第10話 またね
「あーあ、この図書室とも今日でお別れかぁ」
そう言う私に「そうだね」と春乃は少し寂しそうに笑う。私達二人は顔を見合わせて「じゃあ、答え合わせをしよう」と笑い合う。
「答えは見つかった?」と問われ、「うん」と答える。
「私、春乃と出会って、いろんな"私”を見つけられた。私を変えてくれて、出会いの意味を教えてくれた。それが春乃と出会った意味だと思う。答えになっているか分からないけど、これが私の答え。上手く言えなくてごめん」
「ううん。私も似たような感じ。あなたと出会って、私ってこんなに笑えるんだって知った。私の人生にあなたは必要な存在だったって胸を張って言える。私達はさ、これまでもこれからも、色んな人に出会って、その度に沢山の事を知って成長していくの」
春乃が言うには、これまでの、これからの出会い一つ一つにそれぞれの意味があり、どれか一つでも掛けて仕舞えばそれはもう自分ではなくて、これまでの人や環境との出会いがあるから”今”の自分が存在するんだって。
「あと、別れの意味もわかった。あなたのおかげで」
「え、教えて」
春乃の発言に驚き、つい前のめりになる。
「私達が初めて遊んだ日、あなたとまたねって、別れてから次会えるのがすごく楽しみだった。次は月曜日、その次は火曜日、次の土日は会えるかなって」
「私もワクワクしてたよ。早く春乃に会えないかなって。それが意味?」
私の問いに頷く。
「別れはね”また会う約束”なんだよ」
その答えに、どうしてか目頭が熱くなる。
「....そっかぁ、そっかぁ。また会う約束か。素敵だね。そんな別れの意味知ったらもう、別れなんて怖くないね。これから一番長い別れが来るけど、大丈夫……」
そう言いながら、口角は上がっているのに私の目からは涙が止まらない。
「冬花」
初めて呼ばれた名前に勢いよく反応して顔を上げると、目に涙を浮かべた春乃が、出会った頃と変わらない真っ直ぐな瞳で私を見つめている。
「冬花、私と出会ってくれて、ありがとう...私に、話しかけてきてくれてありがとう」
「そんなの..私もだよ。春乃、いつもそばにいてくれてありがとう。おかげで、すっかり心が軽くなったよ」
私達は誰もいない静かな図書室で、涙が枯れるほど泣いて泣いて泣きまくり、ぐずぐずのまま校門へ足を進める。
お互いの真っ赤な目を見つめ、笑って、声を合わせて約束する。
「「またね」」
私達は、それぞれの道へ歩いて行く。
意味のある出会いと別れ いちご大福 @ichigodaifku
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