第6話 影響
今日こそはサルガタナスを倒す。
刹那はサルガタナスのいる扉の前に立っていた。
前回の戦闘から4日間、レベル上げに専念した成果もあり、LVも21と大幅に上げていた。
名前……<セツナ>
性別……<男>
属性……<風>
LV……21
HP……<166>
MP……<72>
体力……<19>
霊力……<17+5>
腕力……<20>
知力……<19>
速さ……<31>
秘力……<16>
武器……霊破の小太刀<攻撃力25・霊力+5>
防具……霊御のお札<防御力7>
攻撃……42
防御……26
剣技……斬閃<威力10>
固有剣技……
霊撃……空破<風属性。威力12>
精霊……風の精霊イフリーナ<風魔法の与ダメ2%アップ
守護……無し
推奨LV範囲にいる今なら勝てるはず……
満を持して、セツナは扉を開いた。
<こんなガキが俺の器かよ?>
鎖で繋がれた両手を壁もろとも引っこ抜き、サルガタナスはセツナの前に立ちはだかる。
龍生のアドバイスを参考に、初手に撃ってくる魔力弾をジャストガードで防ぎカウンターを決める。
少し怯んだ隙に溜め攻撃の霊斬波を叩き込み、HPを3分の1まで減らす。
サルガタナスはセツナと同じ風属性のため、イフリーナはHPを小回復させる魔法を掛けさせている。
連撃を加え、隙があれば斬閃を放つ。このゲームは攻撃、防御力ともある一定の数値を超えると与ダメがぐっと上がる。
例えば、数値が19と21では乱数により、一段階ほどの火力の差が出せるといった感じだ。
<万全じゃねぇとはいえ、ここまで俺を追い詰めるかよ>
サルガタナスのHPが3分の2を切った時のセリフが流れる。
白髪だった髪色が淡い水色に変わり、背中から翼が生える。
全身に魔力を揺らめかせ、動きも攻撃速度も跳ね上がった。
第二形態的なもんか。
セツナは初めての状態に鼓動が速くなる。
でも、これを凌ぎ倒せば……と逆に集中力が増していく。
サルガタナスが最後に見せた魔法<
<俺をがっかりさせんなよ……>
サルガタナスは光る球体に変化するとセツナと重なる。
<上級精霊サルガタナスの守護を受けました>
<対象パラメーターがアップしました>
……イフリーナとサルガタナスが入れ替わると思ってたけど、まだいるということは、サルガタナスと融合した感じになるんだな。
さらにセツナのLVも24に上がる。
名前……<セツナ>
性別……<男>
属性……<風>
LV……24
HP……<170>
MP……<72>
体力……<19+2>
霊力……<17+5>
腕力……<20+2>
知力……<19+2>
速さ……<31+3>
秘力……<16+3>
武器……霊破の小太刀<攻撃力25・霊力+5>
防具……霊御のお札<防御力7>
攻撃……47
防御……28
剣技……斬閃<威力10>
固有剣技……
霊撃……空破<風属性。威力12>
精霊……風の精霊イフリーナ<風魔法の与ダメ2%アップ
守護……上級精霊サルガタナス<速さ+3・秘力+3>
切も良いし、今日はここまでだな。
時刻は21時過ぎ。ゲームを開始して約2時間ほどが経過していた。
トントンと階段を鳴らしながらリビングに降りると、友加里がテレビを見ていた。
「友加里、風呂入ったか? 俺は今から風呂入るけど」
「いいよ~」
髪を洗い、体を洗い、湯船に浸かって上がる。刹那の風呂は約20分。まるで烏の行水だ。
Tシャツと短パンに着替えリビングに戻ると、友加里はまだテレビを見ていた。
「テレビにかじりついてるけど面白い番組でも見つけたか?」
「全然。なんとなく見てるだけだよ。それより早くない?」
友加里が振り向き刹那の二の腕を見て、少し考え込む表情をした。
「なんだよ?」
「お兄ちゃん、鍛えてる?」
「たまにな。なんで?」
「そんなに筋肉質だったかなぁと思って」
たしかに、ちょっと影ができてる気がする刹那だったが、筋トレといってもすぐに効果がでるような鍛え方はしていない。
「細マッチョ目指してるからな」
「きもい」
辛辣な妹の言葉にショックを隠し切れない刹那だった――
ここは……また、この夢か。
刹那は見覚えのある風景にため息を吐いた。
しかし、空は茜色に染まり、真っ赤な太陽がノイズ混じりに輝いている。
状況が少し違うのか?
僅かな違和感を覚えながらも、目が覚める間、辺りを歩くことにした。
アスファルトを横目に歩いていると、さらに慣れ親しんだ建物が視界に入る。
愛波高等学校……?
辺りを見渡すと、ここは通学路だった。
学校は校舎が崩壊して、3階部分が吹き飛んだように無くなっていた。
運動場もコンクリートの瓦礫が散らばり、異様なほどに荒れ果てている。
刹那は導かれるようにへしゃげた正門を抜け、校舎内に入った。
<こっちに来て>
刹那を待ち受けていたかのように、ゆらりと人影が現れ話し掛けてきた。夢だと理解していた刹那に恐怖心はなく、人影の跡を疑いもなくついて歩く。
階段を登りたどり着いたのは、自分の教室だった。人影は振り向いたような仕草を見せ、姿を消す。
木製の引き戸をスライドさせ教室内に入ると、前回の夢の中で会った男が、窓の外を眺め佇んでいた。
「よく来たな、サルガタナス」
サルガタナス?
この時、刹那は異界領域オンラインの影響で、こんな夢を見ているんだと思った。
「お前はまだ死ねないでいるのか?」
突然、自分の意思ではない言葉が口を吐いた。
刹那の意識は、この瞬間から明晰夢ではなくなった。
男ともう一人の男が会話しているのを映画館の映像を見ているような感覚に陥ったからだ。
「覚醒が遅れれば、遅れるほど現代のお前は不利になるんだぞ」
「わかってる。俺ももう潮時だなって気づいてるよ」
「なんなら、俺がこの場で殺してやろうか?」
「もう少しだけ待ってほしい」
サルガタナスと呼ばれる男は髪をかき上げ、男に背を向けるとこう呟いた。
「雨宮、俺たちは今度こそ終止符を討つ。安心しろ」
「……お前は刹那の影響を受け過ぎたな。丸くなったよ」
「だからといって、今回も甘やかすつもりはねぇよ」
「それを聞いて安心したよ。じゃあな」
「ああ、またな」
最後に雨宮と呼ばれた男が、刹那を見てほほ笑んだ――
夢から覚めた刹那は体を起こし、差し込む光を左手で遮った。
雨宮って……龍生のことか?
前回の夢で、慣れ親しんだ聞き覚えのある声だった印象を思い出し、刹那はなんとなくそう思った。
でも、容姿が今よりもっと大人びていたよな。まさか未来の龍生? ……とにかく変な夢を見たなぁ。ベッドから立ち上がると、大きく背伸びをして一気に脱力する。
そうだ。龍生に会ったらサルガタナスを倒したことを報告しよう。
夢は夢として区切りをつけ、刹那はいつも通りの一日を迎えようと身支度を始めた。
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