第37話 37話 プロポーズ

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「まだ、起きてたのね」

「姉さん」

 縁側にすわりこみ夜空を見ていたところ、姉さんが来た。


「柚希は?」

「もう寝てるわよ」

 深夜と呼ばれる時刻。

 山奥にある自宅。

 あたりは星明かりで満ちていた。


「今日、ちょうど流星群なんだ。見られるかなって」

「ずいぶんと珍しいことするわね。レイジが星を見るなんて」

 普段の俺は、夜空を見たりしたことはない。

 ただ今回は、


「ちょっとお願い事しようかなって思ったんだよ。流星群なら1つくらい叶えてくれるのがあるんじゃね? って思って」

「ほんと、変なとこ純情よね、レイジって」

「からかわんでよ」

 ちょっと照れくさくなってきた。


「あ、流れ星」

「え、うそ!」

 姉さんの声にひかれるよう夜空を見上げるが、流れ星は見れなかった。


「流星群なら、また次の星が見れるわよ」

「うん……」


「結局、レイジって、何をお願いしたかったの?」

「いや、やっぱお願いしなくてもいいかなって」


「いいの?」

「ああ、姉さんと星見られたらいいかなって」

「ふふっ、なにそれ」

 そう言って姉さんは、俺の肩にもたれかかる。

 俺は姉さんの手を握った。


「あ、また」

「今度は俺も見れた」

 夜空に星が流れる。


「姉さん」

「なに?」

 俺は静かに息を吸い込み、


「――俺と結婚してください」

「…………」

「…………」

「――はい」


 翌日、姉さんはこの世を去っていた。


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