です! 誰が渡すものですか!!」
「お困りのようですね、ちょいと話しを聞かせてもらおうか」
「何だテメェ、引っ込んでろ!」
からかうように言うと、取り立て屋の男は、いきなり拳を振るってきた。
俺は拳を受けとめ、砕かぬよう注意しながら、力を込めた。
「暴力はいけないよ、暴力は、な?」
「痛たたっ、悪かった、離してくれ」
「悪いが今日一日、この人たち貸してくれよ。あんたは明日以降、また取り立てに来るってことで」
「……わ、わかった」
取り立て屋の男は少し不満そうだったが、素直にひいて立ち去った。
「それで、さっき話し聞いてたが、お兄さんらは劇団員ってことで間違いないか?」
「あ、ああ」
「家の国の劇場に出演してみないか? なんなら無料で引っ越しも手伝うぜ」
「家の国? 劇場?」
「正式名称『プリンエデン王国』っていう出来たばっかの国なんだが、今度国王が隣国『アラモード王国』の王女と結婚することになったんだ。でだ、2人のなれそめで演劇の脚本作ったのはいいが、演者がいない。できれば結婚式のときに、上映してたいんだ」
「そこで私たちが必要ってことか、とりあえずその脚本をよみたい。中に入ってくれ」
「ありがとう」
俺たちは中に案内され、脚本を読み終わるまで待っていた。
「面白い!!」
男は興奮しながら賞賛した。
「よかった。舞台の脚本を書くのは初めてだったから、いろいろと粗があるだろ?」
「確かに、どこか小説みたいな書き方のところもあったが、問題なのはストーリーだ。これは面白い! これって、実在の話しなのかい?」
「ああ、俺たちは一部だけだが間近で二人のことを見ていた。それに本人からも話しを聞けたしな。あとは、物語として面白く〝ちょこっと〟調整するだけだ」
「なるほど、これなら問題ないよ。むしろぜひ演じさせてほしい。だけど、別の国に行くんだよね? 大丈夫なのかい?」
「安心しろ。引っ越しは転移魔法ですぐすむ」
「転移魔法!?」
「帝国にはないが、最近、各国で普及してるから、そう珍しいものじゃない。気軽に行けるぞ」
「そうかぁ、帝国の外はそんなことに……」
「もし来てくれるなら、この建物ごと引っ越すことも可能だ。増築して部屋増やしたり、なんなら新築をこっちで無料提供してもいい」
「いやいや、条件が良すぎて逆に怖いよ」
確かにここまでくると不審になるわな。
「でも、俺たちはそれくらい今、演劇ができる人間が必要なんだ。これは国同士の友好にも繋がってる」
「……」
「だから頼む、お前さんたちの劇団、全員で家の国に来て欲しい!」
俺たちは頭を下げた。
団員たちは視線を交わす。
「こちらこそ、ぜひ演じさせてほしい」
よっしゃー! 劇団員ゲットだぜ!
------------------------------------------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます