第6話 6話 降下

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「来たぞ、戦闘態勢!」

 グギャーッ!!

 森向こうから魔物たちの鳴き声や足音が聞こえ、姿を現しはじめる。種族はバラバラ。だがどこか、軍隊のように統率されてる。

「でお前さんら、本当に3人でやるのか? ありゃ、……キングがいるぞ」

「キング?」

 冒険者は額に汗をかき、顔色が悪くなっていた。

「何かしらの魔物が『魔王』になったんだろう。そうなると厄介だ。種族関係なく、魔物を束ねる。キングは、部隊も少ないまだ王になったばかりの奴のことを言う。普通は、戦力増強のために移動しないはずなんだがな」

 異世界最初の戦闘がいきなり『魔王戦』かよ。おい異世界、ボスの安売りしすぎじゃね?

「部隊が少ないと言っても、こっちは全員でかかってもマズい。正直、街の住人全員どこかに逃がしたいくらいだ。――まぁ俺たちには、〝行く当てがない〟がな」

「大丈夫だ。あれくらい、俺たちだけで十分だ」

「本当に大変なことなんです! いくら個人が強くても、数で来られると限界があります。全員であたり少しでも時間を稼ぐべきです」

 青年は少し取り乱しながら、でもどこか冷静に問題点を指摘してる。ホント若いのにスゲぇな。

「安心しろ、青年」

「え?」

「俺たちは――3人じゃない」


 俺は、そっと指差す。

 その先は、すんだ青空。その遙か向こうに複数の影が。

「な、なんですかアレは!?」

 青年が驚き声を上げる。いや、誰もが目を見開いてる。

 この世界にはない戦闘用ヘリコプター・人員輸送用ヘリコプターが空を覆い尽くしていた。

『降下』

 ヘリの拡声器から聞こえる少女の声。銃器を抱えた白黒ゴシックメイドたちが、ロープをつたって大勢降りてくる。

 ロングスカートが舞い上がらないのが不思議だが、まぁ淑女のたしなみってことで。

『展開しつつ、敵の殲滅デス』

 響く銃器の音。

 魔物たちの統率が乱れはじめる。


「ミーたちも行くネ! ロック、ロック、ロォークッ!」

「よいしょっと、僕もいくよ」

 異空間魔法アイテムボックスからマシンガン2丁を取りだし、敵中に特攻していくタケル。それに続くよう、大きな対物ライフルを〝片手〟で軽く抱えるカズマ。

「あいつら……、銃なんだから遠距離で戦えよ。なんで超近距離なんだよ」

 メイド部隊は、街を取り囲むよう部隊を展開。戦闘用ヘリを待ち上空に待機させてる。

「メイド部隊は、制作者たちに合わせて、陸戦展開か」

 面倒な親をもってご愁傷さま。

「んじゃ、俺も行くわ」

「おっ、おう」

「おっ、お気をつけて」

 戸惑う冒険者と青年に声をかけ、俺も後に続く。

 だたし俺は、銃は使わない。


 ――パンッ!

「来いよ『鬼殺し』」


 両手を打ち鳴らし〝魔法ではない〟異空間から呼び出す、邪神を殺した妖刀・鬼殺し。

「もう異能バトルなんて腹一杯って思ってたがな。まぁ、せっかくの俺TUEEEE機会、〝最初で最後〟の戦闘だし、楽しむか」

 テンションが上がり、体が熱くなる。まさか戦いを楽しいと思うとは。こんなこと初めてかもしれない。

 ――抜刀。


「そんじゃ、〝俺たちが主役の物語〟楽しむとするか」


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