第7話 7話 豚の王と俺TUEEEE

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『弾幕展開、脚が止まったところにグレネードを……』

「ロック! あそこ貯まってるネ! 突撃ヨ!」

「1人で行っちゃ駄目だよタケル」

『…………』

「ロック! 汚物は消毒ネ!! ヒーハーッ!!」

「子供たちの笑顔のために、僕は戦わなければ!」

『…………、グレネード発射デス』

「ノォォーーッ!!」

「あ、危なッ!」

 メイドたちの攻撃を魔法のバリア『障壁』で防ぐカズマとタケル。

 作戦邪魔されたのがイラッとくるのはわかるが、一応、お前たちメイドの制作者だぞ。

 まぁ馬鹿2人だからいいか。


「さてさて、待たせて悪ぃな。ちゃちゃっと終わらせようぜ、キングさん」

 目の前には、二足歩行の大きな〝豚〟が。ファンタジー定番の豚の魔物・オーク。

「まさかよりによって豚が相手とは……、俺ら豚と縁でもできたか?」

 オークキングは、自身の身長ほどはある大剣を振りまわしてきた。

 ――ガンッ


「豚って言われて怒ったか? 悪いキングさん、知り合いに豚がいたもんで、ついな。まぁそんな、かっかするなよ」


    ◇    ◇


「受けとめた!? 力重視のオークキングを、それも真っ向から……」

「……しかもあいつは一歩たりとも動いてねぇ。あのキングの攻撃を、それ以上の威力で弾き飛ばしてやがる。何もんだ、あいつ……」

 青年と冒険者は驚きながらも、しっかりと目に焼きつけた。今後、味方になってくれることを期待して。


「……凄ぇ」

 他の冒険者や兵士の多くも、唖然としていた。だが、魔物との戦いになれているせいか、あまりの戦いぶりのせいか、次第に落ち着いて観戦していた。

「……俺、今後メイドに逆らわねぇ」

「俺も」

「メイドさんって凄ぇんだな」

「1りでいいから家に来てくれねぇかな、可愛いし」

「お、お前、怖いもの知らずだな」

「そのメイドの攻撃の中、突っ切ってる野郎2人もとんでもねぇぞ。あの威力の攻撃を魔法障壁で防ぐとか」

「あぁ、自分の今まで学んだ魔法理論が崩壊していってる」

「リーダー? なのか? キングとやり合ってる野郎も凄ぇ」

「てか、やり合ってるっていうより、一方的に遊んでるよな」

「実はあのキングは、普通のオークだったりして……」

「じゃぁテメェはオークの攻撃、真正面から受けとめるか?」

「無理だわ、普通のオークですらありえねぇ」

「まったく、どいつもこいつも狂ってやがる」


    ◇    ◇


 ――ガンッガンッ

「俺さ、バトルシーンは、短く完結に描くべきだと思うんだ」


 何度も何度も、大剣を打ち付けてくる。

 でもこちらは、一歩たりとも動いてやらない。

「バトルは、戦いの前の葛藤こそ心に突き刺さる。戦う前に格好良さが決まっちまうんだよ。だから、戦闘描写は少量でいいだ……」

 半分の長さにされた大剣。

 それでもオークキングは残りの刃で切りつけてきた。

 ――キンッ

「あぁ~、やっぱ俺TUEEEE最高! イージーモードでハッピーエンド、ご都合主義バンザイ!」

 起き上がらないオークキング、取り乱す周囲の魔物たち。

 いや、取り乱してるのは、人も一緒か。



「強くてニューゲームも、意外に悪くないな」


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