第9話 9話 Side:enemy

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「クソッ、なんなんだアレは」

「忌々しい『姫巫女』のいない絶好の機会だというのに」


 どこかの薄暗い大広間。明かりは、ロウソクとステンドグラスから届く月明かりのみ。神秘的なそのさまは、どこかの神殿のよう。


「やはりキングクラスでは物足りなかったか」

「魔王として安定するまで待てば良かったものを……」

「『姫巫女』が街にいないときにと話し合ったではないか!」

「結局、『巫女様』の方もいなかったのだろう? ならよいではないか」

「それは結果論だ!」

「いつもは街に置いてくくせに、よりによって今回一緒に行動するとは……」


 全員が神官のような統一した姿。ローブを深く被り、布で顔を隠している。


「いや、『巫女様』は今は仮の姿。真の姿に目覚めれば、魔の全てを統率するお方」

「ならば仮に、今のお姿が死することがあっても……」

「むしろ、そうなればすぐに目を覚ましていただけるだろう」


 神官と違うのは、その目に宿る狂気。とても聖職者に見えない。


「『帝国』への指示は?」

「奴ら、金を払ったら、むしろ喜んであの街を見捨てた。もともと開拓に赤字だったからな」

「このまま時を待っていても潰れるだろうが……」

「『姫巫女』がいる以上、念には念をだな」

「次のコマは、『魔境』の奥だ」

「おぉ、それはいい!」

「それなら標的は『獣人国』じゃ」

「ん? なるほど、じり貧になる街がより早く潰れてくれるか」

「あの街は『魔境』の素材で、輸入に頼ってるからな」

「我らは待つだけで念願が叶うだろう。だが『姫巫女』が邪魔をする。『姫巫女』を潰そうにもかなわぬ。ならば……」

「隣国を潰していけばいいわけか。ゲスの『帝国』はほっといても協力してくれる。ならばそれ以外をか」

「決まりだな」

「一刻も神が目覚めるために」


『神〝ヒキニー〟様の目覚めのために』


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