第22話 22話 ゴブリンソルジャーズ

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 ――カーンカーンカーン

 太陽が昇るのに合わせ、鐘の音が響く。

 エデンの裏山、そこにある多数のプレハブからゴブリンたちが現れる。

 ゴブさんこと、『ゴブリンソルジャーズ』の村だ。


 目覚めてすぐ彼らは〝身だしなみ〟を整える。

 以前とは違い、レイジたちと出会った彼らは文明的な生活をしている。

 顔を洗い、歯を磨き、自分の迷彩服を着込む。


「おはようございます、シスター」

「おはよう、ゴブさん」

 メイド部隊・シスターズから派遣されたメイドと、当番のゴブさんが朝ご飯を用意する。

 お盆を持ち、順番に並び、受け取った者から食べ始める。


「いただきます」

 きちんと手を合わせ、食事の挨拶をする。

 今日のメニューは和食。

 器用にハシを使いこなし、魚をほぐす。

 日本人と比べても引けを取らない鮮麗さ。

「ごちそうさまでした」


 食事をすませたら各自移動する。

 夜勤をおえ、入浴後、食事をするもの。

 武装し、警備の仕事に移るもの。

 様々な訓練に移るもの。


 座学の訓練では、武器の扱い方など専門的なことだけではなく、一般常識なども学ぶ。

 もともとゴブさんたちは、人の言語を話せなかった。

 それをシスターズの指導のもと習得を果たした。

 今では大人のゴブリンが、生まれてきた小さなゴブリンたちに教育している。

「あめんぼ あかいな あ・い・う・え・お」

『あめんぼ あかいな あ・い・う・え・お』

「うきもに こえびも およいでる」

『うきもに こえびも およいでる』


 道徳を学ぶため、昔話を導入している。

「そうして赤いゴブリンは、青いゴブリンのおかげで、人間の友達を作れました」


 グラウンドでは、ランニングをしながら『ミリタリーケイデンス』という替え歌を歌うゴブさんたちが。


「我らはゴブリンソルジャーズ」

『我らはゴブリンソルジャーズ』

「エデンの平和を護りぬく」

『エデンの平和を護りぬく』

「ワン・ツー」

『ワン・ツー』

「スリー・フォー」

『スリー・フォー』

「ワン・ツー」

『ワン・ツー』

「スリー・フォー」

『スリー・フォー』


 警備の任務は主に、裏山に『魔境』の魔物が入り込まないようにする。

 危険な仕事だが、与えられた装備と仲間との連係でで対処する。


「来た、散開。撃て!」

――タタンッ、タタンッ

 銃声が鳴り響くとともに、バタリと倒れ込む音。

 倒した魔物は、綺麗に解体し素材を回収する。


 その他にも、裏山内の巡回任務もある。

 これは万が一魔物が入り込んだときの保険だけでなく、人間を助ける仕事でもある。


「ぐす、ぐす、ぐす」

「おや、迷子かい?」

「うん、ぐすっ」

 森の中で少女がすすり泣いていた。


「ほら、泣かないで、もう大丈夫だ。私が門まで送ろう」

 少女を抱き上げ、エデンの城門まで歩き出す。


「お、ゴブさん、お疲れ。いつも悪い。子供たちには裏山入るなって言ってるんだが……」

「気にするな。これも仕事さ」

 城門の警備兵に少女を預ける。


「お嬢ちゃん、ゴブさんに挨拶は?」

「ごぶさん、ありがとう」

「ふふ、もう1人で森に入っては駄目だよ。今度は大人と一緒にね」

「うん!」

 ゴブさんは少女の頭を撫で、村へと帰還する。


「さて、今日の晩ご飯はなにかな」


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