第13話 13話 竜殺しの妊婦と家族宣言
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「それじゃあ、あたしが死んだところから話すわね」
「まった、話していいの?」
「大丈夫よレイジ。身内だから」
「了解」
姉さんにとって、女社長ミスティーも含め身内ということらしい。
「まず、私の転生特典は、レイジと同じ世界に転生すること。だからレイジは、この世界に来たの」
「どおりで。それで一緒になったのか」
親父たちは別世界に転生したし、もう会えないって思ってた。特典もそんな使い方するって発想がなかった。変にヲタ知識があったのが、思考の邪魔をしたんだろう。
「そして、転生したのはあたし1人だけじゃなく、お腹の中にいたこの子たち2人も。死ぬ前に最後にって思ったのが、まさかあたしも当たるとは思わなかったわ。しかも双子とか」
「ふふふっ」
「「ぐふっ」」
「姉さん、その辺はいいから」
目を覆う俺と、顔を赤らめる2人の子供たち。微笑ましく笑うミスティー社長と、吹き出し笑う馬鹿2人。
「こっちに転生した場所がちょうどこの街の近くの街道でね。道なりに歩いてたら、はぐれ竜が街を襲おうとしてるのが見えたのよ」
「まさか」
「叩き切ったわ」
「お腹に子供がいるのに……」
竜を瞬殺する妊婦。頼むから安静にしてよ、もう遅いけど。
「それから、巫女装束が受けたのか『姫巫女』なんて呼ばれるようになったんだけど、あちこち勧誘がうるさくてね。そんなときミスティーに店の用心棒として雇われたの」
「チハヤが了承してくれて助かったわ。その頃、店を開いたばかりで、縄張り争いとか大変だったのよ。『姫巫女』という街の英雄が用心棒なら、そもそも手出ししてくる人も減るから」
「あたしもゆっくり子育てに専念できるし、ちょうどよかったのよ。世界の時間軸がズレてるって話しだったから、レイジが来るまで時間がかかるしね」
「なるほど、だから子供たちがここまで育ってるわけか」
姉さんが死んでから2年、俺たちがこっちの世界に来て〝1年〟、合計3年でここまで育つわけないもんな。
「姉さん、ありがとう。1人で頑張ってくれて、ありがとう」
「どういたしまして。まぁミスティーや店の子たちもいたから、言うほど大変じゃなかったけどね」
軽く言い放つ姉さん。でも実際は相当大変だっただろう、姉さんの感情は別として。ほんと懐の深い人だからな。
「ヒソカにキョウヤでいいのかな。俺のことはまぁレイジとでも呼んでくれ。そっちも俺を父親ってすぐに思えるわけないだろうし」
いや、もう十分育ってるし、今さら父親って思えないか。
「すぐには無理でも、ゆっくりでいいから……」
少なくともこちらは、自分の子供として護ってやりたい。KAMIから世界の事情を聞き、いつ危険が迫るかわからないと知った。なら親として、いつでも安全な状態にしてやりたい。
「――俺と家族になって欲しい」
「「だが断る、です」」
「何で知ってんだよ、そのネタ!」
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