第3話 私の決意
図書室で彼女に出会った日から、私は定期的に図書室へ息をしに行くようになった。私にとって彼女との時間は特別だった。
いつもの"仮面"も、ありきたりな話題も何も要らない。
本のめくる音だけが響くこの図書室で、彼女と居ることがとても大好きになった。そして初めて、嫌われないためとかそんな理由無く "仲良くなりたい" と思った。
(今日、話し掛けてみよう)
そう決意した私は「ねぇ」と、彼女に声を掛けた。彼女の曇りのない瞳が私の顔を映す。変に緊張してしまい、言葉に詰まる。
「何?」
なかなか話し出さない私に痺れを切らしたのか、彼女が声を掛けてくれた。
「えーと、あのね、名前で呼んでも良いかな。仲良く…なりたい」
スムーズにはいかなかったけど、何とか伝えたい事を伝えられて、まだ返事も聞いていないのに、ホッとしてしまった。
「好きに呼んでいいよ」
そう答えた彼女の声は、とても優しかった。私は嬉しくて胸がいっぱいだった。仮面ではなく、自然に笑顔になれた。
「やっっった。春乃、改めてって言うのも変な気がするけど、よろしくね」
私が余りにも喜ぶからなのか、春乃は少し驚いた顔をした後に、クスクスと笑って
「よろしくね」
そう言った春乃の笑顔は私が想像していた以上に、優しくて可愛かった。
それから私と春乃は少しずつ話すようになった。
「恋愛小説って、男の人が読んでる事って少ないよね」
「そうね。残念で勿体ないけど」
「だよね。勿体ないよね。恋愛小説は、性別とか年齢とか、そんなの関係なく読まれるべきだよ。友情では描けないような感情とか、関わりの深さが描かれているから、もっと色んな人に知ってもらいたい」
「ただの"恋愛"の小説って思わないで欲しいね」
熱く語る私の話を微笑みながら聞いて、優しく頷いてくれる。
自分が思った事をこんなにも素直に口にするのは、久しぶりかもしれない。それが私には心地よかった。
今まで自分でも見えていなかった"私"が見えてくるような気がした。
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