第23話 23話 ロミオとジュリエット
------------------------------------------------------------
「ふぅ、これで最後か。頼んだセバス」
「お疲れ様でした、ロミオ様」
街の大幅改変後、多くの書類が届き、疲労がたまる。
だがその負担も、もうすぐ起きる〝目的〟のためなら、心地よいくらいだった。
「エデンの抱える問題も一気に片づきましたね。これなら……」
「……うむ、何のうれいもなく動けそうだ」
◇ ◇
当時ロミオは、次期領主のため、領主の代理として交渉におもむくことがよくあった。
主にエデンの街の食料問題解決のためだ。
行商人に定期で食料を輸送してもらうため、年に数回打ち合わせをする。そのため、帝国の敵国・『アラモード王国』に、身分を隠して紛れ込んだ。
わざわざ敵対国に行くのは、帝国の他の街とは距離がありすぎるからだ。
実際『アラモード』側は、エデンの街に対して通行止めをしていない。『魔境』の素材を手に入れるためにも、盛んに行商人や冒険者が行き来していた。
「仕事も終わったことだし、皆も帰りまでゆっくりせよ。私は市に行ってくる」
「ロミオ様、護衛を……」
「要らぬ。『魔境』の魔物を相手しているのだ。そこいらの者には負けぬ」
ロミオにとって、この時間は楽しみの1つだった。
領内だと顔が知れ渡ってるため、楽しめない。
ここなら気を使う者が誰一人いない。
「旨い! もう1本くれ!」
「いい食いっぷりだね。おまけだ、もう1本やるよ」
「ありがとう!」
こうして気ままな屋台めぐりも最高だった。
――ゴトンッ!
「クソガキ! 何しやがる!!」
「ん?」
視線の先には1人の〝少年〟が、複数の酔っ払いどもに絡まれていた。
「酒を呑むなとは言わないけど、店の女の子に絡むのは御法度だよ」
どうやら少年は、女の子が絡まれたのを助けたらしい。
「おやっさん、ごちそうさま」
「お、おう、まいど!」
少年の元へと脚を進める。
「……テメェ、もう容赦しねぇ。俺たちゃ『魔境』の魔物を相手してんだ。ただですむと思うなよ」
男たちは剣を抜いた。あれは駄目だ。
「あんたたち、それを抜いたってことは、覚悟があるんだろうね?」
「余裕ぶりやがって、ぶっ殺してやる!」
――バシッ
「え?」
少年は驚いた。
ロミオが男の剣を持つ手を押えたからだ。
「……1つ言っておこう。『魔境』を相手にする冒険者は、喧嘩はしても剣は抜かない。それは同じ冒険者で争わず、1匹でも多く魔物を倒すためだ。貴様らのようなまがい物が、『魔境』の冒険者を語る資格はない」
男たちは、よりによって『魔境』について語った。ロミオにとっては自身の誇りを汚された気分だった。
「何なんだテメェ、関係ねぇ奴は引っ込んでろ!!」
男たちを無視し、ロミオは少年を見る。
「少年、何人相手できる?」
「……ふっ、別に何人でもかまやしないよ」
「ならどちらが多く処理できるか競争だ」
「ナメてんじゃねぇ!!」
男たちが一斉に向かってくる。
ロミオも少年も剣を抜き、あっという間に男たちをのした。
酔っぱらってるのを差し引いても、やはり『魔境』の冒険者は嘘だったのだろう。
「なかなかやるな少年。いい剣すじだ」
「……その少年って止めろ。ガキじゃないし、女だ」
「き、君、女の子だったのか!?」
「くっ、女の子も止めろ、子供じゃない! もう14だ!」
「私の2つ下、まだ成人前じゃないか」
「とにかく、私のことは『ジュリエット』と呼びな!」
◇ ◇
「ふふっ」
「ロミオ様?」
突然笑みを浮かべるロミオに声をかけるセバス。
「いやなに、思いだし笑いだよ」
------------------------------------------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます