第28話 28話 世界一の色男

------------------------------------------------------------


「やってくれるじゃねぇか……」

 やっぱこの映像だけでは、感情的な獣王を黙らせることはできないか。でも、エデン王国を舐められないところまでもってこれた。

「親父、これはエデン王国と友好を結ぶべきだ。見たことない幻術での説明。それだけでも技術の高さを証明してる」

「お前は黙ってろ!」

「親父!」

 王座横に立つ獣王の息子らしき男が意見を述べるが、獣王の感情によって黙らされた。

 今、獣王は苛立っている。完全に手玉を取られたからだ。俺たちと交流したいと全員を思わせた。それは獣王自身も含む。


「獣王、頼みがある」

「頼み?」

「ジュリエット王女を私の妃にください」

「ロミオ……」

 獣王の横にいる若い方の女性がロミオの名を呼んだ。あれがジュリエット嬢か。


「……いくら独立したつっても、テメェは元帝国の人間、信用できっか。それに俺はお前が大嫌いだ」

「それでも私はジュリエットと……」

「まだ言うか!!」

「親父、私もロミオと結婚したい」

「チッ、ジュリエット、お前が長いこと、誰とも結婚を受け入れなかったのは知ってる。こいつを思ってだとな。俺としても女として幸せになって欲しい。だが、こいつだけは駄目だ!」

「なら私は家でるよ。兄貴も結婚して後継ぎの子供もいる。王国も安泰だしね」

「「ジュリエット!?」」

「ジュリエット様!?」

「許可します」

「お前!?」

「お袋!?」

「王妃様!?」

 獣王も家臣たちも驚いてる。

 やるなぁ、ジュリエット嬢と王妃様。男連中、完全に振りまわされてる。やっぱ異世界でも女が強い。



「で、伝令です!」

「何だ、取り込み中だ!」

「お、王都に〝竜の群れ〟が向かっていますッ!!」

「なんだと!?」

 え、何この展開。魔王の次はドラゴンかよ。

 獣王は、姉さんとヒソカを見た。

「……エデンの姫巫女はどっちだ」

「あたしよ」

「頼む、竜の討伐を――」

「断る」

「チハヤママ!?」

「母様!?」

 獣王の言葉を遮り、即答で断る。さすが姉さん。

「何が欲しい? 一通りの物は用意できる」

「要らない。大抵のものは手に入るもの」

 取り付く島もない。さすがの獣王も焦りを感じる。


「――私が出よう」

「ロミオ!?」

「陛下!?」

 いきなり言い出すロミオに驚くジュリエットとセバスや兵士たち。

「これでも『魔境』の魔物相手にやり合ってきたのだ。そう簡単にやられぬよ」

「私もいくわロミオ」

「駄目だジュリエット。君には帰ってきたら私の妃になってもらう。傷をつけるわけにはいかない」

「ロミオ……」



「くくっ、やっぱ『ロミオ』は世界一の色男の名だな。名前負けしてない、さすがだ」

「家のロリコンイケメンとは大違いネ」

「ロリコンじゃなく父性愛なんだよ、イエスロリータ・ノータッチだよ!」

 家の残念ロリコンがなんか言ってる。

「父様」

「ん?」

 あれ、キョウヤに父と言われるの初めてじゃね?

「どうか獣人国に手を貸してあげてください」

「レイジパパ、お願い。その代わり私たち、パパのことパパって呼ぶから」

「僕も父様とお呼びします」

 パパに父様か、悪くない。

「少しだけだぞ」

 俺は対策を練っている獣王に声をかけた。

「獣王」

「なんだてめぇは! このクソ忙しい時に」

「『姫巫女』の旦那だ」

「はっ!?」

 何故かドヤ顔する姉さん。

「ロミオと王女の結婚を認め、エデンとの交流しろ。それが条件だ」

「レイジが行くなら私も行く」

 姉さんも乗ってきた。

「だぁあああ、わぁったよ! 認めるよ、畜生!」


 俺たちの勝ちだ。


------------------------------------------------------------

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る