第33話 33話 友好のスイーツ
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「お前ら、急な集まりになって悪ぃな。もう話しは聞いてると思うが、家のジュリエットが隣のエデン王国の国王と婚約が決まった」
王宮の大広間がざわめいた。
元帝国というのがやはり引っかかるんだろう。
「心配すんのはわかるが、大丈夫だ。こいつらは竜の群れが襲ってきたとき、王自ら先陣切って突っ込んでった。いわば俺たちの戦友だ」
ざわめきが止み、空気が変わる。
「命を賭けた友なんだ、こいつらはもう身内だ。仲良くする理由なんてそれで十分だろ」
『おおぉぉ』
歓声が上がる。
いや、だから、どいつもこいつも何でこの国は極道チックなんだ?
高貴な連中のパーティーって気がしない。極道の集会だわこれ。
「友と娘の婚約を祝し、乾杯!」
『乾杯!』
宴の始りとともに、俺たちの演出も始まる。
「くださいな」
「姉さん」
「あたしの後なら、他の人も来るでしょ」
「ありがと。で、何からいく?」
「カラアゲ」
「あいよ! キョウヤとヒソカは?」
「私は魚フライのタルタル」
「僕は茶碗蒸しで」
「2人とも完全に向こうの料理にもなれたな。まぁ、姉さんが作ってたから、食べ慣れてるのもあるが」
「あたし、いうほど作ってないわよ。店の子たち、みんな基本作れるし」
「年に数回くらい? チハヤママは、そのくらいしか作ってくれない!」
「主に僕たちの誕生日だけですね」
「だからレイジパパたちが来てから毎日ごちそうになったよ。店のみんなもパパのレシピで作ってるし」
そうこう話してる内に、徐々にこちらにも人が集まってきた。
「姫巫女様、そちらの料理はもしや……」
「家の旦那が作った、あたしたちの故郷の料理よ」
『おお』
いや、タケルとカズマも作ったから、姉さん。何故に姉さんが自慢げ。
「何だこれは!? サクッとした外側に、中の魚がふんわり。このソースが実によくあう!」
「こちらのカリッとしたものも、初めて食べる味だ」
「ぷるぷるした触感、中に入ってる具もよくあう。サッパリしていていくらでも入る!」
うん、他の連中の反応も良さそうだ。
腹にたまる前に、〝今回の主役〟を出そう。
料理長に、視線で合図を送る。
すると料理人たちがワゴンでプリンを運んでくる。
「なんだ、これは?」
獣王も戸惑う。
「カズマ、頼む」
カズマは大広間の前と向かう。
「皆さん、ご歓談中に失礼します。この度、『ロミオナルド・プリンエデン』陛下と『ジュリエット・アラモード』王女の婚約を祝し、記念のスイーツをご用意しました」
これが〝今回の主役〟、
「その名も『プリンアラモード』です!」
急遽、専用のガラスの器を用意させ、カットフルーツやホイップクリームが乗ってる完璧なものを作り出した。
このネタ浮かんだ時は、時間ギリギリで結構焦った。
「両国の名前が入ったこの料理は、我々の友好の証となってくれるでしょう! どうぞご賞味ください」
「上手い! 特にこの白い泡が一番いい!」
獣王にも気に入ってもらえたようだ。
「甘さをフルーツのサッパリさが口を整えてくれて、いくらでも食べられそう」
「見た目もオシャレで可愛いい」
他のメンツ、特に女性陣に反応がいい。
「おいしいわね、ロミオ!」
「ジュリエット、口に付いてる」
「え?」
ロミオは、ジュリエットの口に付いたホイップを指でぬぐい、自分の口に入れた。
「ん、やっぱりこの白い泡が一番おいしいね」
ポッと瞬間沸騰するジュリエット。
「チッ、あぁ~、俺やっぱこっちのぷるぷるした方が一番好きだわ~」
「あなた……」
子供じみた獣王の反応に、呆れた王妃様だった。
娘をもつ父親とは、どこの世界でもこんなものか。
「レイジ、はい」
「ん、うまい。お返し」
「ありがと、ん」
姉さんがプリンを食べさせてくれたので、俺もお返しする。
「あっちもこっちもアッチッチネ!」
「ふふっ、いつものことだよ」
「父様、母様、せめて僕らがいないところでやってください……」
「ほんとだよ~」
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