第19話 19話 新『リライズ』オープン
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「あらいらっしゃい、ポルコさん。今日も一番乗りね」
「……ママがいるってことは、ここはリライズでいいんだよな?」
「チハヤの旦那さんに改装してもらったの」
「例のチハヤ嬢の旦那か。街で噂になってるが、いまだに信じられねぇよ」
「大丈夫。それはみんな同じだから」
初めて来たときから街の英雄だった『姫巫女』。長い歳月もあり、大人から子供まで幅広い世代に愛されていた。
本人は特別いばることもなく、普通に接してくれる。
それもあって、長くこの街のアイドルとされ続けた。
「それで、旦那はどんな感じだ? あぁ、すまん。ん、やっぱママに入れてもらった酒が一番だ!」
「ふふっ、ありがとう。旦那さんとそのお友達3人ともいい子よ。ただちょっと規格外だけど。チハヤとは違った意味で」
「怖えな。あのチハヤ嬢だしな。貴族なんて関係ないとぶん殴ったときはさすがに国出るよう進めたが」
「あの時は私も焦ったわ。でも気にせずその後も王の使者も殴られてたわね」
ポルコとミスティーは遠い目をしていた。
「……事後処理もせずお酒とかいいご身分ね、ポルコ」
「げっ! チハヤ嬢!」
その鋭い目に、脅えるポルコ。
「結局、キョウヤがある程度まとめてきたみたいだけど。家の子に働かせて自分は休むとか、どういうこと、ん?」
「いや、それわだな、キョウヤの独り立ちのために仕方なく…………、すみませんでした」
「まあまあ、チハヤもそのくらいにして」
ポルコは、女神ミスティーの救済に感謝した。
「レイジたちは?」
「あっち」
チハヤの視線の先は、新しくなった大きなステージだった。
そこにはスーツをビシッと着こなす3人の姿が。
◇ ◇
「さてどっちにする?」
「ドラムは渡さないネ!」
「わかってんよ、お前じゃなくてカズマに聞いてる」
「んー、今日はピアノかな」
「そんじゃ今日は俺がアコギで」
せっかくこんなステージあるんだ。楽器弾かないでどうする。
「曲調はゆったりめがいいかな」
「アコースティックテイストでいくぞ。イントロピアノで」
「オーケー。ドラムは主張し過ぎないネ」
◇ ◇
店内のざわつきがやむ。
見たことの楽器で目を引き、注目が集まる。
聞いたことのないキャッチーな曲調。誰もが耳を傾けさせられた。
「……いい曲だわ。あの子たちほんと多彩ね」
「……凄ぇ、聞いたことねえよ、こんなの」
「レイジは昔からいろいろ手を出してから。たぶんあの2人と仲がいいのも、物作りが好きな者同士だからなのかも。あたしたちの故郷では『ヲタク』って言うの」
「ヲタク……、凄ぇやつを旦那にしたんだな、チハヤ嬢」
「凄いのは当然よ。だってレイジはあたしの旦那なんだから」
何を当たり前のことをと言い放つチハヤ。
「ごちそうさん……」
「ふふっ」
胸焼けしたポルコと微笑むミスティーだった。
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